映画の内容を10~15分程度に編集した「ファスト映画」をYouTube上に公開したとして、著作権法違反で有罪が確定した20代の男女に対し、東宝や松竹などの大手映画会社13社が損害賠償を求めていた裁判で、11月17日に東京地方裁判所は総額5億円の賠償を命じる判決を言い渡しました。
問題となっているファスト映画とは
ファスト映画とは、2時間ほどある映画を無断で10~15分程度に編集してネタバレする動画のことを指します。最近では、視聴回数を増やして広告収入を稼ぐために、単に短くまとめるだけではなく、字幕やナレーションといった元の映画にはない表現が追加され、映画の内容全体を分かりやすく説明する工夫が凝らされているようです。
コロナ禍による巣ごもり需要の増加や、効率よくコンテンツの情報を得たいといった消費者心理の拡大とあいまって、2020年春頃からYouTubeへの投稿が増加。その後、ファスト映画専門チャンネルが乱立するなど、組織的に動画が多数作成・公開されてきました。
ファスト映画を巡り賠償を命じたのは今回が初
昨年6月の摘発から1年5カ月、民事提訴から半年という異例ともいえるスピード判決だった今回の事案。17日の判決で、東京地方裁判所の杉浦正樹裁判長は「YouTubeでの映画作品のレンタル価格は400円をくだらない。投稿された動画は2時間の映画を10分程度にしたものだが作品全体の内容を把握できるよう編集されていることなどを考慮すると、損害額は1再生当たり200円とするのが相当だ」という考え方を示しました。
そのうえで、作品ごとに再生数をかけあわせると、損害額は総額で20億円以上にのぼると指摘し、請求どおり総額5億円の賠償を命じたそうです。
賠償を命じられた男女2人の逮捕の影響でファスト映画の投稿は激減したにもかかわらず、さらに大手を含む13社が個人に巨額賠償を求めたのは、ファスト映画の蔓延に伴い、映画本編を見る人が減少することを危惧したからとしています。
まとめ
投稿者たちが得た広告収入は700万円程度だったといわれている中、賠償金5億という巨額の支払いが命じられました。
需要があるからといって無断で他者の映像を切り貼りし、著作権法に違反しないよう気を付けましょう。