事業者が帳簿付けをする際によく迷うのが、その支出を消耗品費にするのか雑費にするのかということです。一般的に、雑多なものへの支出は雑費で処理しますが、消耗品費も雑費も物の購入に使える勘定科目であるため、使い分けに困ることもあります。
ここでは、消耗品費と雑費の違いや使い分けの方法を具体的な仕訳も交えながら解説します。
消耗品費の概要と具体例
はじめに、消耗品費とはどのようなものかを見ていきましょう。
消耗品費とはどんなもの?
消耗品費とは、消耗品を購入した場合に使用する勘定科目です。では、消耗品とはどのようなものでしょうか。消耗品とは、その名のとおり、消耗してすぐに使い切ってしまうもののことをいいます。会計上は、使用期間が1年未満のものや、使用期間が1年以上のものでも1つあたり10万円未満のものが消耗品になり、消耗品費で処理します。
例えば、プリンターの用紙は、おおむね1年未満で使い切ってしまうため、消耗品になります。また、事業で使う5万円の棚であれば、1つあたり10万円未満であるので消耗品になります。
また、プリンターの用紙や文房具などは、事務用品費で処理することも考えられます。プリンターの用紙や文房具を事務用品費で処理するのか、消耗品費で処理するのかは、重要性や金額の大きさなどから会社で自由に判断して問題ありません。
ただし、複数年度の比較をするためにも、一度使用した勘定科目は、翌年以降も同じ勘定科目で処理した方が良いでしょう。
消耗品費の具体的な仕訳例
ここでは、消耗品費の具体的な仕訳を見ていきましょう。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
消耗品費 | 2,000円 | 現金 | 2,000円 | 文房具 |
文房具は、おおむね1年未満で使い切ってしまうため、消耗品になります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
消耗品費 | 30,000円 | 普通預金 | 30,000円 | 事務机 |
1つあたり10万円未満であるため、消耗品になります。
雑費の概要と具体例とは
次に、雑費とはどのようなものかを見ていきましょう。
雑費とはどんなもの?
雑費とは、雑多なものや一時的な支出など、ほかの勘定科目に当てはまらない支出があったときに使う勘定科目です。例えば、ゴミの処分費用や振込手数料、書籍代、クリーニング代などが雑費になります。ただし、ゴミの処分費用を清掃費、書籍代を新聞図書費など、ほかの勘定科目で処理しても問題ありません。
雑費科目は、使い勝手の良い科目のため、ついつい雑費で処理し、雑費の年間合計金額が多くなってしまうこともあります。しかし、使い勝手の良い科目だからこそ、金額が多くなってしまうと、税務署などの目についてしまう可能性もあります。あまり年間合計金額が多くならないように注意しましょう。
雑費の具体的な仕訳例
では、雑費の具体的な仕訳を見ていきましょう。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
雑費 | 500円 | 現金 | 500円 | ゴミの処分費用 |
ゴミの処分費用は500円と金額が少額で、頻度も多くないため、雑費で処理します。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
雑費 | 880円 | 普通預金 | 500円 | 振込手数料 |
振込手数料は880円と少額で、重要性も高くないため、雑費で処理します。
消耗品費と雑費の注意点
ここまでは、消耗品費と雑費がそれぞれどのようなものかを見てきました。しかし、消耗品費と雑費の使い分けには、いくつか注意しなければならないことがあります。
そこでここからは、消耗品費と雑費の注意点を見ていきましょう。
消耗品費と雑費の使い分け
消耗品費と雑費では、一般的に、消耗品費のほうが金額が大きくなります。ただし、消耗品費と雑費の使い分けはある程度、会社で決めて良いです。
消耗品費と雑費の使い分けで、注意したいのは、金額と重要度です。会社の中で、金額と重要度で、消耗品費と雑費の使い分けを決めます。
・金額で分ける場合
例えば、金額であれば、2万円以上のものは消耗品費、2万円未満のものは雑費などの使い分けをする。
・重要度で分ける場合
例えば、工具代は会社にとって重要度が高いので、金額が低くても消耗品費にするなどの使い分けをする。
また、雑費の金額が多くなることは避けましょう。極端な話ですが、消耗品費の年間合計金額が10万円なのに、雑費の年間合計金額が100万円となっていれば、経理処理が間違っているのではないかと思われてもおかしくありません。
消耗品費か雑費かを決めていない支出があったら、いったん金額や重要度で使い分けのルールを決め、年間合計金額を確認してからルールを修正しても良いでしょう。
固定資産になるものに注意する
消耗品費と雑費の使い分けで注意しなければならないのが、固定資産に対して支出をした場合です。実は、固定資産は、購入時に全額を経費にできません。つまり、固定資産を購入しても、消耗品費にも雑費にもすることができません。
では、固定資産になる支出とはどのようなものをいうのでしょうか。固定資産とは、建物や附属設備、機械装置や器具備品、車両運搬具などの資産で、次のいずれかの要件を満たすものを指します。
- 使用可能期間が1年以上のもの
- 取得価格が1つあたり10万円以上のもの
つまり、取得価格が1つあたり10万円以上の資産を購入した場合は、固定資産に該当し、消耗品費や雑費では処理できません。資産の種類に応じて、建物や機械装置、工具器具備品などの勘定科目で処理します。固定資産購入時の仕訳は、次のようになります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
機械装置 | 500,000円 | 普通預金 | 500,000円 | 機械購入 |
固定資産は、購入時に取得価格を経費にすることができませんが、使用可能期間(耐用年数)に渡って、毎年少しずつ取得価格を経費にすることができます。これを「減価償却」といい、その経費は「減価償却費」で処理します。減価償却費の仕訳は、次のようになります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
減価償却費 | 20,000円 | 機械装置 | 20,000円 | 当期償却額 |
また、青色申告をしている個人事業主や法人の場合は、取得価格30万円未満のものを固定資産でなく経費にすることができます(年間300万円まで)。一般的に、10万円を超えるものを雑費で処理することはないので、取得価格30万円未満のものは「消耗品費」で処理します。この場合の仕訳は、次のようになります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
消耗品費 | 280,000円 | 普通預金 | 280,000円 | 機械購入 |
もう一つ注意したいのが、販売用商品についてです。販売用商品は金額や使用可能期間に関係なく、固定資産にも消耗品費にも雑費にもなりません。売上原価の「仕入高」で処理し、期末に売れ残っている場合は棚卸処理を行う必要があるので、注意しましょう。
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まとめ
消耗品費と雑費はどちらも、物を購入した場合に使うことができる勘定科目です。経費になるものであれば、どちらで処理しても問題ありませんが、あまり雑費が大きくなりすぎないように注意する必要があります。原則、金額や重要度の大きさにより、自社でルールを決めて処理します。
一般的には、数万円程度のものを購入した場合に使う勘定科目は消耗品費を、金額の小さなものを購入した場合は雑費を使います。なお、固定資産に該当するものは、消耗品費や雑費で処理することができないので注意しましょう。