2023年6月から消費者契約法が改正されることをご存じでしょうか。消費者契約法の改正は消費者にとって重要な意味を持つだけでなく、企業側もサービスを提供する際に、法律違反にならないように注意しなければなりません。
そこでこの記事では2023年6月から施行される改正消費者契約法の内容だけでなく、企業側が気を付けるべきポイントについて解説します。
消費者契約法が改正される理由
2023年6月から改正消費者契約法が施行されますが、そもそもなぜ消費者契約法が改正されたのでしょうか。ここでは2つの理由を紹介します。
コロナによるオンライン取引の増加
消費者契約法の改正が行われた理由のひとつ目は、コロナによるオンライン取引の増加です。外出制限が行われ、オンラインで商品を購入することが増えました。今までは実店舗で購入していたものもオンラインで購入するようになってきています。
すでにアフターコロナの社会になっていますが、リモートワークを実施する企業が無くなることはないでしょう。フルリモートで無くなっても、出勤と在宅を組み合わせたハイブリッド型の勤務形態を取っている企業もあります。そのためオンラインでの取引が減るという傾向は見られません。
オンライン取引が増加することで、取引環境が大きく変化しました。取引数が増えたことによりトラブルも増加しています。たとえば通販サイトを利用して商品を購入したのに商品が届かない、ニセモノが届いたなどのトラブルが相次いでいます。そのためこのような取引は、消費者契約法により無効であるとなったわけです。
インターネット利用者の低年齢化
次にインターネット利用者の低年齢化があげられます。成人年齢の引き下げにより、インターネットで取引のできる年齢が下がりました。そのため若い消費者を守る必要性が出てきています。
知らない間に高額の契約を結んでいたとならないために、消費者を保護する必要性が出てきたわけです。
消費者契約法で改正された内容とは
社会情勢と取引環境の変化により改正された消費者契約法ですが、どのように改正されたのでしょうか。ここでは消費者契約法で改正された内容について解説します。
契約の取消権が追加された
今回の改正により、契約の取消権が追加されました。どのような場合に取り消しができるのかというと、勧誘することを告げないで、退去困難な場所へ連れて行って勧誘を行った場合です。
見ず知らずの場所に連れて行って、契約を迫られれば、契約せざるを得なくなります。こうしたやり方は法的に無効です。また威迫する言動を交えて、契約の相談の連絡を妨害することも禁止されています。威迫は脅迫とは違い、「みんな契約しているから」という言葉も該当します。
さらに契約の目的物を変更して、契約するしかないと迫るのも禁止です。「あなたが触ったことで、新品ではなくなったので、契約しないとダメ」という販売方法は無効だと判断されるわけです。
解約料の説明の努力義務化
解約料の説明の努力が義務化されました。解約料が明記されているもののは多いものの、なぜその解約料になるのか、根拠が明確でないサービスもあります。今回の改正により、事業者は消費者に対して、解約料の算定の根拠を説明する必要があります。
また消費者は、解約料の算定根拠の説明を求めることも可能です。解約料の説明が不明確な場合は、契約が無効だと判断される可能性があるわけです。
免責の範囲が不明確な条項は無効となる
事業者の責任の範囲が不明確なものは無効となります。今まで事業者の損害賠償責任は認めつつも、免責条項で留保文言付きのものがありました。たとえば「法令上許容する限り免責されます」という文言があるとします。
この場合、事業者が損害賠償責任を負うのかどうか、事業者の責任の範囲を不明確にしています。そのため、今回の改正で損害賠償責任の免責に関して、軽過失の場合に限り有効であることを明記しなければならなくなりました。
事業者の努力義務の拡充
今回の改正により、事業者に情報提供をする努力義務のあることが明記されました。そのため消費者の知識・経験だけでなく、年齢や心身の状態も考慮する必要があります。前述したように消費者が低年齢化していますので、若者にも理解できるように情報提供をしなければなりません。
ただしこの条項は努力義務規定ですので、実施しなくても取引が無効にはなりません。しかし消費者保護の立場から、こうした努力義務は実施が求められるでしょう。
消費者契約法の改正で企業が気を付けるべきことは
ここまで改正消費者契約法の内容について説明してきました。こうした法改正を踏まえて、企業側としてはどのような点に気を付ければよいでしょうか。ここでは5つのポイントについて解説します。
勧誘目的を消費者に伝える
勧誘目的を伝えない場合の契約は無効になるため、場所を移動する場合は勧誘目的を伝えなければなりません。そのため会社に移動して契約をする場合は、勧誘目的を伝えてから移動しましょう。ただし勧誘目的を伝えたとしても、行き先を伝えなかった場合は無効になる可能性もあります。どこに移動するのか、場所もしっかりと伝えるようにしましょう。
また勧誘目的であることを伝えたとしても、退去困難な場所だったりした場合は契約無効になる場合があります。移動手段が確保されている場所で契約を結ぶようにしましょう。
相談や連絡する時間を与える
契約をする際には消費者も契約してよいかどうか迷うため、相談や連絡する時間を与える必要があります。先ほども述べたとおり、威迫には恐怖を感じさせない程度のものも含まれます。
「自分で決めるべきです」と伝えて、相談や連絡をさせない契約は無効になるかもしれません。その場ですぐに契約を迫るのではなく、相談や連絡するための時間を十分に設けるようにしましょう。
契約の締結後に作業を行う
契約する見込みの段階で作業を行ってはいけません。契約前に作業を開始して、目的物が変わってしまうと問題になるので、契約締結後に作業を開始するように徹底しましょう。義務ではない追加サービスも規制の対象になるので、注意が必要です。
契約に関する説明を徹底する
契約に関する説明は契約解除の手順も含めて、説明を徹底する必要があります。そのため事前に解約料の算定根拠は明確にしておかなければなりません。契約解除の説明など、契約まわりに不安がある企業は、契約条項の確認と見直しを行います。弁護士に相談してリーガルチェックをしてもらいましょう。
また解約料の算定根拠など、消費者が必要とする情報提供を速やかに行えるように準備しておく必要もあります。消費者を前にして説明できないとなると、サービスや商品に対する信頼度が低下するので注意しましょう。
社内体制を見直す
今回の消費者契約法の改正の内容について、社内で知識の共有を行う必要もあります。どのような言動が契約無効につながるのか、従業員が理解しておかなければなりません。SNSで誰でも発信できる時代ですので、ひとりでも法律違反になる言動をすれば、すぐに拡散され、企業全体のイメージを損ねる可能性もあります。
従業員が今回の改正内容を理解するためにも、研修を実施した方がよいでしょう。しかし社内研修を行ったとしても、どのような言動が契約を無効にしてしまうのか不安になる従業員もいるはずです。そのため専門家に相談できる体制を整えるのも大事です。ぜひ検討してみてください。
まとめ
ここまで2023年6月から施行される改正消費者契約法について解説してきました。企業としては契約が無効にならないように、契約内容の見直しや従業員への教育を行う必要があります。消費者契約法を遵守しつつ、営業活動を行うようにしていきましょう。
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