フリーターで個人事業主と自覚している人は多くないでしょう。同じ「フリー」という言葉が付く立場でも、フリーランスは開業届を出した場合、個人事業主に該当します。しかし、フリーターでもフリーランスと同様に確定申告が必要になるケースがあります。そこで、フリーターの税金と確定申告について詳しく解説します。
確定申告とは
まずは確定申告のアウトラインについて見ていきましょう。
1年間の所得税の計算が確定申告
我が国は申告納税制度に則り、自分で納める税金を申告し、納税するのが基本的なルールです。原則、フリーターも納める税金の申告に相当する確定申告が義務付けられています。確定申告では1年間の所得(もうけ)に対する所得税の計算をします。
フリーターは給与所得者
そもそも所得税の計算に用いる所得は10種類に分類されています。フリーターは勤務先と雇用契約に基づき給料をもらっているため、給与所得になります。一方、フリーランスは自営業や業務委託など雇用契約以外の契約に基づく収入を得ているため、事業所得になるのが一般的です。
確定申告の必要なフリーター・不要なフリーター
フリーターの給与所得の場合、年末調整という制度により確定申告が不要になるケースがあります。年末調整とは、従業員(雇用契約を結んでいる人)の1年間の所得税を従業員自身が計算・申告をするのを勤務先が代行する制度です。確定申告の必要なフリーター・不要なフリーターの線引きは次のとおりになります。
- 確定申告の必要なフリーター:年末調整で所得税の計算が完結しないフリーター
- 確定申告の不要なフリーター:年末調整で所得税の計算が完結するフリーター
無申告はいずれ発覚する
確定申告の必要なフリーターが無申告の場合、いずれ税務署に発覚します。所得税の計算の基になっている給与収入を勤務先が「給与支払報告書」を各市区町村に報告しているためです。税務署が給与収入について各市区町村に照会すれば、無申告は発覚します。特に親の扶養に入っているフリーターの場合、無申告の発覚により扶養から外れて親の所得税が増税される可能性があります。
確定申告の必要なフリーター
ここでは確定申告の必要なフリーターについて詳しく説明します。
フリーターまたはフリーランスのどちらの立場か確かめる
最近はアルバイトでも業務委託の仕事が増えています。そのため、収入先との契約が雇用契約かどうかを事前に確かめる必要があります。雇用契約ならフリーターとして給与所得、雇用契約以外ならフリーランスとして事業所得になります。
2ヵ所以上の雇用契約先から給料をもらっている人
掛け持ちでアルバイトをしているフリーターは2ヵ所以上の雇用契約先から給料をもらっている場合は原則、確定申告が必要になります。年末調整が可能な給与所得はメインで勤務する雇用契約先、1ヵ所のみになるためです。
ただし、「給与収入の合計額-雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額」が150万円以下の場合は確定申告が不要です。たとえば、2ヵ所からの給与収入の合計額や給与収入の合計額から社会保険料控除を差し引いた残額が150万円以下の場合、確定申告をする必要がありません。
業務委託をしているフリーター(フリーランス)は確定申告が必須
業務委託の仕事をしているフリーターは厳密にいうとフリーランスの位置づけであり、事業所得として確定申告が必要になります。
雇用契約と業務委託を併用している場合
アルバイトの掛け持ちで雇用契約と業務委託を併用している場合は、次の区分ごとに確定申告の必要の有無が決まります。
(1)雇用契約先が1ヵ所のみの場合
- 業務委託の収入から経費を差し引いた所得(事業所得または雑所得)が20万円を超える場合:確定申告が必要
- 業務委託にかかる所得が20万円以下の黒字の場合:住民税の申告のみ必要(確定申告は不要)
- 業務委託にかかる所得が赤字(収入<経費)の場合:確定申告と住民税の申告のいずれも不要
(2)雇用契約先が2ヵ所以上の場合
- ①業務委託にかかる所得が20万円を超える場合:確定申告が必要
- ②「給与収入の合計額-雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額」が150万円を超える場合:確定申告が必要
- ③「給与収入の合計額-雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額」が150万円以下の場合
- 業務委託にかかる所得が20万円以下の黒字の場合:住民税の申告のみ必要(確定申告は不要)
- 業務委託にかかる所得が赤字の場合:確定申告と住民税の申告のいずれも不要
フリーターの確定申告のやり方
フリーターの確定申告のやり方について説明します。
収入が給料のみの場合
給与収入のみのフリーターの場合、雇用契約先ごとの源泉徴収票を入手することがポイントになります。トータルの年収さえ把握できれば、給与所得は自動計算されます。経費に相当する給与所得控除額は給与収入をもとに計算されるためです。たとえば、令和2年の給与収入が300万円の場合、給与所得控除額は98万円になり、給与所得は「300万円-98万円=202万円」と自動計算されます。
業務委託の収入がある場合
業務委託にかかる事業所得または雑所得は申告納税制度に則り、収入・経費・所得を自分で計算しなければなりません。また、事業所得として確定申告をする場合、計算の根拠となる会計帳簿も作成する必要があります。
所得控除の資料をそろえる
社会保険料控除や生命保険料控除などの所得控除の計算には、参照すべき資料をそろえるのがポイントになります。主に次の資料です。
- 源泉徴収票:給与天引き額の雇用保険など社会保険料控除のもととなる資料
- 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書:社会保険料控除のうち国民年金保険料の負担額を知る資料
- 国民健康保険の領収書や引落口座の明細書など:社会保険料控除のうち国民健康保険の負担額を知る資料
- 生命保険料控除証明書・地震保険料控除証明書:生命保険料控除額及び地震保険料控除額を知る資料 など
専門家を活用する
前述の通り、フリーターの確定申告は本人のみならず扶養に入れている親の所得税(主に扶養控除)にも影響を及ぼします。確実に本人と親の節税対策を施すためにも、たとえフリーターであっても税金の専門家を活用する意味があります。専門家を活用するポイントは次の通りです。
(1)親が税理士と顧問契約を結んでいる場合
親の顧問税理士に相談するのがポイントになります。できる限り年内に相談することをおすすめします。フリーターの所得が確定する前なら親の扶養に入れるための節税対策(本人の給与収入を103万円以下に抑えるなど)ができるためです。
(2)確定申告のやり方を知りたい場合
税務署に出向けば、相談員が無料で教えてくれます。しかし、質問に対して答えるというスタンスのため、積極的な節税対策のアドバイスは期待しないほうがいいでしょう。
(3)節税に興味のあるフリーランス及びフリーター
節税対策の質問に積極的に答えられるのは税理士のみです。税金に詳しい無資格者でも「本人の求めに応じた税務相談」は有料または無料に関係なく、税理士法で禁止されています。
まとめ
アルバイトでも業務委託の仕事が存在するなどフリーター(雇用契約)とフリーランス(雇用契約以外の仕事)の境界があいまいになりつつあります。「アルバイト収入=給料」とは限らず、事業所得または雑所得として確定申告の対象になる確率も高くなってきています。フリーターは本当に確定申告の必要がないのかどうかを確かめる必要があります。
▼参考URL
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https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h27honpen/b1_04_02.html
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https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2018/b/04/4_01.htm
http://www.kinzei.or.jp/search/regulation/chapter_1_2.html(税務相談の項目)
http://www.skattsei.co.jp/topics/testseiwebzeirisihou/law/list.html#n_2-6(税理士法基本通達2-6 税務相談)