2021年度補正予算が成立し、そこに盛り込まれていた「こどもみらい住宅支援事業」の交付申請の受付が開始されました。子育て世帯が住宅を新築した際に最大100万円の補助が受けられるほか、リフォームに関しては世帯を問わず交付対象となる可能性があります。補助の要件や手続きの流れなどについて解説します。
制度の概要
「こどもみらい住宅支援事業」の対象になるのは、一定の省エネ性能を有する住宅の新築(子育て世帯など)や、一定の要件を満たす住宅のリフォームです。つまり、子育て支援と住宅の省エネ化推進を目的とした施策で、以下に説明する要件を満たす場合には、所定の補助金額が国から付与されます。
なお、新築・リフォームとも2021年11月26日(補正予算閣議決定日)以降に契約を締結した案件で、着工時に事業者が「こどもみらい住宅事業者」として登録済み(後述)でなくてはなりません。3月28日から交付申請の受付が始まっていて、申請期限は2022年10月31日まで(予算内で終了)となっています。
では、具体的に見ていきましょう。
補助の対象は?
「新築」は子育て世帯などが対象
新築(注文住宅建築、分譲住宅購入)でこの制度の対象となるのは、自らがそこに居住する子育て世帯または若者夫婦世帯です。「子育て世帯」とは、申請時点で「2003年4月2日以降に出生した子どもを持つ」世帯、「若者夫婦世帯」とは、同じく「夫婦のいずれかが1981年4月2日以降生まれ」の世帯を言います。
住宅そのものにも省エネ性能に伴う要件があり、補助される金額も変わります。
- ①ZEH(※1)、Nearly ZEH、ZEH Ready、ZEH Oriented(強化外皮基準かつ再エネを除く一次エネルギー消費量▲20%に適合するもの)=補助額100万円/戸
- ②高い省エネ性能等を有する住宅(認定長期優良住宅、認定低炭素建築物、性能向上計画認定住宅)=同80万円/戸
- ③省エネ基準に適合する住宅(断熱等級4かつ一次エネ等級4以上を満たす住宅)=同60万円/戸
また
- ●延べ床面積は50㎡以上
- ●土砂災害防止法に基づく、土砂災害特別警戒区域外に立地する
- ●交付申請時、一定以上の出来高の工事完了が確認できる
なども要件となります。
この補助金は、住宅の取得や本体工事の全部または一部を対象とする国の他の補助制度とは併用できないため、注意が必要です。
併用できる補助制度
- すまい給付金
- 住まいの復興給付金
- 外構部の木質化対策支援事業
- 住宅ローン減税等の税制優遇
- 被災者生活再建支援制度
- 解体工事への補助 など
併用できない補助制度
- 地域型住宅グリーン化事業
- ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業
- ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化による住宅における低炭素化促進事業
- 市街地再開発事業への補助
- サステナブル建築物等先導事業 など
新築の補助について、詳しくは国土交通省こどもみらい住宅支援事業のリーフレットを確認してください。
対象となる「リフォーム」は?
一方、リフォームに関しては、「子育て世帯」や「若者夫婦世帯」という条件はなく、どんな世帯でも次のような工事が補助の対象となります。ただし、①~③のうち1つは必須の工事となっており、④~⑧はそれと合わせて行うことで補助の対象となります。
必須のリフォーム工事
- ①開口部の断熱改修 ガラス交換、ドア交換など
- ②外壁、屋根・天井又は床の断熱改修
- ③エコ住宅設備の設置 太陽熱利用システム、節水型トイレ、高効率給湯器など
自由追加できるリフォーム工事
- ④子育て対応改修 家事負担軽減に資する住宅設備の設置(ビルトイン食洗機、掃除しやすいレンジフード、浴室乾燥機、宅配ボックスなど)、防犯性の向上に資する開口部の改善、生活騒音への配慮に資する開口部の改善、キッチンセットの交換を伴う対面化改修
- ⑤耐震改修
- ⑥バリアフリー改修 手すりの設置、段差解消、ホームエレベーターの新設など
- ⑦空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置
- ⑧リフォーム瑕疵保険等への加入
リフォームの補助額は、原則として1戸当たり30万円が上限です。ただし、次の条件に該当する場合には、上限が引き上げられます。
◆子育て世帯、若者夫婦世帯
・既存住宅の購入を伴う場合=最大60万円
・それ以外の場合=最大45万円
◆その他の世帯(法人を含む)
・安心R住宅(※2)である既存住宅の購入を伴う場合=最大45万円
・それ以外の場合=最大30万円
なお、下限は5万円となっており、それに満たないリフォームは、この制度による補助の対象外です。
この補助金は、住宅のリフォーム工事を対象とする国の他の補助制度との併用はできません。
併用できる制度
- ・住宅ローン減税等の税制優遇
- ・被災者生活再建支援制度
各リフォーム工事の補助額などについては国土交通省 こどもみらい住宅支援事業のリーフレットを確認してください。
補助金交付の流れ
申請から補助金交付までの手続きの流れを説明します。
申請は「住宅事業者」が行う
この制度による補助を受けるための申請は、新築住宅の建築、購入やリフォーム工事の契約を行う事業者(工事施工者、販売事業者)が行います。消費者が申請することはできません。
また、申請は、あらかじめこの事業に参加するために登録を行った「こどもみらい住宅事業者」(以下「住宅事業者」)であることが条件です。つまり、補助を受けたいと思ったら、まず”契約する業者が事業に登録しているかどうか”を確認する必要があるのです。
登録しているかどうかは以下国土交通省の検索ページで確認できますが、事業者の都合でホームページ上に掲載されていないケースもあります。その場合には直接確認するのが良いでしょう。
要件の確認、契約の締結
補助の要件を満たしているかなどについて住宅事業者に相談し、OKならば事業者と契約を結びます。契約時には、この事業用の「共同事業実施規約」(「住宅事業者の申請手続き代行」「補助金の消費者への還元方法」などを確認するための書類)を併せて締結します。
補助金の交付申請
住宅事業者が、新築の場合は基礎工事などの完了後/リフォームは全工事の完了後に、申請を行います。なお、着工後に必要書類を提出することで、交付申請の予約が可能です。これにより3ヵ月間、交付予定額を確保することができます。
補助金の交付・還元
補助金は、住宅事業者に振り込まれた後、共同事業実施規約の契約に基づいて、以下のいずれかで消費者に還元される仕組みになっています。
①契約代金(最終支払い)の一部に充当
②現金での支払い(契約代金を清算済みの場合に限る)
新築は入居の報告が必要
新築の場合のみ、住宅事業者から入居の報告(完了報告)が必要です。入居が確認できる住民票(世帯票)などの提出が求められ、完了報告ができておらず還元を受けている場合には、補助金を返金しなくてはなりません。
また、補助金の交付から10年間は、新築住宅やリフォームの設備を国や支援事業事務局の承認なく交付の目的に反して処分(売買など)することはできません。その点も注意しましょう。
補助を受けるためには急ぐべき?
メリットの多い制度
新築住宅を持とうと考えている子育て世帯などにとって、60万円~100万円という補助はありがたいものです。リフォームに関しては、世帯を問わずニーズの高い外壁などの断熱や浴室やキッチンの工事をカバーしていることもあり、使い勝手のいい補助金といえるでしょう。
昨年実施された「グリーン住宅ポイント制度」は、一定の性能を有する住宅を取得する場合に、商品と交換できるポイントを付与するというものでした。これに対して、現金が支給されるこの制度は、建築やリフォームのコストを直接軽減できるという点でもメリットがあります。
予算は限られている
ただし、補正予算に計上された予算は542億円で、「グリーン住宅ポイント制度」(1,094億円)の約半分となっています。申請期限は遅くとも今年10月31日までとなっていますが、それを待たずして終了になる可能性もあるでしょう。補助を受けたい場合には、早めに住宅事業者に相談してみることをおすすめします。
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まとめ
要件を満たせば国の補助金がもらえる「こどもみらい住宅支援事業」の申請が始まっています。新築やリフォームの際には、自分が要件を満たすかどうかを確認し、使える場合には必ず申請するようにしましょう。
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