婚姻率、出生率の低さが近年問題となっています。結婚を考えていない方が増加したことが大きな要因の一つですが、特に出生率の低下は国の将来にも大きな影響を及ぼします。そこで、婚姻を推進するために政府が打ち出したのが「新婚新生活支援事業」です。今回は国や地方公共団体が奨めるすすめる結婚助成金について解説します。
国が「少子化対策」として推進する結婚支援事業
「結婚新生活支援事業」とは何か?
「結婚新生活支援事業」とは、内閣府が主導で行う事業の一つであり、出生率の向上を目標に結婚しやすい環境づくりを支援していこうというものです。
女性が生涯のうちに出産する子供の数を表したのが「合計特殊出生率」です。日本の2019年における「合計特殊出生率」は1.36と、先進各国のなかでも低い水準となっています。
日本の人口構成は現在「釣り鐘型」から「壺型」に移行しつつありますが、高齢者を支える若年層、特に労働人口が減少していく傾向は望ましくありません。労働人口の減少は、国内生産力の低下を意味しますので、国としては早急に手を打つ必要があるわけです。
結婚しやすい環境づくりを政府が積極的に支援することで、婚姻率の向上、ひいては出生率の向上を目指そうというのが「結婚新生活支援事業」の概要です。
実際に支援するのは地方公共団体
「結婚新生活支援事業」は、国と地方公共団体が協力して行っている事業です。事業を推進しているのは内閣府ですが、婚姻した方に補助金を直接支給するわけではありません。実際に審査し補助金を支給するのは婚姻をする方が住民登録している地方公共団体です。
地方公共団体が新婚世帯に対して「30万円」を上限として支出した金額の1/2を補助し、地方公共団体が負担した補助金を、国が一部負担する形で支援することになります。
したがって、結婚された方が「結婚新生活支援事業」の申請をする場合には、国ではなくお住まいの地方公共団体に対して申請を行うことになります。
地方公共団体によって申請期間や支援事業の予算額に違いはありますが、申請要件を満たした新婚さんであれば、だれでも申請可能です。
「結婚新生活支援事業」の支援を受けるための手続き
申請前にまずは要件の確認から
ではまず「新婚新生活支援事業」の主な申請要件について、令和4年度の申請要件を例に挙げて解説しましょう。
1.夫婦共に39歳未満であること
共に39歳未満であれば、30万円を上限として支出額の1/2を補助してもらうことができます。なお「都道府県主導型市町村連携コース」に該当すれば、夫婦ともに29歳未満であれば上限60万円、補助率2/3まで拡大されます。
2.令和4年4月1日から令和5年3月31日の間に婚姻届を提出していること
令和4年度の場合、婚姻届を上記期間内に市区町村に提出する必要があります。
3.申請時点で夫婦共に申請する市区町村に住民票があること
申請するためには、夫婦ともに該当する市区町村に住民登録している必要があります。
4.令和3年分の夫婦合計所得が400万円未満であること
夫婦の合計所得が400万円未満であることが要件ですが、出産等の理由で申請時点で収入がない場合には、申請日以前の所得はないものとして判定することができます。
5.市区町村民税の滞納がないこと
6.過去に家賃補助金や、他の市区町村で新婚新生活支援事業補助金を受けていないこと
家賃補助金や他の市区町村で既に「新婚新生活支援事業補助金」の支給を受けている場合には申請できませんので注意してください。
先にも述べましたが、地方公共団体によって申請期間や事業の予算額に違いがあります。要件を満たしているのに申請期限を過ぎてしまった、予算の関係で期限内でも受付終了になっていた、ということもあります。各地方公共団体の申請要件を早めに確認し、できるだけ早く手続きを進めることをお勧めします。
具体的な手続きの流れについて解説
次に「新婚新生活支援事業」の手続きの進め方を、実際に行われている手続きの流れを例に解説します。
1.婚姻届の提出
まずは、要件に該当する期間内に婚姻届を市区町村に提出します。後述しますが、事業の予算には限りがあり、申請開始日が早い自治体では4月から受付が始まりますので、期限に間に合うよう提出することをお勧めします。
2.申請書類の提出
申請する際に提出する書類を揃えて、窓口に提出します。各地方公共団体のHPには提出書類の一覧がわかりやすくまとめてありますので、一つ一つ確認しながら揃えていきましょう。書類不備があると給付が遅れたり、給付を受けられなくなったりすることもありますので注意してください。
3.市区町村による審査
提出を受けた書類について、申請者が要件を満たしているか市区町村で審査が行われます。
4.交付決定の通知
要件を満たしていることが確認できれば、市区町村から申請者に対して「新婚新生活支援事業補助金」の支給決定通知が届きます。
5.交付請求書の提出
通知が届いたところで、申請者が市区町村に対して補助金の交付請求を行います。支給決定があっただけでは補助金は支給されません。申請者からの交付請求が必須となりますので十分注意してください。
6.補助金の支給
申請者が指定した口座に、市区町村から補助金が振り込まれます。
「結婚新生活支援事業」の実施状況について
「結婚新生活支援事業」を行っている地方公共団体
令和3年8月時点で「新婚新生活支援事業」の交付決定をした市区町村は全国で538市区町村となっています。各都道府県別に交付決定市町村数をみてみましょう。
都道府県 | 市区町村数 | 都道府県 | 市区町村数 | 都道府県 | 市区町村数 |
---|---|---|---|---|---|
北海道 | 47 | 石川 | 11 | 岡山 | 13 |
青森 | 11 | 福井 | 7 | 広島 | 2 |
岩手 | 15 | 山梨 | 6 | 山口 | 4 |
宮城 | 5 | 長野 | 34 | 徳島 | 2 |
秋田 | 16 | 岐阜 | 12 | 香川 | 9 |
山形 | 27 | 静岡 | 18 | 愛媛 | 6 |
福島 | 36 | 愛知 | 6 | 高知 | 15 |
茨城 | 18 | 三重 | 4 | 福岡 | 24 |
栃木 | 8 | 滋賀 | 12 | 佐賀 | 7 |
群馬 | 14 | 京都 | 5 | 長崎 | 11 |
埼玉 | 14 | 大阪 | 6 | 熊本 | 17 |
千葉 | 19 | 兵庫 | 17 | 大分 | 6 |
東京 | - | 奈良 | 6 | 宮崎 | 2 |
神奈川 | 4 | 和歌山 | 4 | 鹿児島 | 8 |
新潟 | 8 | 鳥取 | 5 | 沖縄 | 5 |
富山 | 8 | 島根 | 4 | 合計 | 538 |
市区町村数は都道府県によって差があるため、支給決定の市町村数にかなりの差がありますが、全国的に事業が実施されていることがわかります。
なお、全国のなかでも東京都だけは「新婚新生活支援事業」を行っていません。東京都独自の「TOKYOふたり結婚応援パスポート」という事業を行っていますので、該当する方は補助金申請を検討してみてはいかがでしょうか。
予算がなくなったら終了となるケースも
ここまで解説した通り「新婚新生活支援事業」は地方公共団体が実際の補助金支給を行うことになります。先に国が行った「持続化給付金」のように、いくらでも予算をつけるといった事業ではありません。あらかじめ決められた予算額をオーバーした時点で補助金の申請受付は終了します。
せっかく申請要件を満たしているのに、受付が終わっていたという場合もあります。婚姻届の提出をする前の段階で、受付開始日をよく確認して早めに手続きを進めておきましょう。なお、確定ではありませんが「新婚新生活支援事業」は翌年度以降も継続することがあります。今年度に申請が間に合わなかったとしても、翌年度に申請できることも考えられますので、ご自身の市区町村のHP等をチェックするのをお勧めします。
まとめ
新婚生活を始めるときは引っ越し費用や入居費用など、往々にして出費がかさむものです。国や地方公共団体が積極的に推進する事業ですから、結婚を考えている方は是非、補助金の申請を検討してみてはいかがでしょうか。