家計の負担増!円安により影響を受けやすい業種について解説 | MONEYIZM
 

家計の負担増!円安により影響を受けやすい業種について解説

対ドル円相場が円安に向かって急激に推移しています。これに伴い、資源輸入国である日本では輸入コストが増加し、結果として経済全体で物価が上昇することとなりました。今回は、円安と輸入コストの関連性やその原因は何か?円安の影響を受けやすい業種、私たちの生活に与える影響などについて解説します。

加速する円安推移が日本経済に与える影響とは?

止まらない円安推移の原因は何か?

資源の乏しい日本では、以前から「資源を輸入して国内で加工し、付加価値をつけて海外に輸出する」という経済スタイルで成長を続けてきました。貿易黒字とは、輸出が輸入を上回る状態を指しますが、日本は世界屈指の貿易黒字国として、長い間、経済成長を続けています。特に1981年から2010年の30年間は継続して貿易黒字であったほどです。
 

そんな日本にいま逆風が吹いています。新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、日本をはじめとした全世界が経済ダメージを受けました。ダメージを受けた日本経済を活性化させるために、政府は「超低金利政策」を実施しています。これに対して、インフレの抑制に取り組むアメリカでは日本とは逆に「高金利政策」をとっています。
 

今回の円安が起こった要因には、このような日本とアメリカの「金利格差」が大きな原因であると考えられます。

円安が日本経済に与える影響

市場原理として、投資資産は「金利が高いほう」に流れていきます。金利が高ければ高い運用益が見込めます。日本の超低金利政策を敬遠し、より金利の高いアメリカに資産が流れていくのは必然といえます。その結果円が持つ資産価値、貨幣力が低下し、今回の円安が引き起こされることになりました。
 

ここで、円安がどのような状態を指すか、わかりやすく解説します。
 

例えば対ドル相場が「1ドル=100円」から「1ドル=200円」、つまり円安の方向に推移したとしましょう。
 

従来であれば、1ドルを手に入れるのに100円があればよかったのに、円安に推移することで、200円なければ1ドルを手にすることができなくなります。これは、円が持つ力がドルに比べて弱くなっていることを示しています。1ドル=200円であれば円が増えていますので、一見有利なのでは?と感じるかもしれませんが、実は全く逆の事態が起こっているのです。
 

これを輸入品に置き換えてみましょう。1ドルの商品を手に入れるのに、従来の100円では足りず、200円の資金が必要になるわけです。資源輸入国の日本にとって、これは重大な影響を与えることになります。

円安で影響を受けやすい業種とは?

資源輸入国である日本経済には深刻な影響がある

対ドル相場が円安に推移したことによる影響は、輸入するもの全てに共通して起こることです。輸入品は加工品だけではありません。エネルギー資源が特に乏しいわが国では、国内で経済活動を行うために必要な資源、例えば原油やLNG(液化天然ガス)などを海外からの輸入に依存しているのが現状です。原油や鉄鉱石、石炭にいたっては、ほぼ100%を海外からの輸入に依存しています。かつて原油産油国で紛争が起こった時には「シーレーン確保」について盛んに議論されたことがあります。エネルギー資源の供給がストップしてしまえば日本経済全体が機能しなくなるほど、資源の輸入は死活問題となります。
 

円安による影響は、当然これらエネルギー資源についても当てはまります。原油であれば、製品に使う直接的な材料としてだけではなく、電力や車両の燃料としても消費しています。どのような経済活動であっても、電気や車両を使うケースが多々ありますので、円安の影響を少なからず受けます。
 

結果として、日本国内全体が円安のコスト増にさらされることになるのです。

円安が事業者に与える影響とは?

では、円安による影響を受ける事業者とはどのような業種なのか主要エネルギー資源の一つである「原油」を例に解説します。
 

原油の輸入コスト増加の影響は、直接的なものと間接的なものに分けられます。
 

直接的な影響を受ける業種としては、原油の輸入・卸売りを行っている商社です。原油の単位として「バレル」がありますが、現在「1バレル=100ドル」前後で推移しています。対ドル相場が100円から120円に推移したとすれば、「1バレル=100ドル×100円=10,000円」から「1バレル=100ドル×120円=12,000円」になります。同じ1バレルの原油なのに、円安になるだけで2,000円も輸入コストが増加します。
 

その対応策として、商社は原油の卸売り単価を引き上げることになります。これにより、原油を消費する電力会社、ガソリンスタンドなどが間接的に影響を受けてしまいます。多少のコスト増であれば、企業努力でコスト増を吸収できるかもしれません。しかし、今回のような急激な円安推移でコストを吸収しきれない企業が増加し、結果として現在のような値上げラッシュが起こっているわけです。
 

円安が最終消費者に与える影響とは?

輸入コスト増加に伴う商品価格へのコスト転嫁

直接的、間接的を問わず、企業が吸収しきれなかった円安による輸入コストの増加は、結果としてコスト増の影響を受けた全ての商品に転嫁されます。さらに1つの商品を生産するために、複数回その影響を受けるケースもあります。直接要した原材料、原材料を加工するために使う電力などのエネルギー、完成品を店舗に運ぶために使った車両の燃料費などがその例です。輸入コストの増加により商品の価格を値上げするケースでは、直接的にかかったものだけではなく、間接的にかかった部分も含めたものになります。
 

特に、原油やLNGなどのエネルギー資源については、どの産業も必ずといっていいほど関連があります。経済全体で販売価格の値上げが起こるのも無理はありません。
 

そして、コスト増の最終負担者はエンドユーザーである「消費者」です。家計全般にわたって円安により増加したコストの多くを負担することになります。
 

値上げにより家計負担の増加は深刻に

電気料金の値上げやガソリン単価の値上げなど、販売単価が表記されているものについては「値上がりしたな」と実感できるでしょう。しかし、消費者が負担している輸入コスト増は目に見えない部分にも影響を与えているのです。
 

最近、価格改定で商品の値上げに踏み切った、というニュースをよく聞きます。表面上は気付きにくいですが、このような値上げの背景にはやはり生産コストの増加があるのです。円安による輸入コストの増加は輸入品全てに共通して起こりうるものです。製造業であれば鋼材や燃料、食品製造業であれば小麦粉やバターなど、円安の影響を受けるものを数多く消費していれば、それだけ製造コストは増加します。輸出する商品であれば別ですが、商品を国内で消費する場合、コスト増加の最終負担者は私たち消費者です。
 

消費社会である日本では、物やサービスを消費すればするほど、円安による家計負担増加の影響を受けることになるのです。

まとめ

日本経済は、新型コロナウイルスによる経済ダメージを回復するため今も懸命に動いています。政策としての「超低金利政策」が、今後の経済回復にどのような影響を及ぼすのか?私たちの家計負担の増減も含め、注意深く見守っていく必要があるでしょう。
 

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奥谷佳子
Webライター/ライター フリーランスとして様々な記事を執筆する傍ら、経理代行業なども行う。 自身のリアルな経験を活かし、税務ライターとして活動の場を広げ、実務で役立つ生きた税法の解説に努めている。 取材を通じて経営者や個人事業主と関わることも多く、経理や税務ほか、SNSを使った情報発信の悩みにも応えている。
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