イールドカーブは利回り曲線とも呼ばれるもので、債券の利回りと償還期間との相関性を示したグラフを指します。横軸に償還までの期間、縦軸に利回りを用いた曲線グラフで表現されるケースが大半です。
このイールドカーブには、「逆イールド」と呼ばれる状態が存在します。今回はイールドカーブの基本から逆イールドとはなにか、何を意味するのかについて解説します。
イールドカーブとは
イールドカーブの概要
イールドカーブは債券の利回りと償還期間をまとめて表した曲線グラフを指します。横軸に償還までの期間、縦軸に利回りを記載するのが基本です。利回りと償還期間の関係は点になるため、曲線で結んでイールドカーブを表現します。
イールドカーブは1種類の債券についてグラフ化したものではなく、複数の債券についてグラフ化したものです。例えば国債は1年間のものや5年間のものなど複数の商品が販売されています。これらについて利回りと償還期間を点に取り、曲線で結んだものがイールドカーブとなるのです。
イールドカーブは複数の債券群の中で投資する商品の判断や同じ債券群で利回りの差を分析するために利用します。数字だけでは比較がしにくいため、グラフ化して視覚的に判断しやすい状況にします。
スティープ化とフラット化
イールドカーブにはスティープ化とフラット化と呼ばれる2種類の形状があります。スティープ化はイールドカーブの傾きが大きくなることを指し、フラット化は傾きが小さくなることを指します。
一般的に債券は長期になる程利回りが高くなります。利回りは加速度的に高くなるため、償還期間が長いほど利回りが高くなりスティープ化されたイールドカーブが生まれます。逆に、何かしらの理由で利回りが低くなると、たとえ償還期間が長くとも、短いものと利回りの差が小さくなります。その状況がフラット化されたイールドカーブです。
イールドカーブを見る際は、スティープ化が進んでいるのかフラット化が進んでいるのか注目すべきです。フラット化が進んでいると償還期間が長くなっても利回りに反映されないため、長期債のメリットが薄れてしまう可能性があります。
逆イールドとは
長期の利回りが短期を下回る現象
イールドカーブを理解するにあたり、逆イールドと呼ばれる状態を理解しなければなりません。逆イールドとは、短期的な債券の利回りを長期的な債券の利回りが下回る現象を指します。基本的には長期的な債券の利回りは短期的な利回りより高く設定されますが、逆イールドになると逆転してしまいます。グラフで見ると右下がりの曲線になる状態です。
中央銀行は金融政策や市場の成長状況などを踏まえて債券の利回りを決定します。そのため、状況によっては長期的な債券の利回りが下がってしまい、逆イールドが生まれてしまいます。中央銀行が多くの要素を鑑みた結果、やむを得ず長期的な債券の利回りを下げた状況と考えてよいでしょう。
なぜ逆イールドが注目されるのか
逆イールドが注目される理由は、今までの歴史において逆イールドが景気後退の示唆をしたからです。例えばアメリカでは逆イールドが起きたあと、景気が後退した事例があります。絶対に景気後退へとつながるとは言い切れないものの、景気後退の有無を判断すべき重要な局面です。
なお、逆イールドになったからといって、すぐに景気が後退したわけではありません。先のアメリカの事例では1年半程経過してから景気後退の判断がくだされました。逆イールドは短期的ではなく中長期的な観点から判断する指標に利用されます。
逆イールドが発生した事例
アメリカでは2019年8月に逆イールドが起きました。短期債券である2年国債の利回りを長期債券である10年国債の利回りが下回ったタイミングです。逆イールドの発生は2008年以来初めてです。
なお、この時に逆イールドが起きた原因は、市場に影響する要素の不確実性を抱え過ぎたことと考えられています。見通しを立てにくくなったため、長期債券の利回りが下がってしまいました。
逆イールドは景気の悪化を示唆する理
長期金利は市場の見通しに影響される
一般的に中長期の金利は利回りが高くなる傾向にあります。これは満期までの期間が長ければ長いほど、投資家が受けるリスクが高くなるからです。例えば債券の価格変動があり得るため、価格が変動するリスクに見合った金利が設定されていなければなりません。
しかし、将来的に景気が低迷する可能性があると、中長期の金利は利回りが低く設定されます。投資家がリスクに対する金利を求めたとしても、景気の低迷が予想されるならば中長期金利は下げざるを得ないからです。
また、投資家は将来的に利下げが見込まれると、積極的に中長期債を購入します。景気が低迷すると債券の価格が上昇するため先に投資するからです。結果、債券の利回りが下がり逆イールドカーブの状況が生み出されてしまいます。
金利の低下は景気後退期の兆候だと推測される
一般的に景気が後退すると金利が低下するとされています。これは中央銀行が金利の引き上げをすると、人々は預貯金にお金を回すようになるからです。結果、商品の購入やサービスの消費が減ってしまい、景気の後退へとつながってしまいます。
中央銀行としてはこのような状況は望ましくありません。そのため、状況を改善するために金利の引き下げをして、商品の購入やサービスの消費へお金が回るように誘導します。経済全体でお金に対する需要が減っているため、金利が下げても差し支えないと判断するからです。
このような一般論に基づくと、金利が下げられる理由は「景気が後退してきているから」と判断できます。お金の消費量が減ってしまったために、消費を促進するため金利を引き下げるのです。言い換えると金利が引き下げられている理由は、景気が後退している兆候を中央銀行が感じていることに由来します。
逆イールドの発生が景気を後退させるわけではない
誤解してはならないことは、逆イールドカーブの発生が景気の後退につながるものではない点です。つまり、逆イールドカーブが景気後退の引き金にはなりません。あくまでも、逆イールドカーブはこれから景気が後退する可能性を示唆するものです。逆イールドカーブが生じたからといって、必ず景気が後退するとは限りません。景気後退はせず持ち直す可能性も十分にあります。
逆イールドカーブが生じると「中長期の利回りを下げたために景気が後退した」と勝手な判断をする人がいます。しかし、これは勘違いであるためそのような認識を持っている人は改めなければなりません。景気が後退したことは結果論で、中長期の利回りを下げたことが引き金になったわけではありません。
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まとめ
イールドカーブは債券の利回りと償還期間をグラフで示したもので、基本的には右上がりのグラフとなります。
ただ、景気によっては長期債券の利回りが下がり右下がりのグラフとなってしまいます。この状況を逆イールドと呼び、景気後退の予兆だと考えられています。
なお、逆イールドが起きたからといって、必ず景気後退につながるとは言い切れません。ただ、歴史において逆イールドが起きた後には景気後退も起きるケースが多く、投資家は注目すべきタイミングと言えるでしょう。