日本には、所得税や法人税などさまざまな税金があります。同じように世界にもさまざまな税金がありますが、その中には、日本にはない、その国ならではの珍しい、面白い税金も多いです。
税金を知ることで、その国の事情を理解するきっかけができたりします。ここでは、世界の珍しかったり、面白い税金をご紹介します。
今ある世界の珍しい(面白い)税金
これまでにさまざまな珍しい・面白い税金が制定され、また廃止されてきました。その繰り返しとなっていることも少なくありません。
そこで、はじめに今も効力がある、珍しくて面白い税金を見ていきましょう。
●渋滞税
渋滞税は、イギリスのロンドンで導入されている税金です。渋滞の緩和や大気汚染の解消などを目的に、2003年から導入されています。その内容は、区域と時間を決め、決められた時間に決められた区域を走行する車に対して、税金を課すというものです。導入した翌年には、渋滞が30%も減少するなど、一定の効果を得る税金となっています。
●ポテトチップス税
ハンガリーで導入されている面白い税金に、ポテトチップス税があります。ポテトチップス税は、2011年から導入された税金で、国民の肥満防止を目的としています。
ポテトチップス税という名称ですが、課税の対象となるのは、ポテトチップスだけでなく、ケーキやビスケット、スナック菓子や清涼飲料水など、糖分や塩分などが高い割合で含まれている食品となっています。
●月餅税
月餅税は、中国で導入されている税金です。
月餅とは、中国でよく食べられている月に見立てたお菓子です。中国では、9月の中秋節の日に家族で月餅を食べたり、親しい人やお世話になっている人に月餅を送ったりするのが習慣となっています。また、会社が従業員に福利厚生として月餅を渡す習慣もあります。
月餅税とは、月餅を受け取った人に税金をかけるというものです。もちろん反対意見も多く、月餅税が導入された2011年には、中国で大きな議論となりました。
●ソーダ税
ソーダ税は、アメリカの各州で導入されている税金です。肥満対策を目的とし、ソーダなどの清涼飲料水に税金をかけるというものです。ソーダ税の効果があるのかどうかは、各州で意見が分かれており、導入を検討する州もあれば、廃止をする州もあります。
●デジタルサービス税
デジタルサービス税は、2020年からイギリスで導入された新しい税金です。内容は、イギリスのユーザーのデジタルサービスの利用により得た収益に対して、サービスを提供している企業に税金を課すというものです。
ソーシャルメディアサービスや検索エンジンなどのサービスを提供する企業のうち、一定金額以上の収益をあげている企業が課税の対象になります。イギリスのユーザーから得た収益のうち、2,500万ポンドを超えた場合、超えた収益に2%の税金が課されます。
昔あった世界の珍しい(面白い)税金
次に、かつてはあったものの、現在では廃止された世界の珍しい、面白い税金を見ていきましょう。
●窓税
ヨーロッパの各国で昔あった税金のひとつが、窓税です。とくに、イギリスの窓税が有名です。イギリスでは、1696年から150年程度のあいだ窓税が導入されていました。
窓税とは、建物についている窓の数に応じて税金をかけるというものです。そのため、富裕層は窓を増やして税金を払い、経済的に余裕のない人は窓を板などでふさいだり、新築の建物についてはできるだけ窓の少ないものにしたりしました。
結果として、換気性が悪くなり、病気が増えたり、美観が損なわれたりなどの問題が発生することになりました。
●独身税
ブルガリアで昔あった税金に、独身税があります。独身税は結婚して出生率を増やすために導入された税金で、1968年から約20年導入されていました。内容は、独身の人には収入に一定の税金をかけるというものでした。
日本でも、一時期、ある自治体が導入を検討しているといった報道がされ、話題になったこともあります。しかし、晩婚化や非婚化が進んでいる今、日本で独身税が導入されることは、現実的には考えにくいでしょう。
●脂肪税
脂肪税は、デンマークでおよそ1年だけ導入された税金です。2011年に導入され、2012年には廃止が発表されました。脂肪税の目的は、一定割合以上の飽和脂肪酸を含む食品を対象に課税し、健康に悪影響を及ぼす食品の消費を減らすことです。
脂肪税の導入で、牛乳やチーズなどの乳製品や肉類などに税金が課されることになりました。しかし、脂肪税の導入で、一般家庭には増税となることや、国外で買い物をすることによって自国の製品が売れなくなる危険性があることから、当初から反対意見が多く、すぐに廃止となっています。
日本にもある珍しい(面白い)税金
実は、珍しい、面白い税金があるのは、他国だけではありません。日本でも昔に珍しい、面白い税金があったり、現行の税金でも面白いものがあります。
ここからは、日本の珍しい、面白い税金を見ていきましょう。
●犬税(過去)
犬税は、日本に昔あった面白い税金のひとつです。犬を保有していることに対して課される税金でした。ただし、犬税は国税ではなく、自治体単位で設けられている地方税のひとつでした。
明治時代、犬税は多くの自治体で導入されていましたが、自治体ごとに税金を課していたため、犬1頭につきいくらかの税金を課している自治体もあれば、犬の種類や飼育地域、飼育目的によって、税率を変える自治体があるなど、課税体系は統一されてはいませんでした。
犬税は昭和に入っても存続し、昭和30年でも、全国で2,700もの自治体に導入されていました。また、分かっている範囲では、長野県の四賀村で昭和57年まで導入されています。長野県の四賀村では、1頭(生後3か月以上)につき年300円の税金がかかっていました。
●入湯税
日本では当たり前でも、世界から見ると珍しい税金もあります。その代表的な税金が、入湯税です。
入湯税は、簡単にいうと、温泉などの鉱泉浴場の入浴者にかかる税金のことです。自治体によって異なりますが、1人1日150円を標準としており、宿泊料などに上乗せされる形で支払っています。
税金は、汚染などの鉱泉浴場がある市町村に支払われ、観光の振興や観光施設の整備などに使われます。
●ワンルームマンション税
最近の税金で話題となっている、珍しい、面白い税金にワンルームマンション税があります。ワンルームマンション税は、正式名を「狭小住戸集合住宅税」といい、東京都の豊島区で導入されています。狭小住戸集合住宅いわゆるワンルームマンションを建築する際に、建築業者に課税する税金です。税額は、狭小住戸1戸につき50万円となっています。
豊島区で、ワンルームマンション税が導入された背景には、豊島区における世帯構成とワンルームマンションの数にあります。豊島区は、全世帯における単身世帯の割合が半分を超えており、住宅におけるワンルームマンションの割合も東京23区で最も高い割合となっています。
このことは、ファミリー世帯向けの良質な住宅が少ないことを意味しており、これらの偏った住宅事情を改善するために、ワンルームマンション税が導入されています。
まとめ
他の国や日本では、これまでもさまざまな珍しい、面白い税金が導入されてきました。
それぞれの税金の内容や背景を知ることで、各国のさまざまな事情を垣間見ることができます。
また、他の国の税金を参考に、日本でも新たな税金が導入される可能性もあります。
これからも、珍しい、面白い税金が導入されていくことが予想されます。海外に旅行に行く際などは、これらの税金に接することもあるでしょう。その際には、その税金の役割や導入された背景などを調べることで、その国を理解する助けになるかも知れませんね。