在宅ワークをしている方にとって、家賃・電気代などの経費計上や確定申告は気になることでしょう。家賃・水道光熱費は一定の要件を満たす場合、事業用部分に限り経費への算入が可能です。今回は個人事業主・副業で在宅ワークをするサラリーマンにとって、経費にできるもの・できないもの、家賃・水道光熱費の注意点、確定申告について解説していきます。
在宅ワーク・内職で経費に計上できるものとは?
在宅ワークで経費として計上できるもの
国税庁のホームページによると、事業所得を計算する上で必要経費に算入できるものは以下の2点です。
(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
在宅ワークでは業務に必要となる机や椅子の代金、書籍、PCなどが必要経費となります。
自宅で仕事をしている方は、家賃・水道料金・電気代・ガス代なども一定の割合を経費に算入できます。
他にも業務を行う上で必要となる費用は経費として計上することが可能です。
勘定科目 | 科目 |
---|---|
接待交際費 | 取引先など仕事に関係する者との交際費、お土産・慶弔費など |
旅費交通費 | 業務を遂行するための旅費・交通費、宿泊代・タクシー代など |
修繕費 | PCの修繕費など |
消耗品費 | 短期間に消耗する少額物品。事務用品など |
新聞図書費 | 業務で必要な書籍・雑誌・新聞の購入費用など |
会議費 | 打ち合わせに要した費用、会議室利用料など |
外注費 | 業務の一部を外部に委託する費用 |
賃借料 | 設備の賃借費用、展示会の会場使用料、支払い家賃など |
通信費 | 電話料金・携帯料金・インターネット利用料・切手・ハガキ代など |
水道光熱費 | 電気・ガス・水道料金など |
諸会費 | 同業者団体・協会への会費、商工会議所会費など |
租税公課 | 印紙税・登録免許税・事業所税など |
保険料 | 保険契約に基づく支払い。賠償責任保険料など |
支払い手数料 | 事務委託手数料・業務委託手数料・紹介料など |
支払い報酬料 | 弁護士・税理士への報酬・校正料・イラスト・デザイン料など |
取材費 | 取材にかかった交通費・飲食代など |
研修費 | セミナー参加費など |
雑費 | 金額が少なく上記の勘定科目に該当しないもの清掃代・ソフトウェアのバージョンアップ代金など |
業務に使用するPC・機械装置、器具備品などは経年により価値が減っていく「償却資産」に該当します。償却資産は数年に渡り必要経費として計上ができます。
償却資産の取得価額・使用可能期間 | 経費としての取り扱い |
---|---|
使用可能期間が1年未満又は取得価額が10万円未満 | 取得価額の全額を必要経費に算入できる |
取得価額が10万円以上20万円未満 | 一定の要件の下で、取得価額の合計額の3分の1に相当する金額を購入した年以後3年間に渡って必要経費に算入できる |
取得価額10万円以上30万円未満※一定の要件を満たす青色申告者 | 一定の要件の下で、購入した年に必要経費として算入できる(取得価額300万円が上限) |
経費として計上できないもの
業務に使用しない私用のものは経費には計上できません。
税金に関しては所得税・住民税は経費には該当しませんが、固定資産税は業務用の部分に限り必要経費となります。
国民年金保険料や生命保険・医療保険などの保険料も経費には該当しません。
ただし、国民年金の保険料は社会保険料控除、生命保険・医療保険などは生命保険料控除の対象となり所得から控除できます。
家賃・電気代・水道光熱費の注意点
在宅ワークで「家賃・水道光熱費をどこまで経費にするべきか」悩む方は多いのではないでしょうか。
家事按分の割合は、税法上明確に定められていませんが、一般的には20~60%程度といわれています「部屋の総面積に対して業務で使用する面積の割合」もしくは「1日のうち業務に充てる時間配分」で計算します。
例えば1DKの部屋の半分程度を業務に使用しておりフルタイムで働いている方は50%程度となります。一方、3LDKの部屋で仕事をしており1日3時間程度働いている方は20%程度が目安です。
あくまで目安となりますので、業務時間が一定ではない方や心配な方は税理士への相談をおすすめします。
また、賃貸ではなく住宅を購入し、ローンを支払っている場合には住宅ローンは経費に算入できません。
ただし、住宅ローンの「利子」は業務用の部分が必要経費として計上できます。
事業用部分を50%超に設定すると、住宅ローン控除の適用対象外になりますので注意しましょう。
在宅ワークで確定申告は必要?ケース別で解説
在宅ワークで確定申告が必要な人をケース別で解説します。「確定申告」と聞くと「手続きが面倒」「税金をとられる」というイメージを抱かれる方もいらっしゃるでしょう。しかし、場合によっては源泉徴収で納め過ぎた税金が還付されることがあります。
最近、以前よりも安価で使いやすい会計ソフトが増えています。個人でもマニュアルに沿って進め、1週間~10日程度で確定申告ができる事例も存在します。また、医療費控除を受けたい方、住宅ローン控除をこれから利用したい方などは下記の要件に該当しなくても確定申告が必須です。
内職・在宅ワークが本業の方
確定申告は前年の所得を基に所得税の額を計算し、申告する制度です。
在宅ワークや内職が本業の方は、前年所得が所得税の基礎控除額48万円を超えた場合は確定申告が必要です。
なお「所得」とは総収入金額から必要経費を差し引いた金額です。
例えば事業の総収入金額が60万円でも必要経費が13万円の際には、事業所得は47万円となりますので確定申告は必要ありません。
配偶者の扶養内で働く方も、所得が48万円を超えた場合は確定申告を行います。
副業で在宅ワークをするサラリーマン
本業は会社員(給与所得者)で、副業で在宅ワークをしている方は副業の所得が20万円を超える場合に確定申告を行わなければいけません。
アルバイト・パートなど雇用形態が正社員ではなくても、副業で20万円を超えると確定申告の対象となります。
また、年の途中で退職し年末調整をされなかった方は所得税が納め過ぎになる場合があります。副業の所得に関わらず確定申告を行いましょう。所得によっては納め過ぎた税金が還付される可能性があります。
確定申告が不要なケース
内職や在宅ワークがメインの仕事で年間所得が48万円未満の方、副業で年間所得が20万円未満のケースでは確定申告は不要です。
在宅ワークでも時間給で働いており、勤務先が年末調整をする際には確定申告の必要はありません。
扶養内で在宅ワークを行う方法とは
「配偶者の扶養内で在宅ワークをしたい」という方もいらっしゃることでしょう。
扶養には「所得税法上の扶養」と「社会保険の扶養」があり、2つの要件をどちらも満たした方は扶養されている者(被扶養者)となります。
所得税法上の扶養
在宅ワークの所得税法上の扶養は基礎控除額48万円未満です。
会社員で在宅ワークをしている方は、48万円に加え給与所得控除55万円が加わり所得103万円未満で被扶養者となります。
社会保険の扶養
社会保険の被扶養者は、配偶者が会社員であり勤務先の健康保険・厚生年金に一括で加入している状態です。国民年金では第3号被保険者に分類されます。
第3号被保険者の収入の要件は年間130万円以内です。
多くの会社員が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)も年間収入が130万円以内、被保険者の年間収入の2分の1以内が条件となっています。
2022年10月現在、厚生労働省では段階的に社会保険の適用拡大を行っています。
在宅ワークで企業に勤務しており、勤務先が従業員101人以上の場合は社会保険の適用拡大により年間所得106万円を超えると扶養から外れる可能性があります。
以下の4つの要件を満たすと、自身で健康保険・厚生年金に加入しなければいけません。
2024年10月からは従業員数51人以上の企業も上記の要件を満たした際に、社会保険に加入する必要があります。
社会保険に加入すると「社会保険料の支払いで手取りが減る」という方もいらっしゃるでしょう。
しかし、自身で厚生年金に加入し保険料を納めることで、将来貰える年金額が増えるというメリットがあります。
配偶者控除と配偶者特別控除
年間所得が48万円以下で、生計が同一である、婚姻届を出した法律婚での配偶者であるなどの要件を満たした場合、配偶者控除を受ける事ができます。
48万円超の所得があっても所得金額に応じて所得控除(配偶者特別控除)が受けられる場合があります。配偶者控除と同様に一定の要件を満たした際に、以下の額で控除が適用されます。
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まとめ
在宅ワークで経費・確定申告についてお悩みの方は少なくありません。経費や確定申告で心配なこと、気になる点がある方は税の専門家・税理士に相談しましょう。