2022年の確定申告も佳境を迎えた3月14日、e-Tax(国税電子申告・納税システム)に断続的な接続障害が発生しました。これを受け国税庁は、期限内の申告が困難になった納税者に対して、申告・納税期限などの延長を決め、発表しました。
どんな障害だった?
ログイン不能などの状況に
今回のシステム障害は、2021年(令和3年)分の所得税、贈与税の申告・納付期限である2022年3月15日前日の14日から当日にかけて、断続的に発生しました(以下、日付はいずれも2022年)。
具体的には、
- ログイン困難(一部ログイン不可・混雑通知が表示される)
- 送信困難(送信不能又は送信所要時間の長期化)
- 国税庁からの通知確認困難(国税庁からの通知メール遅れ)
などの状況が報告されています。
アクセスの集中が原因か
この原因について、国税庁は「本年度の申告では、多くの方にe-Taxを利用していただいたこともあり、申告データを国税庁のデータベースサーバに格納する際の処理や取り出す際の処理に極めて大きな負荷がかかり、処理パフォーマンスの低下が発生した」ため、としています。なお、16日以降は、「e-Taxによる申告件数の減少もあり、安定的に稼働」しているとのことです。
接続障害への対応
このe-Taxの接続障害により、期限内に確定申告書などを送信できなかった場合の対応や注意点は、次の通りです。
「延長申請の文言」を明記して申告書を提出すれば期限延長
今回のe-Taxの接続障害のために申告が遅れた場合には、申告・納付期限が4月15日(金)まで1ヵ月間延長されます。延長する場合には、申告書の所定の欄(国税庁「確定申告書等作成コーナー」の場合は、「送信準備」画面の「特記事項」欄)に「e-Taxの障害による申告・納付期限延長申請」(以下「延長申請の文言」)と記入して送信します。
●国税庁「申告所得税、贈与税の申告・納付期限の個別指定による期限延長手続の具体的な方法」
申告書に記載するだけで申請完了で、別途「延長申請書」を作成して提出する必要はありません。
なお、申告書の余白に「延長申請の文言」を記入して書面で提出することでも延長可能ですが、次に述べる「65万円の青色申告特別控除」を受ける場合には、e-Taxで申告する必要があります。
e-Taxが必須の「65万円の青色申告特別控除」の扱いは?
「青色申告」をすれば最高65万円の特別控除を受けることができますが、そのためにはe-Taxでの申告または電子帳簿保存のいずれかが必要になります(書面による青色申告の場合、控除は55万円)。
今回の接続障害により期限内にe-Taxでの申告ができなかった場合には、やはり先ほどの「延長申請の文言」を記載した申告書を4月15日までにe-Taxで提出することで、65万円の特別控除を受けることができます。
中には、e-Taxでの申告ができなかったために、仕方なく書面で「青色申告特別控除55万円」として申告した人がいるかもしれません。その場合にも、同様に「延長申請の文言」を記した申告書をあらためてe-Taxで提出すれば、65万円の特別控除が受けられます。申告期限は4月15日です。
預貯金口座からの振替日は?
所得税を口座振替で納税している場合、振替日も延びて5月31日(通常は4月21日)となります。
その他の注意点
●e-Taxの接続障害のため確定申告書を訂正できなかった場合
確定申告に間違いがあることに気づいた場合、申告期限内であれば何度でもやり直すことが可能で、延滞税などもかかりません。今回の接続障害により、この“申告の訂正”ができなかった場合は、どうなるのでしょうか?
この場合は、4月15日までに「延長申請の文言」を記載した申告書をe-Taxで提出することで、訂正を行うことができます。期限内に申告書の提出があったものとして扱われるということです。
ただし、4月16日以降に訂正した申告書を提出した場合には、「延長申請の文言」が記載してあったとしても訂正はできず、修正申告などの手続きになります。この場合には延滞税がかかるため、注意が必要です。
●申告書が期限内に受付できているかどうかの確認方法
接続障害のさなかに送信した申告書が期限内に受付できていたかどうかは、メッセージボックスを見れば確認することができます。
メッセージボックスで結果を確認した際にエラー情報が表示されていた場合には、その内容を確認し、訂正などを行った上で、「延長申請の文言」を記載した申告書を4月15日までに再度e-Taxで送信すれば、期限内に提出があったものとして取り扱われます。
また、通常の申告期限を過ぎた3月16日以降に受付されていて、特記事項欄に何も記載のない場合には、やはり4月15日までに「延長申請の文言」を記載した申告書をe-Taxで送信すれば、期限内に提出があったものとして扱われるということです。
●消費税は期限延長の対象外
説明してきたe-Tax接続障害に伴う申告・納付期限の延長は、所得税・贈与税の確定申告を対象としたものです。3月31日が期限(振替日は4月26日)の個人事業主の消費税については対象外のため、要注意です。
新型コロナ対応の申告・納付期限の延長も
21年度分の確定申告に関しては、オミクロン株の拡大に対応した「簡易な方法」による申告・納付期限の延長がすでに行われていました。新型コロナの影響により期限内の申告が困難だった場合には、申告書に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」といった文言を記載すれば、同じく4月15日まで期限が延長されます。こちらについては、個人事業主の消費税も対象になります。
所得税申告のe-Tax利用率は50%超え
所得税の確定申告におけるe-Taxの利用件数は年々増加し、20年度には1,422万件で、利用率が初めて50%を超えました(前年度比7.7ポイント増の55.2%)。新型コロナによる外出制限や自粛もあり、今年はさらに利用者が増え、期限間際に申告が集中したことが、今回のトラブルの原因と考えられます。
国税庁は、
「上記の処理(注:申告データのサーバーへの格納や取り出し)に起因する障害については、運用事業者と共に検証した結果、その解決策が判明しました。今後、利用者の皆さまへの影響が最小となる可能な限り早い時期に、その解決策を実施してまいります。」
としています。
まとめ
確定申告の期限間際に発生したe-Taxの接続障害で申告が遅れた場合には、申告書に「e-Taxの障害による申告・納付期限延長申請」と記載して4月15日までに提出すれば、期限内の申告として扱われます。確実に受付されたのか不安がある場合などには、e-Taxのメッセージボックスを確認するようにしましょう。