個人事業主は毎年、確定申告をしなければなりません。正しく確定申告をするためには、日々の経理業務が重要です。また、得意先との取引や従業員がいる場合の業務など、確定申告に関するもの以外にも、さまざまな経理業務も発生します。
ここでは、個人事業主が行う必要のある経理業務について詳しく解説します。
個人事業主にとって経理業務が必要な理由とは
本業が忙しく、なかなか経理業務まで行うことができない個人事業主も多いでしょう。
しかし、個人事業主にとって、経理業務は必要不可欠です。それには、次のような理由があります。
・確定申告のため
個人事業主は毎年、確定申告をする必要があります。確定申告では、1年間の収入や経費を勘定科目ごとに整理して、金額を集計する必要があります。
日々の経理業務を行ってないと、確定申告時に1年分の帳簿付けなどの経理業務をまとめて行う必要が出てきます。これには、かなりの労力を必要とし、計算間違いや漏れなどの誤りも出てきやすくなります。正しく確定申告をするためには、日々の経理業務が必要です。
・毎月の経営状況を知るため
経営者にとって重要なのが、毎月の経営状況を把握し、問題があれば、改善や軌道修正をすることです。毎月の経営状況を把握するためには、毎月の売上や経費、利益の金額を把握する必要があります。そのため、日々の経理業務が必要です。
・借り入れのため
個人事業主が事業を行っていると、資金繰りの関係や、新たな投資などで資金が必要になることがあります。
資金が必要な場合には、銀行などの金融機関から融資を受けますが、その際には、試算表など、毎月の経営状況が分かる資料の提示を求められます。試算表などの資料を作成するためには、日々の経理業務が必要です。
・取引先とのスムーズな取引のため
日々の帳簿付けだけが、経理業務ではありません。請求書や納品書の発行をしたり、入金確認や振込業務なども経理業務です。これらの業務を滞りなく行うことで、取引先とのスムーズな取引が可能です。
個人事業主が毎月行う経理業務
個人事業主が行う経理業務には、毎月行うものと毎年行うものがあります。ここでは、個人事業主が毎月行う経理業務について見ていきましょう。
帳簿付けに関する業務
個人事業主が毎月行う経理業務の代表的なものが、帳簿付けに関する業務です。帳簿付けに関する業務とは、売上帳や仕入帳、総勘定元帳などの帳簿を作成するための業務のことです。帳簿付けに関する代表的な業務としては、次のものがあります。
- 領収書やレシートの整理
- 整理した領収書やレシート、売上や仕入などの取引についての帳簿付け(会計ソフトを使っている場合は仕訳の入力)
- 現金や銀行口座の残高と帳簿残高の照合、売掛金、買掛金残高の照合
- 試算表の作成
帳簿の保存期間および保存方法については、「個人事業主が注意したい帳簿の保存期間と保存方法まとめ」をご覧ください。
帳簿付け以外の業務
帳簿付け以外の業務には、次のものがあります。
・取引先とのやり取りにかかわる業務
売上や仕入など、事業の根本となる業務が取引先とのやり取りです。取引先や得意先に対する請求書や納品書、領収書などの発行、売上代金の回収や仕入代金の支払、売掛金や買掛金の残高の確認、資金繰り業務など、取引先とのやり取りにかかわる業務には、さまざまなものがあります。
・給料関係の業務
従業員を雇用している個人事業主にとって、重要なのが給料関係の業務です。残業時間や欠勤などの勤務状況を確認し、給料計算を行います。源泉所得税の計算や天引き、住民税や社会保険料の天引きなども忘れずに行います。
また、納付期限がきたら、従業員の給料から天引きした源泉所得税や住民税、社会保険料などの納付も忘れずに行います。
個人事業主が毎年行う経理業務
ここからは、個人事業主が毎年行う経理業務について見ていきましょう。
確定申告に関する業務
個人事業主が毎年行う経理業務の代表的なものが、確定申告に関する業務です。帳簿付けの業務は、日々の業務として行う必要があります。ただし、年に1回程度のみ行う確定申告に関する業務もあります。主なものは、次の業務になります。
・期末棚卸
商品の販売や製造など、期末に在庫が生じる業務を行っている場合は、期末の棚卸業務が必要です。棚卸業務とは、期末日に商品や製品、材料などの在庫の数を数える業務のことです。
・決算仕訳
決算仕訳とは、決算時に行う特別な仕訳のことです。決算仕訳には、棚卸の仕訳や減価償却の仕訳などがあります。
商品や製品、材料などは購入時に経費に計上していることも多いです。そこで、期末棚卸で確認した在庫の金額については、経費から資産に振り替える必要があります。また、期末棚卸で発覚した在庫の紛失や陳腐化したものを損失で落とす処理なども行います。これが、棚卸の仕訳です。
固定資産を保有している場合は、減価償却の仕訳も必要です。
・確定申告
決算仕訳が完了し、年内の取引についてすべての帳簿付けが終わったら、次は確定申告です。個人事業主は原則、翌2月16日〜3月15日までの間に確定申告と納税を行う必要があります。確定申告の手順は次の通りです。
①青色申告決算書や収支内訳書の作成
確定申告では納める税金の計算を行いますが、その前に1年間の収入や経費、利益の金額を計算する必要があります。
収入額や各勘定科目の残高、利益(所得)の金額などを基に、青色申告決算書(青色申告の場合)または、収支内訳書(白色申告の場合)を作成します。
②確定申告書の作成
青色申告決算書や収支内訳書の作成により、収入額や利益(所得)の金額が計算できたら、次は確定申告書の作成を行います。
年末調整に関する業務
従業員を雇用している個人事業主は、年末に年末調整に関する業務を行う必要があります。年末調整に関する業務とは、次のものをいいます。
・年末調整
年末調整とは、従業員の1年間の給料を基に、従業員の1年間の所得税の金額を確定させる業務のことです。
従業員は、毎月の給料から所得税を源泉徴収されていますが、実は、源泉徴収された所得税の金額は、仮の金額です。給料額の変動や保険料の控除、扶養家族の人数の変動などにより、1年間の所得税の金額は大きく変わります。そこで、年末に従業員の1年間の給料を基に、従業員の1年間の所得税の金額を確定させます。
確定額と、毎月の給料から源泉徴収した所得税の金額に過不足が生じる場合は、従業員に還付したり、さらに徴収する必要があります。
・給与所得の源泉徴収票などの法定調書合計表の作成
給与等の支払をする個人事業主は、翌1月31日までに「給与所得の源泉徴収票などの法定調書合計表」を所轄の税務署に提出する必要があります。
「給与所得の源泉徴収票などの法定調書合計表」とは、1年間に支払った給料の合計金額や人数を報告するための書類です。従業員への給料だけでなく、弁護士や税理士などへの報酬や不動産の使用料なども記載します。
また、支払金額などの一定の基準を満たす場合は、個別の従業員の源泉徴収票や税理士などへの支払調書も添付する必要があります。
・給与支払報告書の作成
従業員は、前年度の給料金額を基に、住民税の金額を決定します。住民税の金額は、各自治体が計算をします。そこで、1年間の給料額が確定したら、翌1月31日までに給与支払報告書(総括表)を作成し、従業員の住んでいる自治体に提出する必要があります。給与支払報告書には、源泉徴収票の添付が必要です。
まとめ
個人事業主は、数多くの経理業務を行う必要があります。経理業務には、毎月必要なものから、毎年必要なものまでさまざまです。
日々の経理業務をためてしまうと、確定申告時に多くの労力が必要となります。本業の業務量と経理業務の量を考え、場合によっては、会計ソフトの導入や税理士への依頼なども考えるようにしましょう。