日本の製造業を支えているのは中小企業ですが、働き手不足などによる生産性の低下は深刻な問題となっています。
「ものづくり補助金」は生産性向上に取り組み現状打破を試みる中小企業を国が応援する制度です。制度内容を理解し、是非積極的に利用してみましょう。
「ものづくり補助金」の概要
「ものづくり補助金」の正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。ものづくり=製造業と思ってしまいがちですが、実はさまざまな事業スタイルに活用可能な補助金なのです。
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下「ものづくり補助金」)は、中小企業や小規模事業者等が取り組む、革新的サービスや試作品の開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するための制度として、2013年に公募がスタートしました。
我が国の毎年の補正予算から、経済産業省の外局である中小企業庁と、独立行政法人中小企業基盤整備機構によって公募と採択がなされ、全国中小企業団体中央会が事務局となって補助金の管理と運用を行っています。
初年度は1000億円強の予算が組まれ、10,511件の企業に補助金が渡りました。 (採択率43.9%)
その後も毎年ほぼ同じ額の予算が組まれています。
4つの施策支援で中小企業を後押し
ものづくり補助金が支援する施策は、既述のものも含め、大まかに以下の4つに分けられます。
- 革新的なサービスの開発
- 新商品開発
- 新たな生産方式の導入
- 生産プロセス改善のための設備投資
(以下、4つの施策はまとめて「新方式の導入」と表します)
「ものづくり」は、製造業のみを意味するものではなく、小売業やサービス業であっても上記施策を実現するための設備導入であれば補助金の対象となります。
例えば「地域の人に利用してもらうため商店街でスタンプラリーを実施する」というサービス開発などでも補助金の対象になり得るのです。
補助金の上限額は次々項で述べる「型」によって違いますが、令和2年度は最大で1250万円 でした。
補助率は原則2/3となっています。
ものづくり補助金の対象者
ものづくり補助金の公募対象となるのは中小企業、小規模事業者及び個人事業主(以下「中小企業」)です。
どの程度の規模であれば対象となる中小企業なのかは、業種や組織形態によって細かく決められています。
下の表をご参考ください。
ただし下記規模に該当しても、対象外となる企業もあるため、詳細は応募要領などで確認する必要があります。
また、条件を満たせば一定の組合、NPO法人なども対象となります。
他の要件として、当然のことながら日本国内に本社がある企業であることが求められます。
申請時に事業を開始していることも(法人登記済もしくは開業届提出済)必要であり、いくら画期的な新商品のアイディアがあっても、事業の実体がなければ公募対象になりません。
ものづくり補助金には3つの型がある
ものづくり補助金は、その目的によって「一般型」「グローバル展開型」そして「ビジネスモデル構築型」の3つの型に分類されています。そのうち中小企業を直接支援するのが「一般型」と「グローバル展開型」です。
制度の基本となる「一般型」
一般型は当初、正に制度設置の目的に沿った新方式の導入に必要な設備投資を支援するための型でした。
しかし、中小企業が事業を継続するにあたって直面する様々な問題や課題にも制度が活用できるように、第10次公募以降新たに以下の3つの枠が創設されました。
- 賃上げや雇用拡大を実現するための新方式の導入を支援する「回復型賃上げ・雇用拡大枠」
- DXを積極的に取り入れる際に新方式の導入に必要な設備投資を支援する「デジタル枠」
- 温室効果ガス削減のための新方式の導入を支援する「グリーン枠」
なお、これまでの一般型は「通常枠」となるため、一般形の枠は計4つです。
一般型の補助金上限額は中小企業の規模などに応じて750万円~1250万円(グリーン枠は1000万円~2000万円)となっています。
海外への事業拡大を目指すなら「グローバル展開型」
自社の事業を海外に展開したり、すでに海外展開している事業の強化を図ったりするための新方式の導入を支援するのがグローバル展開型です。
具体的には以下の4パターンに合致することが必要です。
- グローバルに展開する製品やサービスの開発のための体制を構築する「海外直接投資」
- 海外で市場開拓を行うために新方式を導入する「海外市場開拓」
- コロナ規制緩和に伴い再び活気づき始めた訪日外国人観光客向け市場開拓に新方式を導入する「インバウンド市場開拓」
- 海外事業者と共同研究や開発を行う際に利用できる「海外事業者との共同事業」
グローバル展開型の上限額は3000万円となっています。
「ビジネスモデル構築型」はやや特殊
ビジネスモデル構築型は、直接中小企業に補助を行うものではなく、「新方式の導入に取り組む企業を支援する企業」に対して補助を行うという形をとっています。
いわば間接的な中小企業への支援です。
この型に関しては、中小企業を支援する目的で新方式を導入する「大企業」も補助対象になります。
上限額も1億円と、他の2つの型に比べて多くなっています。
公募のスケジュールと申請のポイント
実際に補助金の申請をする際には、公募のスケジュールを把握したうえで余裕を持って準備に取り掛かることが大切です。ものづくり補助金の場合は電子申請のみでの受付のため、これまで紙媒体での申請しか経験のない方は特に注意が必要です。
公募は通年行われている
ものづくり補助金の公募は年間4度行われており、応募期間が約2ヶ月、審査期間は約1ヶ月です。
ちなみに直近(2022年11月現在)では8月18日に応募締切の後、10月20日に採択が発表されました。採択率は約59%でした。(4744件中2817件採択)
また、補助事業の実施期間は交付決定後から最大10ヶ月(一般型)または12ヶ月(グローバル展開型)となっています。
事前登録し、過去の採択事例をチェックして電子申請を
ものづくり補助金を申請するためには、事前に「GビズIDプライム」に登録し、アカウントを取得する必要があります。
GビズIDは、法人や個人事業主が1つのアカウントで、ものづくり補助金以外にもさまざまな行政サービスを利用できるものです。書類審査があり、アカウント発行までに2週間程度かかるため、早めに取得しておきましょう。
アカウント取得はこちらから
申請の際は、事業計画書をはじめ過去の決算書や従業員確認資料などの必要書類をファイル化して添付します。公募の対象となる中小企業であることが確認されれば事業計画書や審査における加点対象となる書類などを総合的に審査して採択の可否が決定されます。
なお、加点対象については公募要項に記載されています。
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/12th/reiwakoubo_20221005.pdf
申請にあたってはまずP23「応募申請にかかる留意点」をしっかり理解し、P32の「審査項目」に沿って書類を作成しましょう。
どの型、どの枠で応募するか方針が決まれば、ものづくり補助金総合サイトで成果事例について調べてみましょう。
自社の環境に近い成果事例があればもちろん、各採択企業の取り組み方を知るだけでも書類作成の参考となるでしょう。
まとめ
ものづくり補助金は10年近く前に始まりましたが、多くの中小企業が長引くコロナ禍や急激な円安による仕入れ価額の高騰などに苦しむ今こそ、積極的に利用したい制度です。
応募すれば必ず採択される訳ではありませんが、応募するため今自社に必要な改革は何なのかを考えるところから、既に事業継続や発展についての第一歩が始まっているのです。その姿勢は採択の有無よりももしかすると大切なことなのかもしれません。