長引いたコロナ禍でサラリーマンとしての収入に不安を覚え、副業を始めた人も多いのではないでしょうか。余った時間を有効活用することで実入りが増えるのはありがたいのですが、副業を行うと、場合によっては税務署への確定申告・納税が必要になります。「面倒だから」とスルーしたりすると「加算税」などのペナルティの対象になることもありますから、注意しなくてはなりません。申告の要否の基準はどうなっているのかと併せて、解説します。
「副業」「確定申告」とは
収入があればすべて副業
副業を「小遣い稼ぎ」のように捉えている場合もあると思います。ただし、アルバイトやパートはもとより、フリーランスとしての仕事やネットでの物品販売など、本業である会社勤めの他に収入を得たすべてのものが、原則としてここでいう副業になります。
1年間の所得を申告
確定申告とは、1月1日から12月31日までに個人事業を営んだり不動産の売却を行ったりして得た所得と税額を、翌年税務署に申告することをいいます。サラリーマン(給与所得者)は、毎月の給与から所得税などを会社に源泉徴収され、年末に清算(年末調整)されますから、原則として確定申告の必要はありません。ただし、年収が2,000万円を超えた場合などには、確定申告の義務が生じます。
副業で確定申告が必要な場合
確定申告が不要な会社員が行った副業については、申告が必要な場合と不要な場合があります。ボーダーラインは「20万円」という金額なのですが、それは副業が「給与」なのか、それ以外なのかで意味に違いがあります。
副業がアルバイトやパート(給与所得)の場合⇒収入が20万円超
給与を2カ所以上から受けている場合、つまり副業がアルバイトやパートの場合などには、副業の給与については年末調整が行われません。この年末調整をされなかった給与の「収入」(支給された金額)が20万円を超えていれば、確定申告が必要です。
副業がフリーランスなどの場合⇒「所得」が20万円超
内職、講演、執筆業など収入を給与以外の形で得ている場合には、「所得」が20万円以下か、それを超えるかが基準になります。注意が必要なのは、収入ではなく所得だということです。
所得は、収入(売上)から、その収入を得るために必要とした「経費」を差し引いた金額です。経費には、事務所の家賃、光熱費、交通費などさまざまな費用が該当します。フリーランスなどの場合には、仮に振り込まれたお金が20万円を超えていても、これら経費を差し引いた結果、20万円以内に収まれば、申告は不要なのです。
両方ある場合には合算
給与としての「収入」と「所得」が両方ある場合には、それを合算した金額が基準になります。やはり20万円以内なら不要、超えたら確定申告が必要です。
20万円以下でも確定申告が必要な(したほうがいい)ことも
ただし、副業の収入、所得が20万円以下でも、確定申告が必要になることや、申告することでメリットが生じるケースもあります。
医療費控除などを受ける場合
年間の医療費が一定額を超えた場合の「医療費控除」や「住宅ローン控除」などの控除を受ける場合には、サラリーマンであっても確定申告が必要になります(住宅ローン控除は1年目のみ)。控除とは、所得や税額が減額されることで、受ければ納税額を抑えることができます。
ただし、これらを申告する場合には、たとえ副業の収入や所得が20万円以下であっても、その内容を申告書に併せて記載しなくてはなりません。
「住民税」は申告の必要あり
今まで述べてきたのは、所得税(国税)の話です。所得があった場合には、それとは別に1月1日時点の住所地である都道府県、市町村に住民税を納める必要があります。この住民税に関しては、「20万円ルール」は適用されません。副業収入、所得が20万円以下の場合でも、市町村に対して申告が必要になるのです。
なお、税務署に副業の確定申告を行った場合には、あらためて市町村に申告する必要はありません。所得の情報が税務署から自治体に対して伝達されるからです。
所得税が還付される可能性がある
フリーランスの場合でも、例えばライターが出版社から原稿料を受け取る時には、所得税が源泉徴収されています。この徴収額が支払うべき所得税を上回る場合には、確定申告をすることで、差額分を還付して(返して)もらうことができます。源泉徴収は経費を差し引く前の手取りの収入を基に課せられるので、税金の払い過ぎになっていることが多くなります。
確定申告の義務を怠るとどうなるのか
副業で20万円を超える収入、所得を得たにもかかわらず、確定申告をしないでいると、次のようなペナルティの対象になります。「申告の必要性を知らなかった」「忘れていた」場合でも、基本的に免れることはできません。
申告しないと「無申告加算税」
無申告加算税は、新たに納付すべき税額(増差本税)に対して「50万円までは15%」、「50万円を超える部分は20%」の割合を乗じて計算されます。本来支払うべき税額(本税)に、この金額をプラスして納めなくてはなりません。
なお、税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告した場合には、加算税は「5%の割合」を乗じて計算した金額に軽減されます。期限後申告が、申告期限から1ヵ月以内に自主的に行われる場合や、期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合に該当するとみなされた場合は、この無申告加算税は課されません。無申告状態の場合には、速やかに申告すべきでしょう。
悪質なケースは「重加算税」
また、高額の所得を隠して申告しないなど、悪質な税逃れだと判断された場合には、重加算税が課されることがあります。税率は、増差本税に対して「40%」ですから、非常に重いペナルティになります。
「延滞税」もかかる
無申告だった場合、加算税に加え、法定申告期限の翌日から納付した日までの日数に応じて、延滞税もかかってきます。この点でも、できるだけ早く期限後申告・納税することをお勧めします。
確定申告で副業が会社にバレる?
なぜバレるのか?
最近は、社員の副業を解禁したり奨励したりする会社が増えました。ただ、中には「禁止規定」が残るところもあるでしょう。その場合、「会社にバレるから」という理由で副業の所得を申告しないことも多いようです。
副業が会社に知られる原因の1つが、「住民税」です。住民税は、前年の所得金額によって決まり、会社に納付書が届きます。当人の給与所得が大きく変わっていないにもかかわらず、住民税の額が上がるために、「他にも収入があるのだな」ということになる場合があるわけです。
住民税は「普通徴収」にする
ただ、これには予防策があります。確定申告書を提出する際に、住民税を自分で納付する「普通徴収」を選ぶのです。そうすれば、本業分の住民税の納付書は勤務先に、副業分の納付書は自宅に届くので、住民税から「足がつく」のを避けることが可能です。
まとめ
サラリーマンの副業は、収入や所得が20万円を超えた場合に、確定申告が必要になりますから、忘れないようにしましょう。申告しないでいると、加算税や延滞税が課される可能性があります。また、医療費控除などの控除を受ける場合には、20万円以下でも控除額と併せて確定申告書への記載が必要です。副業の確定申告について、不明な点がある場合などには、税理士に相談してみることをお勧めします。