投資を始めるにあたっては、まず最初に、どのような事態になったらその投資対象を売却するのかをあらかじめ考えておく必要があると言われます。
この記事では、投資初心者やこれから投資を始めようと考えている人に損失の確定である「ロスカット」について解説します。
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仮想通貨の「ロスカット」について。税金対策になるケースってどんな時?【3分かんたん確定申告・税金チャンネル】|3分でわかる税金
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ロスカットとは?ロスカットするのはなぜ?
ロスカットとは損失を確定すること
一般にロスカットとは、投資対象の価格が下落し、回復が見込めないと判断された場合に、それ以上の損失がないように投資対象を売却し、損失額を確定することを言います。つまり、その取引から降りることです。
投資を続ける上で、どこでロスカットをするかの「タイミング」の決定は投資における非常に重要なポイントです。
「損切り」もほぼロスカットと同じ意味で使われますが、損切りとは損失額の確定のみを指しますが、ロスカットには、強制的なロスカットが含まれる場合があります。
FX(外国為替証拠金取引)は、取引業者に証拠金を取引業者に委託し、元手となる資金以上の取引をすることが可能です。元手以上の取引をすることをレバレッジ(Leverage)をかけるなどと表現します。
このレバレッジをかけた取引において一定以上の評価損がでた場合、いきなりではないものの、取引業者により強制的に損切りをされることがあります。
これは「強制ロスカット」などとも言われ、相場の急変など不測の事態が起こり、預けた証拠金に余裕がない場合などに取引業者によって行われる強制決済です。
株式投資における信用取引などには、このようなロスカットはありませんが、投資する者が自らロスカットを実施するルールを決め、大打撃を受けないように早めに損切りをしなければなりません。
結局、変動するものを扱うルールが、業者側にあるのか自分にあるのかが異なるわけです。
仮想通貨(暗号資産) のロスカットとは?
仮想通貨においてもFXと同様に強制的にロスカットされる場合はあります。
FXと同様に、仮想通貨においても手元資金を「証拠金」として取引業者に委託し、それを担保に何倍もの金額の取引をする「レバレッジをかける」取引があります。
例えば、10万円の証拠金に2倍のレバレッジを掛けると、20万円分の取引ができるということです。
仮想通貨取引を始めたばかりの資金が少ない人にとっては、FX同様少額の資金で大きな取引が可能となります。
仮想通貨の取引業者により基準は異なりますが、取引業者に預けた証拠金の評価額が取引に必要な額に比べて一定の水準を下回った場合には、取引業者によりロスカットが実施されます。
実際にはシステム的に売却が行われ損失が確定するという流れです。
一般に、ボラティリティ(Volatility)とは価格変動の度合いを示す用語で、ボラティリティが大きいとは、取引対象の価格変動が大きいことを意味します。
乱高下の激しい仮想通貨は、非常にボラティリティーが大きいので、リターンもリスクも大きいと言えます。
したがって、仮想通貨においてロスカットされた場合の損失は大きいことを覚悟しなければなりません。
ロスカットが起こったときの税金対策
証拠金取引におけるFXと仮想通貨の税金計算の違い
ここで、税金の計算についても見ておきましょう。
同じようなレバレッジを掛けた証拠金取引でもFXによる所得と、仮想通貨による所得は税金の計算しくみが異なります。個人が証拠金取引をした場合の取扱いの違いを見てみましょう。
証拠金取引の例 | 課税方式 | 損失が生じた場合 |
---|---|---|
FX (外国為替証拠金取引) |
申告分離課税 | ・他の先物取引に係る雑所得等との内部通算は可能。 ・先物取引に係る雑所得等以外の所得との損益通算は不可。 |
仮想通貨 | 総合課税 | ・雑所得内での内部通算は可能。
・他の所得と損益通算できません。 |
個人が事業以外のFX取引において得た所得については雑所得となり、「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」の適用があります。この特例により、課税方法は申告分離課税となりますので、他の所得と区分して所得税15.315%(復興税含む)、住民税5%が課税されることになります。
また、個人が事業以外で仮想通貨の証拠金取引をした場合には、FX同様金融商品先物取引等には該当しますが、申告分離課税の対象とはならず、雑所得として総合課税の対象となります。
この場合、個人事業主であっても事業所得などとの損益通算はできませんが、雑所得内部における通算は可能です。
仮想通貨で得た利益と損失だけでなく、例えば公的年金等などの雑所得との内部通算ができます。
よって、FXで利益を出し、仮想通貨のロスカットにより損失がでても取扱いも課税方法も異なるため、両者の損益を相殺することはできません。同じ所得内部における内部通算においても、FXと仮想通貨のように通算できないものもありますので注意しましょう。
ロスカットが税金対策になる場合(雑所得内の内部通算)
例えば、仮想通貨取引をA社とB社の2つの取引業者を使って行い、かつ、雑所得があって、
- ● A社の取引ではロスカットが発生し、▲70の損失
- ● B社の取引では売買益が発生し、+40の利益
- ● その他の雑所得 +10の利益
となったとします。
この場合、三者とも雑所得であるため、雑所得の区分内における通算ができます。
また、雑所得は繰越控除はできませんので、この例では合計してもマイナス20になりますが、損失を繰り越すことはできません。仮想通貨取引で大きなロスカットが出た場合に、雑所得における赤字部分は切り捨てられることになります。
FX取引での損失は、他の「先物取引に係る雑所得等」との区分内通算は可能ですが、先物取引に係る雑所得等以外の所得との損益通算はできません。しかし、FXの場合、内部通算をしても引ききれない損失がある場合には、一定の要件のもとに翌年以後3年間の繰り越し控除が可能です 。
この点が仮想通貨取引と異なる部分です。
仮想通貨の課税のしくみ
仮想通貨 課税の基礎知識
個人向けの仮想通貨の課税について簡単なQ&A方式にしてまとめました。参考にしてください。
1 | 仮想通貨を取得した場合は? | 国内業者より仮想通貨を取得した場合には、その購入時に支払った金額(手数料を含む)がその仮想通貨の取得価額となります。 個人の場合は、保有する仮想通貨が値上がりし、含み益が発生していてもそのまま保有を続ける場合には課税はされません。 |
2 | 仮想通貨売却した場合は? | 保有する仮想通貨を売却した場合には、 (仮想通貨の譲渡価額 - その仮想通貨の取得時の価額) が雑所得の金額となります。 なお、その他必要経費がある場合には、必要経費を差し引いて求めます。 |
3 | マイニングにより仮想通貨を取得した場合は? | 仮想通貨の取引に際し、承認に必要な計算作業に協力し、成功報酬として新規に発行された仮想通貨を得た場合には、 (取得した仮想通貨の時価 - マイニング費用) が雑所得の金額となります。 |
4 | 仮想通貨売却時の必要経費とは? | 売却した仮想通貨の原価や売却時の手数料以外に必要経費となるものは、次のようなものです。 ・インターネットの回線料、光熱費 ・パソコン等の購入費用 ただし、仮想通貨売却のために必要な支出であると認められるものに限ります。 |
仮想通貨 取扱いにおける注意点
仮想通貨の将来性に期待されるものは大きいですが、リスクを抱えていることでは他の投資と変わりありません。仮想通貨を保有している人やこれから保有しようとしている人への注意点 をいくつか挙げておきます。
- ● 仮想通貨は、それぞれの国が価値を保証している「法定通貨」ではありません。仮想通貨とは、インターネット上で取引される電子データであることを認識しておきましょう。
- ● 仮想通貨だけではありませんが、短期間に価格が下落し、大きな損をする可能性もあります。
- ● 仮想通貨の交換業者を利用する際は登録を受けた事業者かどうかを金融庁のホームページで確認しましょう。海外の事業者も含み、無登録業者の勧誘に気をつけましょう。
- ● 取引内容やリスク(価格変動リスク、サイバーセキュリティリスク等)について業者からの説明を受けましょう。また、取引業者の営業時間やメンテナンス時間などにも注意しましょう。
まとめ
ロスカットにより大きな損を出した場合、精神的に大きなダメージを受けます。焦ってさらに深みに入り、鬱状態になってしまう場合すらあります。
一般には、仮想通貨にしろ、FXにしろ、ギャンブルとは一線を画しているものと考えられています。
どの取引をするにも、自分なりに調査をし、万が一ロスカットにあったとしても内部通算などで乗り切れる範囲内で済むようなコントロールをしましょう。