働き方やライフスタイルに多様化が進んでいる今、FIREを選択する人も増えてきました。
FIREとは、経済的に自立して早期リタイアをすることです。早期リタイアをすることができるため、FIREはメリットの大きなライフスタイルですが、厚生年金が減るという注意点もあります。
ここでは、FIREと厚生年金の関係について解説します。
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そもそもFIREとはどんなもの?
FIREと厚生年金の関係を見ていく前に、まずは、そもそもFIREとはどのようなものかを見ていきましょう。
FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとった言葉です。日本語に訳すと「経済的に自立して早期リタイアをする」ということになります。
ここで注目したいのが、FIREでは「経済的自立」を前提として、早期リタイアするということです。経済的自立とは、年間の生活費を捻出できる手段を確保している状態のことです。そのため、安心して早期リタイアすることができます。
FIREにおける年間の生活費を捻出できる手段は、多くの場合、資産運用による収入です。
FIREでは、年間の生活費を資産運用の収入でまかないます。経済的自立を前提としているため、老後の資金を賄うだけの貯金がなくても、早期リタイアすることが可能になります。
日本の年金制度の内容とは
次に、日本の年金制度について見ていきましょう。日本の年金制度は、大きく分けて国民年金と厚生年金の2つがあります。それぞれの制度内容は、次のようになります。
誰もが支払う国民年金
日本の公的年金制度は、2階建てになっています。国民年金は、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人の誰もが支払う、1階部分の年金です。自営業者はもちろんのこと、学生や無職の人も国民年金を支払う義務があります。
国民年金保険料は、収入金額などに関係なく定額です。また、会社員が毎月支払っている厚生年金保険は、国民年金も負担しているので、会社員も国民年金の加入者になります。
国民年金では、加入者を状況によって次の3つに分けています。
・第1号被保険者
自営業者や学生など、自分で国民年金保険料を納める人
・第2号被保険者
厚生年金保険加入者である会社員や、共済組合加入者である公務員
・第3号被保険者
第2号被保険者の扶養に入っている配偶者
会社員に扶養されている配偶者は、第2号被保険者全体で国民年金保険料を負担しています。そのため、国民年金保険料の支払はありませんが、国民年金に加入していることになります。
会社員などが支払う厚生年金
日本の公的年金制度の2階部分が厚生年金です。会社員や公務員などが、厚生年金に加入しています。納める厚生年金保険料は、毎月の給料に一定の保険料率を乗じて計算されます。また、厚生年金保険料は雇い主と従業員で折半して納めます。
以上をまとめると、自営業や無職の人、学生などの人は国民年金のみに加入しています。
一方、会社員や公務員は、国民年金と厚生年金の両方に加入していることになります。
FIREと厚生年金の関係とは
FIREでは「経済的自立」を前提として、早期リタイアします。つまり、基本的にFIREをするのは会社員や公務員の人になります。
会社員や公務員の人は、厚生年金に加入しています。そのため、FIREと厚生年金には密接な関係があります。
ここでは、FIREすると厚生年金がどうなるのかなど、FIREと厚生年金の関係を見ていきましょう。
FIREすると厚生年金受給額が減少する
FIREの目標は早期リタイアです。つまり、会社員から無職もしくは自営業者になることです。そのため公的年金について、リタイア前と後で次のように、大きく異なります。
・加入状況
リタイア前は厚生年金と国民年金に加入しています。一方、リタイア後は厚生年金の加入から外れるので、国民年金のみの加入です。
・保険料の納付
リタイア前は厚生年金保険料の納付でしたが、リタイア後は国民年金保険料の納付になります。
ここで注意したいのが、FIREする人に第3号被保険者に該当する配偶者がいた場合です。
厚生年金保険では、第2号被保険者全体で、第3号被保険者の国民年金保険料を負担しています。そのため、第3号被保険者に該当する配偶者は、国民年金保険料を納める必要はありませんでした。
しかし、会社員や公務員の人がFIREし、厚生年金の加入から離れれば、国民年金の第1号被保険者になります。当然、第3号被保険者に該当する配偶者も、国民年金の第1号被保険者になるので、国民年金保険料の納付が発生します。
・年金の受給
会社員は原則65歳になれば、厚生年金(老齢厚生年金)と国民年金(老齢基礎年金)を受け取ることができます。FIREをしても国民年金の納付は続くので、国民年金の受給額が減ることはありません。
しかし、厚生年金の場合は在籍期間のみの納付で、退職すると納付がそこで終わります。そのため、受給も在籍期間の分のみです。
つまり、早くFIREすればするほど、厚生年金保険料の支払は減りますが、将来の受給額も減ることになります。
FIREすると厚生年金受給額はいくら減る?
早くFIREすればするほど厚生年金保険料の支払は減りますが、将来の受給額も減ります。
では、働いた期間と受給できる厚生年金の額の関係はどのようになるのでしょうか。
働いている期間の平均年収を400万円として、いくつかのパターンで年間の受給額をシミュレーションしてみましょう。
1.自営業で、40年間(満期)国民年金納付済の場合
・国民年金:78万円
・厚生年金:0万円
・合計:78万円
自営業の場合は厚生年金の加入がないため、国民年金のみの受給です。
2.20年間会社で働いてFIREした場合 国民年金は満期まで支払済
・国民年金:78万円
・厚生年金:41万円
・合計:119万円
3.30年間会社で働いてFIREした場合 国民年金は満期まで支払済
・国民年金:78万円
・厚生年金:61万円
・合計:139万円
4.FIREせずに、40年間企業で働き退職した場合
・国民年金:78万円
・厚生年金:81万円
・合計:159万円
会社員は、国民年金と厚生年金に加入しています。国民年金は満額で78万円なので、この金額はFIREする時期に関係なく受給できます。一方、厚生年金は、会社に勤めている期間が長いほど受給額も増加することが、このシミュレーションからも分かります。
上記のシミュレーションでいくと、10年間FIREする時期が短ければ、年額20万円の年金額が減少します。そのため、定年後には減少分の収入を資産運用の収入でまかなう必要があるので、注意しましょう。
まとめ
FIREとは、経済的に自立して早期リタイアをすることです。多くの場合、資産運用による収入により、リタイア後の生活費をまかないます。FIREは早期リタイアをすることができるので、自由な時間が増えたり、新しいことにチャレンジできるなどメリットが大きいです。
しかし、厚生年金の受給額が減少するデメリットもあります。国民年金の受給額は満額であれば変わることはありませんが、将来受給する厚生年金の額は、厚生年金に加入していた分のみになります。
今回ご紹介したシミュレーションでいくと、10年間FIREする時期が短ければ、年額20万円の年金額が減少します。FIREすることを考える際には、年金の受給を受けるまでの生活費を、資産運用の収入でまかなうことも考える必要がありますが、年金受給後に、厚生年金受給額の減少分をどうするのかについても考える必要があります。