会社で忘年会などを開催する場合、従業員に景品を渡すことがあります。「従業員に景品を渡しているのだから、福利厚生費として経費になるだろう」と考えがちですが、そうでないこともあります。例えば、商品券は原則、福利厚生費にならないので注意が必要です。
ここでは、忘年会などの景品選びで注意することを解説します。
そもそも福利厚生費とは
忘年会などの景品選びで注意することを見ていく前に、そもそも福利厚生費とはどのようなものかを見ていきましょう。
福利厚生費とはその名のとおり、従業員の福利厚生にかかる費用のことです。福利厚生には、大きく分けて、法定福利と法定外福利があります。
法定福利とは名前のとおり、法律で定められている福利厚生のことです。例えば、健康保険料や厚生年金保険料などが法定福利に該当します。法定外福利とは、法律では定められていませんが、会社が従業員に対して行う福利厚生のことです。例えば、慰安旅行や健康診断の費用、従業員への慶弔金などがあります。
法定福利と法定外福利のどちらも福利厚生ですが、経理で一般的にいわれる福利厚生費とは、法定外福利にかかる費用を指します。法定福利は、福利厚生費ではなく、法定福利費などの勘定科目で処理します。
では、従業員の福利厚生にかかる費用が、すべて福利厚生費になるのかというと、そうではありません。福利厚生費にできるのは、機会の平等や金額の妥当性が必要となります。
機会の平等とは、すべての従業員が、その福利厚生を平等に受ける機会があることです。また、金額の妥当とは、その費用の金額が社会通念上妥当であることです。
具体的には、永年勤続者への記念品や商品値引き販売、残業した者に支給する食事などが該当します。
特定の人のみ受けられる福利厚生の費用や、他社にくらべて大きな金額になる福利厚生の費用については、福利厚生費にならないので注意が必要です。
商品券は福利厚生費にならない?
福利厚生費とは、従業員の福利厚生にかかる費用のことです。では、忘年会の景品などで商品券を従業員に渡した場合は、福利厚生費にできるのでしょうか。
ここでは「そもそも商品券の購入が経費になるのか」といった点や、「商品券が福利厚生費になるのか」といった点を見ていきましょう。
そもそも商品券は経費になるのか
まず、そもそも商品券は経費になるのでしょうか。結論から言うと原則、商品券を購入しただけでは経費になりません。
なぜなら、購入した商品券は、後に商品券を使って商品を購入するための支払手段にすぎないからです。これは、商品を購入する手段が現金から商品券になっただけのことです。経費になるのは、あくまで商品を購入した際です。
では、具体例で商品券の仕訳を見ていきましょう。
・商品券購入の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
商品券 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 | 商品券購入 |
商品券は資産科目です。他店商品券など、資産科目の別の勘定科目で処理しても問題ありません。
・商品券使用時の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
消耗品費 | 5,000円 | 商品券 | 5,000円 | 消耗品購入 |
上記の仕訳を見ると、わざわざ商品券を購入しなくても、現金で消耗品を購入すればよいことになります。そのため、会社が商品券を購入する際には、わざわざ商品券を購入する理由を証明しなければなりません。
商品券を忘年会の景品にしたらどうなる?
次に、商品券を忘年会の景品にしたらどうなるのかを見ていきます。結論から言うと、忘年会の景品で商品券を渡すと、原則受け取った従業員の給料になります。なぜなら、商品券が現金と同様の扱いになるからです。
会社が毎月の給料以外に現金を従業員に支給したら、それは賞与扱いとなり、給料になります。これと同様に、例え忘年会の景品であっても、現金と同様の扱いである商品券を従業員に支給すれば、給料になってしまいます。
会社としては、従業員の給料は経費になるため、購入した商品券代は経費にできることになります。ただし、役員に渡した商品券は役員賞与として経費にできない場合があります。
一方、従業員にとっては、所得税などが課税されることになります。せっかく福利厚生のために忘年会の景品を出しても、商品券の場合は、従業員の課税の対象となってしまいます。忘年会の景品にするのであれば、高額でない物品のほうがよいでしょう。
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商品券を購入する場合の注意点
会社が商品券を購入する際には、多くの注意点があります。そのうち、特に気をつけなければならないのが次の2点です。
商品券を購入する場合は、高額にならないようにする
会社が商品券を購入する際の注意点として、高額にしないことが挙げられます。
実は、商品券を使った脱税行為はこれまで多く指摘されています。例えば、次のような脱税行為がありました。
得意先にお祝いなどとして商品券を渡す行為は、接待交際費として経費にできます。そこで、高額な商品券を購入し、領収書を経費で処理します。しかし、商品券は得意先に贈らず、自分で使ったり、金券ショップなどで現金化したりすることで脱税を行っていました。
税務署としても、脱税を暴くために、高額の商品券購入には目を光らせています。税務署に指摘を受けないためにも、できるだけ必要な時に必要な分の商品券のみを購入するようにしましょう。
使い道を明らかにしておく
高額な商品券の購入は、脱税行為を疑われる可能性があります。また、少額であっても、税務調査では使い道を尋ねられることが多くあります。税務調査で怪しまれないよう、渡した相手や商品券を使ったことがわかる領収書などを残し、使い道を明らかにしておく必要があります。
商品券のすべてが経緯にならない(否認される)ということはありません。商品券を購入する理由や使い道がはっきりとしており、なおそれが証明できる場合は、経費にすることが可能です。
例えば、金券ショップなどで、額面よりも低い金額で購入できる(この場合も、高額の購入は避けたほうがよいです)や、得意先にお祝い事があったため、贈答用として商品券を送った場合などです。
得意先に商品券を送った場合の会計処理は、次のようになります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
接待交際費 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 | 商品券贈答 |
すでに購入済の商品券(商品券勘定で処理済)を贈答する場合は、貸方勘定科目は商品券になります。
得意先に贈答用として商品券を渡した場合は、商品券購入の領収書の裏面または出金伝票に、渡した相手や目的を記載しておくようにします。こうすることで、税務署に指摘を受けた際に使い道を忘れることもないですし、証明にもなります。
ただし、出金伝票などを作成していれば、必ず税務署に経費として認められるというものではありません。あきらかに不自然に何度も贈答が行われている場合は否認されるので、注意しましょう。
まとめ
福利厚生費とは、従業員の福利厚生にかかる費用のことです。忘年会の景品を従業員に渡す場合は、一般的に福利厚生費になります。
しかし、商品券を従業員に渡した場合は、福利厚生費にならず給料扱いになります。給料扱いになると所得税の課税対象となるため、忘年会の景品は商品を渡すようにしたほうがよいでしょう。
また原則、商品券の購入だけでは経費になりません。商品券を使ってモノを購入したり、贈答用として得意先に渡した時に、初めて経費になります。
そのほかにも、高額の商品券の購入は、税務署に否認される可能性があるなど、多くの注意点があります。商品券の購入が必要な場合は、使い道を明らかにしておくなど、税務署の指摘を受けないようにする必要があります。