美容業を開業するためには、多くの資金が必要になります。しかし、開業のための資金をすべて自分で用意するのは難しい場合もあります。
そこで、活用したいのが、国や自治体が用意している補助金・助成金です。ここでは、美容業を開業するための流れや、開業の際に利用したい補助金・助成金について解説します。
美容業界で開業する流れと必要資金
はじめに、美容業界で開業する流れと必要資金について見ていきましょう。
美容業界で開業するおおまかな流れ
美容業界で開業するためには、様々なことを行う必要があります。一般的な美容業界の開業までの流れは、次のようになります。
・リサーチ、コンセプトの立案
まずは、店舗を出そうと考えている場所の周辺環境をリサーチします。例えば、家族層が多い、学生が多いなど周辺の状況をリサーチし、同時に自分のお店をどのようなお店にしたいのかコンセプトを立案します。周辺環境と立案したコンセプトが合致したら、店舗の開業へと移っていきます。
・事業計画の策定
コンセプトが決まったら、それを具体的にするために、メニューや料金、店舗名の決定、初期費用の算定などを記載した事業計画を策定します。
・保健所・消防署への事前確認
美容室やサロンの営業には、保健所や消防署の許可が必要になります。店舗用物件を決定する前に、その物件や内装工事の許可が得られるかどうかを確認しておきましょう。
・店舗用物件の選定、申し込み
保健所や消防署の許可がおりそうなら、店舗用物件を選定し、申し込みをします。
・資金調達
美容業界での開業は、多くの資金が必要です。そのため、通常は融資を受けたり、補助金・助成金を利用したりするなど、資金調達を行います。
・店舗着工
資金調達ができたら、内外装工事や機器・備品調達を行います。
・従業員採用手続き
従業員を採用する場合は、従業員の募集や採用の手続きを行います。
・開業
すべての手続きが完了したら、開業となります。通常、店舗用物件の選定、申し込みから従業員採用手続きまでは同時並行で行います。
美容業界で開業する際に必要な資金
次に、美容業界の開業にはどれぐらいのお金が必要かを見ていきましょう。美容業界の開業には、次のようなお金が必要になります。
・物件取得費・内外装工事費
美容室の設置には、敷金や家賃、内装工事費用などが必要です。店舗の場所のほか、店舗を借りるのか自宅サロンなのか、物件の状態などによって、費用は大きく異なります。美容室の場合は500万円から1,000万円程度必要です。
・備品、材料費
美容機器や材料も用意する必要があります。こちらも、どのような機器を導入するかで異なりますが、数百万円程度かかります。
・運転資金、その他の費用
そのほか、事務用品費や当面の生活費などが必要となります。
美容業界の開業のための費用は、1,000万円程度必要といわれています。
美容業界の開業に使える補助金・助成金とは
美容業界の開業には、多くの資金が必要です。そのため、利用できる補助金や助成金は積極的に活用したいところです。
ここからは、美容業界の開業に使える補助金・助成金について見ていきましょう。
そもそも補助金・助成金とは?
補助金も助成金も、国や自治体から給付されるお金です。両者ともに、返済する必要はありません。返済が必要な銀行などの金融機関の融資に比べると、かなり資金繰りが楽になります。補助金と助成金の違いは、次のようになります。
・補助金
補助金は、国や自治体の政策に則った事業に対して給付されるものです。受給するためには審査があり、審査に通らない場合もあります。
・助成金
助成金は、おおむね労働環境の改善のために給付されるものです。原則、要件を満たせば給付されます。
助成金は原則、要件を満たせば給付されるため、補助金よりも受給しやすい傾向があります。
美容業の開業に使える補助金・助成金
補助金や助成金には多くのものがありますが、美容業界での開業に使える代表的なものには、次のものがあります。
・IT導入補助金
IT導入補助金とは、ITツールの導入に使うことのできる補助金のことです。ITツールの導入の最大1/2が補助されます。
IT導入補助金には、通常枠として、補助金の金額の違いによりA類型(補助額:30万~150万円未満)とB類型(補助額:150万~450万円以下)の2つがあります。
美容業界においては、会計ソフト、受発注ソフト、POSレジなどの導入などに使うことができます。IT導入補助金には、そのほか特別枠なども用意されています。
対象者 | 個人事業主・中小企業 |
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補助額 | A類型:30万~150万円未満 B類型:150万~450万円以下 |
補助率 | 最大1/2 |
使用例 | 会計ソフト、受発注ソフト、POSレジなどの導入 クラウド利用料など |
・小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や生産性向上に取り組む費用などが補助されるものです。販路開拓や生産性向上などにかかった費用の最大2/3が補助されます。小規模事業者持続化補助金には「通常枠」「インボイス枠」「賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業支援枠」の3つがあります。
美容業界においては、チラシの作成費用や店舗改装費用などに使えます。
対象者 | 従業員数20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主・法人 |
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補助額 | 通常枠:50万円 インボイス枠:100万円 賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業支援枠:200万円 |
補助率 | 最大2/3 |
使用例 | チラシの作成費用や店舗改装費用など |
・ものづくり補助金
ものづくり補助金は、革新的なサービス開発や試作品の開発などに取り組む費用などが補助されるものです。ものづくり補助金には様々なコースがありますが、一般型・通常枠の場合はかかった費用の最大2/3が補助されます。
美容業界においては、新商品やメニューの開発、クラウドサービス利用費などに利用できます。
一般型・通常枠
対象者 | 個人事業主・中小企業など |
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補助額 | 従業員数 5人以下 :100万円~750万円 6人~20人:100万円~1,000万円 21人以上 :100万円~1,250万円 |
補助率 | 1/2 従業員5人以下の法人・個人事業主の場合は2/3 |
使用例 | 新商品やメニューの開発、クラウドサービス利用費など |
・キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、従業員のキャリアアップを促進するための費用を補助する助成金です。キャリアアップの内容により、様々な助成金のコースがあります。
美容業界においては、派遣社員を正規雇用に転換する場合などに使えます。
対象者 | 個人事業主・中小企業など |
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助成額 | コースによって異なる 例えば、派遣社員を派遣先で正社員とする場合は、 1人あたり28万5,000円(生産性の向上が認められる場合:36万円) |
使用例 | 派遣社員を正規雇用に転換する場合など |
開業後の税務署への手続き
補助金などを使い、美容業界で開業した場合は、税務署への手続きも必要になります。個人事業主の場合「開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署に提出します。
・開業届
開業届は、美容業界で開業したことを税務署に届け出る書類です。開業後、1カ月以内に税務署に提出します。
・青色申告承認申請書
美容業界で青色申告をする場合は、青色申告承認申請書を税務署に提出します。提出期限は、青色申告をする年の3月15日まで(その年の1月16日以後開業の場合には、開業から2カ月以内)です。
青色申告をすると、最大65万円の青色申告特別控除や、赤字の繰り越しなどの特典を受けられます。開業届、青色申告承認申請書の用紙は、国税庁のサイトや税務署の窓口で入手できます。
まとめ
美容業界での開業には、多くの資金が必要となります。一般的には、1,000万円程度の資金が必要といわれています。
しかし、自己資金ですべて用意することは、容易ではありません。そこで、美容業界の開業で使える補助金や助成金を利用しましょう。
補助金や助成金は、利用できる目的や金額が様々なため、自社にあった補助金や助成金を見つけて、積極的に申請することが重要となります。