鈴木誠也選手が大型契約でカブス入り!野球選手の“税金事情”はどうなっている? | MONEYIZM
 

鈴木誠也選手が大型契約でカブス入り!野球選手の“税金事情”はどうなっている?

元広島東洋カープの鈴木誠也選手のメジャーリーグ(MLB)シカゴ・カブスへの入団が決まりました。驚きをもって迎えられたのが、その契約金額です。5年総額8,500万ドル、日本円にして約102億円というのは、MLB移籍1年目の日本人野手としては史上最高額(年俸ベース)でした。とはいえ、高収入を得ればそれだけ納税額も高くなるのはお決まりです。プロの野球選手にはどんな税金がどのくらい課税されるのか、日米に違いはあるのか、見ていきましょう。

アメリカでは“ホーム”と“アウェイ”から徴税

10球団が競合の末に

鈴木選手の契約額は、単純計算の年俸で1,750万ドル。MLB移籍1年目の日本選手としては、2014年にニューヨーク・ヤンキースと7年1億5,500万ドル、年俸にして2,200万ドルで契約した現楽天イーグルスの田中将大投手に次ぐ金額で、野手としては最高額となりました。
 
アメリカメディアによれば、鈴木選手の獲得をめぐっては、8~10球団が争奪戦を繰り広げたといわれます。そうした激しい競合が、超高額の契約金に結びつきました。

日本とは異なるアメリカの「地方税」

鈴木選手のようなメジャーリーガーは、1年以上日本を離れて暮らし、なおかつ所得の源泉が海外にありますから、居住するアメリカで所得税を納めることになります。アメリカにおいても、個人に課税される主な税は、日本の所得税(国税)に当たる「連邦所得税」と住民税(地方税)に近い「州所得税」となっています。
 
ただ、行政単位としての州の権限が大きいアメリカの課税の仕組みは、日本と少し異なります。「連邦税」が納税者の居住地に関わりなく一律に課税されるのに対して、州税のほうは州ごとに税法自体が異なるため、課税される税目や税率に違いがあるのです。
 
加えて、MLBをはじめNBA(バスケットボール)、NFL(アメリカンフットボール)のプレーヤーのように、全米各地を転戦しながら稼ぐ、すなわち各地に所得の源泉がある場合には、基本的に「勤務地」で州税が課税されることになり、より複雑な話になります。
 
日本で例えるならば、東京に暮らす選手が、阪神甲子園球場(兵庫県)やバンテリンドーム(愛知県)でゲームをしたら、その試合数に応じた年俸割合にそれぞれ税率の違う「地方税」がかかってくる、というイメージでしょうか。
 
州ごとに税率が違うと言いましたが、実は州税を課さない州もあります(アラスカ、フロリダ、ネバダ、サウスダコタ、テキサス、ワシントン、ワイオミングの7州)。また、ニューハンプシャーとテネシーのように、投資所得のみが課税対象の州もあります。かつてイチロー選手や佐々木主浩投手が所属したシアトル・マリナーズは、「無税」のワシントン州にありました。ホームゲームとアウェイゲームは半々ですから、彼らはマリナーズ時代、年俸の半分には州税が課税されなかったことになります。

日本のプロ野球選手への課税

年俸のトップ10は?

一方、日本のプロ野球の稼ぎはというと、トップ10は以下のようになっています(「プロ野球・年俸ランキング2022」BASEBALL KINGより)。

  • 1位 田中将大(楽天):9億円
  • 2位 柳田悠岐(ソフトバンク):6億2,000万円
  • 3位 千賀滉大(ソフトバンク):6億円
  • 3位 菅野智之(巨人):6億円
  • 3位 坂本勇人(巨人):6億円
  • 6位 浅村栄斗(楽天):5億円
  • 6位 山田哲人(ヤクルト):5億円
  • 8位 森 唯斗(ソフトバンク):4億6,000万円
  • 9位 丸 佳浩(巨人):4億5,000万円
  • 10位 吉田正尚(オリックス):4億円

メジャーのプレーヤーに及ぶべくはありませんが、それでも「一般人」から見ると破格の報酬が並んでいます。

プロの選手は「個人事業主」

メジャーの場合もそうですが、プレーヤーは”球団の社員として働くサラリーマン”ではありません。それぞれが、雇い主である球団と年俸などに関する契約を結んでプレーする“個人事業主”なのです。
 
彼らの報酬は「事業所得」となり、毎年自らその年の1月1日~12月31日分の所得に対する確定申告を行ったうえで、所得税・住民税を納める必要があります。前々年の年俸(売上)が1,000万円を超えていたら、消費税の納税も求められます。
 
個人事業主は、所得税の確定申告の際に、売上を得るために必要な支出=必要経費を収入から差し引くことができます。プロ野球選手の場合は、バット・グローブ・スパイクなどの道具類やトレーニング機器の購入費用、ジムの使用料、自主トレに必要な交通費、ガソリン代などが経費に該当します。

納税が厳しくなるのはなぜ?

ところで、プロ野球選手や芸能人が税金の支払いに窮した…という話を時々耳にします。世間からすれば十分稼いでいるように見える彼らがそういう状況に陥るのは、なぜなのでしょうか? それは、ある意味、「稼いでいるからこそ」の現象とも言えるようです。
 
後述しますが、日本の所得税の最高税率は45%で、住民税も合わせれば「稼ぎの半分以上を持っていかれる」こともあります。とはいえ、税額が報酬を上回ることはありません。問題になるのは、年俸が前年に比べて大幅に減額された場合です。
 
先ほど確定申告の話をしました。申告期限は原則として翌年3月15日で、この確定申告があるまで、税務署はその人に前年どれくらいの所得があったのか分かりません。必然的に所得税・住民税・消費税は、「前年の分を今年納める」ことになります。前の年に大きく稼いでいると、税金が高額になるため、蓄えがないとたちまちピンチになってしまうというわけです。
 
サラリーマン(給与所得)の場合は、基本的に税金は源泉徴収(天引き)され、年末調整で過不足が「清算」されますから、こうした問題は起こりません。正確にいうと、プロ野球選手のような個人事業主も所得税(国税)は源泉徴収され、払い過ぎがあれば還付されるのですが、住民税や消費税は自ら納税しなくてはならないのです。

税金は日米どちらが高いのか?

では、同じ“1億円プレーヤー”で、納める税金に日米で大きな差はあるのでしょうか?

日本の場合は?

日本の所得税は、所得が増えるほど税率も上がっていく「累進課税」になっています。
具体的な税率は、所得195万円以下が5%、195万円超~330万円以下が10%(控除額=税額から差し引かれる金額9万7,500円)と上昇していき、最高は所得4,000万円超の45%(控除額479万6,000円)です。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

 

また住民税(※)は、区市町村民税6%と道府県民税・都民税4%の計10%(所得割)となっており、所得税の最高税率だと合計55%課税される計算になります。

※住民税:前年の課税所得に応じて課税される「所得割」と、所得に関係なく定額が課税される「均等割」がある。

アメリカの場合は?

他方、アメリカはというと、やはり所得税は累進課税で、1万275ドル(約123万円)以下の10%から始まって、最高は53万9,900ドル(約6,480万円)超の37%+16万2,718ドルとなっています。

課税所得帯 税率
0~10,275ドル以下 10%
10,275ドル超~41,775ドル以下 1,027.50ドル+12%
41,775ドル超~89,075ドル以下 4,807.50ドル+22%
89,075ドル超~170,050ドル以下 15,213.50ドル+24%
170,050ドル超~215,950ドル以下 34,647.50ドル+32%
215,950ドル超~539,900ドル以下 49,335.50ドル+35%
539,900ドル超 162,718.00ドル+37%

問題は、さきほども説明した所得税の州税で、課さない州があれば、課税する州でも一定税率と累進税率に分かれています。最高税率は、一定税率でノースカロライナ州の5.25%、累進課税の州の中では、カリフォルニア州の1%~12.3%です。要するに地域によってバラバラで、納税額の差も大きいわけです。

 

所得税(国税)に関しては、トップアスリートたちはみな最高税率の税金を納めることになりますから、比較すれば日本の方が割高といえるでしょう。住民税と州税を合わせた金額でも、同じ所得ならば日本で支払う税金のほうが多くなりそうです。特に州税ゼロの地域に本拠地を置くチームのスター選手は、所得が破格なだけにかなりの“お得感”があります。ちなみに、鈴木選手の所属するカブスのホームであるイリノイ州では一定税率で課税され、税率は4.95%となっています。

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まとめ

5年100億円超の契約で、鈴木誠也選手のカブス入りが決まりました。チームの期待が反映した大型契約の結果、支払う税金も並大抵のものではなくなりましたが、日本でプレーするのに比べればかなり“有利”といえるかもしれません。

マネーイズム編集部
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