住宅に関する2023年度税制改正まとめ|減税特例措置はどう変わる? | MONEYIZM
 

住宅に関する2023年度税制改正まとめ|減税特例措置はどう変わる?

住宅に関する2023年度税制改正について公共機関の情報を閲覧したものの、中には理解が難しいと感じた人もいるのではないでしょうか。
 

そこで本記事では、住宅に関する2023年度税制改正について、公共機関の情報よりも噛み砕いて解説します。当税制改正に対する理解の一助となれば幸いです。

住宅に関する2023年度税制改正:新規創設・拡充

まずは住宅に関する2023年度税制改正について、新たに創設されたもの、内容が拡充されたものについて解説します。

長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する特例措置

「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する特例措置」は、マンションを長持ちさせるための大規模修な修繕工事を実施した場合に、建物部分に課せられる固定資産税額が減額されるというものです。
 

そもそも固定資産税とは、建物や土地などの不動産、会社と設備などに対して毎年課せられる市町村税のことです。固定資産税額は、固定資産の価値を示す「課税標準額」に1.4%を乗じたものとなっています。
 

当特例措置が適用される場合、固定資産税は市町村の条例により、1/6~1/2まで減額されます。
 

当特例措置の対象となる修繕工事の例としては、築後20年以上経過している10戸以上の一定のマンションについて、屋根・床の防水工事や外壁塗装工事などが挙げられます。

空き家の発生を抑制するための特例措置

「空き家の発生を抑制するための特例措置」とは、相続または遺贈により取得した空き家、またはその空き家を撤去したあとの敷地を第三者へ譲渡した場合に「譲渡所得」から3,000万円が控除されるというものです。
 

遺贈とは、遺言の内容にしたがって財産を本来の相続人以外に贈ることです。また譲渡所得とは、売買や相続などによって第三者へ不動産を譲渡した際に得られる利益を指します。
 

この譲渡所得から控除されることによって、これに対して課せられる税額が小さくなります。
 

当特例措置は、今回の税制改正により適用期間が4年間延長されることとなりました。
 

また2023年度からは、買主が特例適用対象に該当する不動産の譲渡を受けた日の属する翌年2月15日までに耐震改修もしくは除却工事を行う場合、実施が譲渡後であっても当特例措置が適用されます。

住宅に関する2023年度税制改正:既存制度の期間延長

次に、住宅に関する2023年度税制改正に関して、制度内容自体は変わらないものの適用期間が延長されたものについて解説します。

サービス付き高齢者向け住宅供給促進税制

「サービス付き高齢者向け住宅供給促進税制」とは、国又は地方公共団体からサービス付き高齢者向け住宅に対する建設費補助を受けて建てられた、バリアフリーが完備されたサービス付高齢者向け住宅の所有者に課せられる固定資産税と不動産取得税を減額するものです。
 

ちなみに不動産取得税とは、その名のとおり不動産を取得した際に課せられる都道府県税のことです。不動産取得税の税率は、課税標準額の4%とされています。
 

固定資産税については、市町村が条例で定める割合(1/2~5/6)が減額されますが参酌基準(十分参照しなければならない基準)とされるのは2/3です。例えば固定資産税額が年間100万円で、市区町村が条例で2/3と定めた場合、約66.6万円分が圧縮されます。
 

不動産取得税については、家屋の場合は課税標準額から1,200万円、土地の場合は「税額から150万円または家屋の床面積の2倍(200㎡を限度)に相当する土地の価格のいずれか大きい額に税率を乗じて得た額」が控除されます。例えば住宅の課税標準額が5,000万円の場合、本来の不動産取得税額は200万円ですが、特例適用により152万円まで減額可能です。
 

2023年度税制改正では、上記の特例が2年間延長されることとなりました。

既存建築物の耐震改修投資促進のための特例措置

「既存建築物の耐震改修投資促進のための特例措置」とは、ホテルや病院、旅館などのような耐震診断が義務付けられている建築物の耐震改修工事を行った場合に、固定資産税の1/2を2年間減額するというものです。
 

例えば、課税標準額10億円のホテルの耐震改修工事を行う場合、固定資産税を本来の年間1,400万円から700万円まで減額できます。
 

2023年度税制改正では、上記の特例が3年間延長されることとなりました。

買取再販で扱われる住宅の取得に係る特例措置

「買取再販で扱われる不動産の取得に係る特例措置」とは、住宅の買取再販事業者が住宅を取得して一定のリフォームを行う場合に不動産取得税が減額されるというものです。減額内容については、以下のように定められています。
 

●住宅部分:新築年月日に応じて一定額を減額
●住宅の敷地部分:住宅が一定の条件を満たす場合、住宅の床面積の2倍に当たる土地面積相当分の価格などを減額
 

前者の「一定額」は、以下の表のとおりです。
 

新築年月日 減額する額
昭和29年7月1日~昭和38年12月31日 3万円
昭和39年1月1日~昭和47年12月31日 4万5,000円
昭和48年1月1日~昭和50年12月31日 6万9,000円
昭和51年1月1日~昭和56年6月30日 10万5,000円
昭和56年7月1日~昭和60年6月30日 12万6,000円
昭和60年7月1日~平成元年3月31日 13万5,000円
平成元年4月1日~平成9年3月31日 30万円
平成9年4月1日~ 36万円

 

ちなみに、後者の「床面積」とは「延べ床面積」のことを指します。延べ床面積とは、建物の各階の床面積を合計したものです。
 

2023年度税制改正では、上記の特例が2年間延長されることとなりました。

防災街区整備事業に係る特例措置

「防災街区整備事業に係る特例措置」とは「密集法」に基づく防災街区整備事業に伴い、もとの権利者に与えられる防災施設建築物の一部にかかる固定資産税額を、新築後5年間1/3~2/3減額するというものです。
 

わかりにくい単語が複数含まれているため、それぞれ簡単に説明を加えます。
 

●防災街区整備事業:街を消防車が通れる道路に囲まれた区域へと整備する事業
●密集法:建物が密集している地域の防災機能や土地の適切な利用に関するルール決めを目的とする法律
 

要するに、災害発生時に大きな被害が想定される地域の整備事業が実施された際に、該当地域内の建築物の権利者(所有権や借地権などを持つ人)に課せられる固定資産税が減額されるということです。
 

2023年度税制改正では、上記の特例が2年間延長されることとなりました。

自然災害の被災住宅用地等に係る課税標準の特例措置

「自然災害の被災住宅用地等に係る課税標準の特例措置」とは、震災などを原因として滅失損壊した住宅の敷地について、今後使用できないと市町村長が認める場合に適用されるものです。
 

当特例措置により、要件に該当する敷地の課税標準額について、以下のように減額されます。
 

●200㎡以下の部分:1/6
●200㎡超の部分:1/3

 

例えば敷地の面積が250㎡、課税標準額が3,500万円の場合、減額される金額は以下のとおりです。

●200㎡以下の部分:3,500万円×(200㎡÷250㎡)×1/6=約467万円
●200㎡超の部分:3,500万円×(50㎡÷250㎡)×1/3=約233万円
●課税標準額合計:約467万円+約233万円=約700万円

 

つまり上記の例では、課税標準額が2,800万円減額されることになります。
 

2023年度税制改正では、上記の特例が2年間延長されることとなりました。

まとめ

住宅に関する2023年度税制改正の内容は、人によっては一見複雑でわかりにくい印象を受ける可能性があります。しかし、当記事のより噛み砕いた説明によって、ある程度は理解が深まったことでしょう。適用されるケースは特殊なものが多いですが、自身に該当しそうな項目がある場合はより深く学んでみてください。
 

鈴木翔馬
フリーランスライター。学習塾勤務時代のブログ運営を通じてライティングやSEOについて学び、これらのスキルを活かして2021年に独立。専門ジャンルは金融・不動産。保有資格は宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。