2023年4月、こども家庭庁が発足しました。子ども関連の課題が解決に向かうのではと期待が高まります。今回は、こども家庭庁を解説します。概要に加え、設置された背景や今後の課題なども見ていきましょう。こども家庭庁は、子どもに関わる人すべてにとって重要な機関です。ぜひ読んでみてください。
※記事の内容は2023年4月3日時点の情報を元に作成したものであり、現在の内容と異なる場合があります。
2023年4月に発足したこども家庭庁とはどんな機関?
2023年4月、「こども家庭庁」が発足しました。こども家庭庁とはどのような機関なのでしょうか。まずは概要を確認しておきましょう。
2023 年4月に発足したこども家庭庁とは
こども家庭庁とは、子どものための政策をまとめて行う行政機関です。これまで各省庁でバラバラに行われてきた子どもに関する政策を、一本化して行います。こども家庭庁は、総理大臣直属の機関として内閣府の外局に位置します。内閣府特命担当大臣も置かれており、各省庁に子ども政策の改善を求めることができる「勧告権」を持っています。
内閣府の「子ども・子育て本部」や厚生労働省の「子ども家庭局」も、こども家庭庁に移管されました。
子ども家庭庁は3つの部門から構成される
こども家庭庁は、以下の3つの部門で構成されます。
- 企画立案・総合調整部門
- 成育部門
- 支援部門
1つずつ、役割を見ていきましょう。
【企画立案・総合調整部門】
企画立案・総合調整部門は、子ども政策全体の司令塔として全体のとりまとめを行います。また子どもや若者の意見を聴く仕組みを整えたり、デジタル庁と連携して支援に必要な情報をまとめたデータベースを整理したりする役割を持ちます。
【成育部門】
成育部門は、子どもの安全で安心な成長をサポートするのが役割です。主な取り組みとして、「日本版DBS(Disclosure and Barring Service)」の導入があげられます。DBSとは、子どもへの性犯罪を防ぐために子どもが活動する場で働く大人の犯罪歴を確認する仕組みを言います。
また、子どもが亡くなった場合に原因や経緯を分析することで再発防止につなげる「CDR(Child Death Review)」の検討も進めます。さらに文部科学省と連携して保育園や認定こども園、幼稚園の教育・保育内容の基準を決めるのも役割の1つです。
【支援部門】
支援部門は、とくに困難を抱える子どもや家庭の支援を担当するところです。例えば虐待やいじめを受けた子ども、ひとり親家庭などがあげられます。支援者が家庭などに足を運ぶアウトリーチ型で支援します。また、ヤングケアラーや障害児、里親のもとで育った若者も支援対象です。
こども政策の基本理念
ここで、こども家庭庁の軸にもなる日本のこども政策の理念を紹介します。こども政策には、以下の6つの理念があります。
- ① こどもの視点、子育ての当事者の視点に立った政策立案
- ② 全ての子どもの健やかな成長、Well-beingの向上 ※Well-being…幸せな状態
- ③ 誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援
- ④ こどもや家庭が抱える様々な複合する課題に対し、制度や組織による縦割りの壁、年齢の壁を克服した切れ目ない包括的な支援
- ⑤ 待ちの支援から、予防的な関わりを強化するとともに、必要なこども・家庭に支援が確実に届くようプッシュ型支援、アウトリーチ型支援に転換
- ⑥ データ・統計を活用したエビデンスに基づく政策立案、PDCAサイクル(評価・改善)
なぜこども家庭庁が設置されるの?
そもそもなぜこども家庭庁が設置されるようになったのでしょうか。こども家庭庁が設置された目的と背景を説明します。
こども家庭庁を設置する目的
こども家庭庁は、各省庁でバラバラに行われてきた子どもに関する政策をまとめて行う機関だと前述しました。これまで、子どもに関する政策の組織・権限が分かれていたことでさまざまな弊害が生じていたのです。例えば省庁間で業務の重複がおこり、効率的に業務が行えていなかったことなどがあげられます。こども家庭庁は、そういった縦割り行政による弊害を解消・是正する目的で設置されました。
さらに、国は現在「こどもまんなか社会」の実現を目指しています。こどもまんなか社会とは、子どもに関する取組みや政策を社会の真ん中に据えることです。こどもまんなか社会を実現するためには、専門的に取り組む独立した組織が必要だとされました。こどもまんなか社会の実現に専門的に取り組む機関として、こども家庭庁が設置されたわけです。
こども家庭庁を設置する背景
次に、こども家庭庁が設置された背景を見ていきましょう。設置の背景には、さまざまな課題があったのです。以下の課題があげられます。
・少子化
日本では少子化が進んでいます。厚生労働省が発表した「人口動態統計」でも、2022年の出生数は79万9,728人と過去最少を記録しています。80万人を割るのは2033年と予想されていましたから、10年以上早いペースで少子化が進んでいることになります。
・児童虐待
児童虐待やネグレクト(育児放棄)が増加傾向なことも、こども家庭庁設置の背景にあります。「児童相談所での児童虐待相談対応数」によると、2021年の児童虐待相談対応数は20万7,660件にのぼり、過去最多になっています。また、新型コロナウイルス感染拡大によって親の孤独感が増したことで、児童虐待やネグレクトがさらに深刻化しました。
・貧困問題
2019年の「国民生活基礎調査」によると、子どもの貧困率は13.5%です。これは、子どもの7人に1人は貧困状態ということを意味します。さらにひとり親家庭の貧困率はもっと高く、48.1%と半数近い数字です。新型コロナウイルス感染拡大で就労に制限がかかったり、飲食店などが廃業したりしたことも貧困問題を加速させました。こども家庭庁が設置された背景には、貧困という社会課題もあるのです。
子ども家庭庁の課題は?
2023年4月に発足したばかりのこども家庭庁には、現段階でいくつか課題があります。こども家庭庁の課題を見ていきましょう。
こども家庭庁が設置された目的は、縦割り行政による弊害の是正・解消のためだというのは前述したとおりです。弊害の1つには、保育制度の複雑化もあげられます。保育園(厚生労働省)、認定こども園(内閣府)、幼稚園(文部科学省)と管轄が分かれているため、保育制度が複雑化しているのです。
こども家庭庁が発足することで、幼保一元化(幼稚園と保育園を一元化する政策)が実現し、保育制度の複雑化が解決に進むのではと期待されていました。しかし今回、幼保一元化は見送られています。保育園と認定こども園の業務は一元化されましたが、文部科学省管轄の幼稚園は連携に留まることになったのです。幼保一元化をどう実現させていくかが、こども家庭庁のこれからの課題です。
また、予算の確保も課題の1つです。こども家庭庁関連の2023年の予算は、4兆8,104億円です。こども家庭庁が発足した2023年ですが、昨年の子ども関連の予算と比較して大幅アップにはなっていません。安定的に十分な予算を確保することが今後の課題です。
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子ども・未成年が政策に意見できる?「こども家庭庁」って何?
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まとめ
こども家庭庁は、当初「こども庁」として議論されていましたが、「子どもの基盤は家庭にある」としてこども家庭庁になったという経緯があります。しかし家庭では育てない子どももいますし、「子育ては親がするもの」という印象を抱く人もいるでしょう。発足したばかりのこども家庭庁ですが、まだまだ議論が起こりそうです。何よりも大切なのは、子どもを尊重しみんなで育てるという社会全体の意識ではないでしょうか。
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