節税対策は法人や個人事業主が対象であって、会社員には関係ないと思っている人が多いのではないでしょうか。実は、会社員でもできる節税対策はたくさんあります。節税対策をしている会社員とそうでない会社員では、納税額に大きな差が出ることもあります。
ここでは、会社員ができる代表的な節税対策を10選ご紹介します。
控除を使った節税対策6選
所得税は、簡単にいうと、収入金額を基に計算した所得金額から所得控除を差し引いたものに、税率をかけて計算します。大まかな計算式にすると「所得税額=(所得金額-所得控除)×税率」です。つまり、所得控除額が大きくなれば、納税額が少なくなります。
そこで、節税のためにも自分が使える控除は、忘れずに使う必要があります。多くの人に該当する控除で、主なものに次の6つがあります。
・人的控除(配偶者控除・扶養控除など)
人的控除とは、その名のとおり、人に対する控除です。本人や扶養家族の人数などに対して、一定の所得控除があります。
人的控除の代表的なものとして、納税者本人に対する控除として、合計所得金額に応じて最大48万円の控除がある「基礎控除」や、扶養している配偶者や家族に対する控除である「配偶者控除」「扶養控除」があります。
ほかにも障害者控除や寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者特別控除などの人的控除があります。
・保険料控除
所得控除は、その人のおかれた状況や事情に応じて、控除を設ける仕組みになっています。そのため、保険料の負担がある人には「保険料控除」を設けています。
保険料控除には、支払った保険料の種類に応じて「社会保険料控除」や「小規模企業共済等掛金控除」「生命保険料控除」「地震保険料控除」があります。人的控除や保険料控除は、年末調整で控除を受けられます。
・ふるさと納税
ふるさと納税とは、自分で選んだ自治体に寄付を行うことで、原則として自己負担額の2,000円を除いた全額が所得税や住民税から控除されるという制度です。自治体や寄付金のコースによっては、返礼品を受け取ることも可能です。
「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を使えば、確定申告も不要なため、会社員にとって行いやすい節税対策です。
・NISA・iDeCo(イデコ)
節税効果がある資産運用の方法に、NISAとiDeCo(イデコ)があります。
NISAとは、NISA口座を開設し、その口座内で投資した株式や投資信託などの利益が非課税となる制度です。ただし、一定金額の範囲があるなど制約もあります。2024年からは今までのNISA制度が見直され、新しい制度になります。
iDeCo(イデコ)とは、掛金を拠出し、自分で運用方法を選んで運用する私的年金の制度です。iDeCo(イデコ)では、掛け金を支払うときも受け取るときも、税の優遇措置が設けられています。掛け金を支払うときは「小規模企業共済等掛金控除」として、所得控除を受けることができるほか、運用益も非課税で再投資されます。
また、受け取るときも、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」の対象となります。
・医療費控除
医療費控除とは、1年間に一定金額の医療費を支払った場合に、所得控除が受けられるというものです。本人だけでなく、扶養している家族の医療費も対象となります。医療費控除の金額は、次の式で計算します。
・住宅ローン控除
控除には、所得控除と税額控除があります。上述したとおり、所得控除は税率がかけられる前の所得金額から控除されますが、税額控除は納める税金から直接控除されるので、節税効果がより高い控除です。
税額控除の中で代表的なものが「住宅ローン控除」です。住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して住宅を取得等した場合に、一定金額の控除を受ける制度です。初年度は確定申告で、2年目以降は年末調整で控除を受けることができます。
副業による節税対策2選
会社員が副業をしている場合は、上述した節税対策のほかにも節税対策を行うことができます。それが「青色申告特別控除」と「赤字の繰り越し」です。それぞれについて、見ていきましょう。
青色申告特別控除を使った節税対策
青色申告特別控除とは、青色申告をしている場合に、最大65万円の控除を受けられるというものです。
副業をしている場合は、給与の所得と副業の所得の合計に税金がかかります。そこで、節税のためには、副業の所得をいかに抑えるのかが重要です。青色申告特別控除を使った場合、副業の所得金額は「収入金額-経費-青色申告特別控除額」で計算します。
青色申告特別控除は、青色申告をするだけで受けられる控除のため、青色申告の要件を満たす場合は、積極的に利用しましょう。
赤字の繰り越しを使った節税対策
副業をしていると、赤字になることもあります。商品販売など事業を行っている場合、副業で出た赤字は給与所得を相殺できます。これを「損益通算」といいます。
また、損益通算をしても、まだ副業の赤字が残っている場合は、青色申告をしている場合に限り、翌年以降3年間、赤字を繰り越せます。赤字を繰り越すことで翌年の黒字と相殺でき、納める税金を抑えられます。
また、FXなどの先物取引や株の赤字が出た場合にも、翌年以降に繰り越しができる制度があります。
その他の節税対策2選
最後に、その他の節税対策を2つ見ていきましょう。
盗難や火災などがあった場合の節税対策
所得控除とは、その人のおかれた状況や事情に応じて、控除を設けるものです。そのため、盗難や火災などがあった場合にも、一定の控除が設けられています。それが「雑損控除」です。
ただし、雑損控除には、資産や損害に次のような要件があります。
・資産の要件
納税者本人、扶養されている配偶者や家族の所有している資産であること
事業で使っていない資産で、生活に通常必要でない資産であること
・損害の原因
震災や風水害、落雷など自然現象の異変による災害
火災など人為による異常な災害
害虫などの生物による異常な災害
盗難・横領
損益通算を使った節税対策
事業を行っている場合、副業で出た赤字は給与所得を相殺できます。これを「損益通算」といいます。損益通算を使った節税として、有名なものに不動産所得での節税があります。
不動産投資を行っている場合、投資を始めてすぐに、入居者が集まるとは限りません。
投資物件の建物部分については、減価償却をして毎年、少しずつ経費にしていきますが、それでも各年度に経費になる金額は大きくなります。入居者が少ないと、減価償却費などの経費が大きく、赤字になることもあります。
一方、給与所得については、毎月の給料から所得税を天引き(源泉徴収)されています。
不動産所得の赤字と給与所得を損益通算することで、全体の所得金額は小さくなります。
例えば、給与所得400万円、不動産所得△100万円の場合、損益通算後の所得金額は400万円-100万円=300万円です。
毎月の給料から源泉徴収されている所得税は、給与所得の400万円に対するものとなるため、このケースでは税金の払いすぎになります。そこで、確定申告を行い、払いすぎの税金の還付を受けられます。
まとめ
節税対策といえば個人事業主のものと考えがちですが、会社員でもできる節税対策は、数多くあります。納める税金を抑えるためには、自分が使える節税対策を必ず行うことです。
まずは、どのような節税対策があるかを把握し、使えるものがあれば忘れずに適用しましょう。