「保険と共済にはどのような違いがあるのか?」「共済で十分って聞いたけど本当?」とお悩みのかたは多いのではないでしょうか。共済は非営利事業で保障は最低限、保険は営利事業で保障内容が多岐に渡るなどさまざまな違いがあります。
保険・共済の特徴や違い、メリット・デメリットと選び方についてFPが解説していきます。
保険・共済とは?特徴と違い
共済とは?特徴は非営利事業であること
共済とは病気や事故・自然災害など、さまざまなリスクに対して組合員があらかじめ積み立てた共済金で保障する仕組みです。
組合員の1人が経済的な損失を負った場合に、組合員全員が拠出した共同の財産から共済金が支払われます。
運営組織はそれぞれの協同組合連合会(非営利団体)です。例えばこくみん共済は「全国労働者共済生活協同組合連合会(全労災)」が運営する共済事業です。
代表的なものとして、県民共済・こくみん共済coop・JA共済などがあります。
共済 | 運営団体 |
---|---|
県民共済 | 全国生活協同組合連合会 |
こくみん共済coop | 一般社団法人 全国勤労者福祉・共済振興協会(全労済) |
JA共済 | 全国共済農業協同組合連合会 |
共済は基本的に利益を団体の構成員・役員などに分配しない非営利事業です。組合員・組合員の家族に奉仕することを目的としています。
資産運用は、債券・預貯金など低リスク・低リターンの金融商品で行われていることが多いです。
利益が出た場合には「割戻金」として、契約者(組合員)に還元されます。
保険の特徴は保障が充実していること、商品の多さ
保険は保険業法に基づく営利事業です。
運営主体は保険会社ですが「加入者が支払ったお金で、事故などに遭った時に金銭的に保障する」という仕組みは共済と同じです。
ただし、共済は組合員への奉仕が目的であることに対して保険は保険会社が利益を得て株主へ配当するなど「目的が異なる」点がポイントと言えます。
契約者が亡くなった時に保険金が給付される生命保険、病気で入院・手術をした際に保障の対象となる医療保険、がんと診断されたときに給付金がもらえるがん保険などがあります。
貯蓄機能が付いた貯蓄型保険や、老後に備える個人年金保険など保障内容は多岐に渡ります。
損害保険には自動車保険や火災保険などがあります。
保険は営利事業でさまざまなニーズに応える必要があるため、保障が充実しており商品の種類が多いという特徴があります。
共済では「割戻金」と言われる「配当金」が貰えるタイプの保険も存在します。
共済と保険の違い
共済と保険の主な違いは以下のとおりです。
共済 | 保険 | ||
---|---|---|---|
目的 | 組合員と家族への奉仕。相互扶助 | 営利事業 | |
加入対象者 | 組合員とその家族 | 誰でも加入できる | |
根拠となる法律 | 労働者協同組合法・消費生活協同組合法など「協同組合法」 | 保険業法 | |
監督省庁 | 厚生労働省・農林水産省 | 金融庁 | |
運営組織が破綻した際の保障(セーフティーネット) | 無し | 有り | |
商品の種類 | 少ない | 多い | |
掛け金の額 | お手頃 | 共済と比べると高め | |
用語 | 保障される際に支給されるお金 | 共済金 | 保険金 |
戻ってくるお金 | 割戻金 | 配当金 | |
毎月支払うお金 | 掛け金 | 保険料 | |
加入している人 | 組合員 | 契約者 |
運営組織が破綻した際の保障は、「保険契約者保護機構」が補償します。
補償割合は保険種目ごとに設定され、死亡保険や生存保険は保険金など支払いのために積み立てられている準備金(責任準備金)の原則 90%まで補償されます。
保険は主に生命保険や医療保険を取り扱う「生命保険会社」と、自動車事故・自然災害などのリスクに備える「損害保険会社」に分かれています。
共済では双方を兼営する団体が多いです。
共済のメリット・デメリット
共済のメリット
共済は、保険と比べ毎月の掛け金が低額の商品が多い点がメリットです。
保険は保険料が年齢で細かく区切られているのに対して共済は掛け金が一律の商品が多いです。よって、高齢のかたでも掛け金の負担をおさえることが可能です。
保障内容はシンプルで「最低限の保障で良い」「保険は選択肢が多すぎて迷ってしまう」という方にも適しているでしょう。
決算で剰余金が生じた際には、割戻金が貰える点もメリットの1つと言えるでしょう。
共済のデメリット
共済は保険に比べ保障が最低限の内容である商品が多く、人によっては「不十分」と感じることがあります。
例えば医療共済は、一般的に入院時・手術時・先進医療を受けた時に給付の対象となります。
保険のように通院特約を付ける、生活習慣病・就労所得などの保障を追加できない商品が多いです。
加えて商品の種類が少ないというデメリットもあります。
共済の注意点
共済・保険には、一定の年齢(65歳・70歳など)まで保障される「定期タイプ」と一生涯保障される「終身タイプ」があります。
近年は共済の商品にも終身タイプが増えました。ただし、商品によっては「終身タイプにすると月々の支払いが増えて保険と変わらない」というケースがあります。
また保険に加入した場合、後のライフステージの変化により特約やオプションを付けることが可能ですが共済は対応できない商品が多いです。
共済に加入した後に健康状態や家庭の状況に変化があり保障が不十分になった場合は、一旦共済を解約して保険に加入することになるでしょう。
新たに保険に加入すると、年齢を重ねた分保険料が高くなってしまいトータルコストで損をするケースがあります。
保険のメリット・デメリット
保険のメリットは保障の充実と税制面
保険は共済と比べ保障が充実している商品が多いというメリットがあります。
保険・共済は加入する人の健康状態や経済的な状況、希望する保障内容などを考え総合的に判断する必要があり「安ければ良い」という訳ではありません。
例えば「女性特有のがんに備えたい」というかたは、乳がん・子宮がんの保障が充実している保険を選ぶ必要があります。
商品の種類が多く、カスタマイズできる点も魅力です。
保険業法により保険会社が破綻した際には、保険契約者保護機構制度(保険会社のセーフティネット)が導入されています。
保険契約者保護機構は生命保険を始め、損害保険や疾病・傷害に関する保険も対象となります。責任準備金の一定割合までが補償されます。
保険は税制面でもメリットがあります。
相続税の計算時に、死亡保険金は「500万円×法定相続人の数」が非課税枠となり相続税の軽減が期待できます。よって、生命保険を相続税対策として利用するケースも存在します。
生命・医療・介護・個人年金保険の保険料は、所得税・住民税を計算するときに一定額が所得金額から差し引かれるという利点もあります。
保険のデメリット
保険のデメリットは毎月支払う保険料が共済に比べて高いことです。
また、貯蓄型保険は途中で解約すると元本割れを起こす可能性が高い商品が多いです。契約する際には慎重に検討しましょう。
共済で十分って本当?保険・共済の選び方とは
保険・共済選びでは「保険に加入しなくても掛け金の安い共済で十分」という意見も存在します。
しかし、保険・共済選びの判断基準は毎月の掛け金(保険料)だけではありません。
契約者の経済面や健康面、保障に対する考えなどを踏まえ、複数の商品を家族で比較・検討してから決定することをおすすめします。
例えば片働きの世帯で貯蓄が少なく、病気になったときに共済金では賄えない場合には共済だけでは不十分です。共済と他の保険を組み合わせる又は保障が手厚い医療保険に加入することを検討しましょう。
ただし保険料の高い保険から掛け金の安い共済に乗り換えることによって出費がおさえられ、貯蓄が増えるケースもあります。
また会社員・公務員などの給与所得者は、ケガや病気で働けないときに一定の要件を満たすと「傷病手当金」が支給されます。就業中の病気やケガに対しては、労災保険が適用される可能性があります。
保険・共済への加入や見直しを検討しているかたは、保障内容や公的保障を確認しいざという時のシミュレーションをしてみましょう。シミュレーション結果も保険・共済選びの参考となります。
まとめ
保険と共済には「営利事業」と「非営利事業」という大きな違いがあり、それぞれメリット・デメリットが存在します。この記事が保険・共済選びの一助になれば幸いです。