「賞金」というと、成績や功績に対して支払われる褒章的なものであるため税金がかからないというイメージを持っている方もいるのではないでしょうか?今回は「賞金」には所得税が課税されることやその理由、賞金の所得区分はどのように判定するのかなどについて解説します。
「賞金」に分類される様々な収入
「賞金」にはどのようなものがあるのか?
「賞金」といえば、マラソン大会やプロスポーツの大会などで受け取る金銭というイメージがあります。絵画や書道などのコンテストで金賞を受賞した際の副賞として賞金を受け取ることもあるでしょう。将棋や囲碁の大会で優勝して賞金を受け取るといったケースもあります。また、近年ではeスポーツに代表されるようにゲームの大会などでも賞金を受け取る機会が増えており、賞金目的のプロ選手が登場するといったケースもあります。大人から子供まで「賞金」を受け取るケースは以前より増えているといった印象です。
学生でも賞金を得る場合がある
税法のルールとして、もうけが出たら税金を納めるのが大原則です。ポイントとしては、納税する義務がある人に「年齢制限がない」という点です。つまり、たとえ学生であっても申告義務がある一定以上の所得を得た場合には確定申告で所得税を納めなければならない、ということです。
eスポーツやゲームなどはスポーツの大会と違って大人、子供といった身体的な格差はさほど影響しません。大人も参加する大会で優勝するようなケースもあります。また、将棋や囲碁のように、そもそも体格差を問わないような競技では、ひらめきや想像力といった頭脳的な部分が求められます。才能があれば子供でも充分活躍することができるでしょう。
「小学生が確定申告」というと、少し違和感を持つ方もいるかも知れませんが、税法では年齢問わず課税されるという点を覚えておきましょう。大事なポイントとして、賞金を受け取った場合、所得税を納税する義務があるのは「賞金を受け取った学生自身」である点です。したがって、学生の親が親の所得として確定申告を行えません。また、確定申告をした結果、所得税の納税額が生じた場合、これを親が負担することもできません。
仮に、賞金にかかる確定申告で200万円の所得税が発生し、これを親が全額負担したとしましょう。一般的に、親子間であっても金銭の贈与があった場合には贈与税が課税されます。所得税の200万円を本来負担すべき学生に代わって親が負担すれば、親から子供への200万円の贈与があったものとみなされるのです。所得税200万円の他に、200万円から贈与税の基礎控除である110万円を差し引いた90万円に対する贈与税を別途支払わなければなりません。
賞金に税金はかかるのか?
一般的には「所得税」が課税される可能性が高い
結論からいうと、「賞金」のほとんどは所得税が課税されると考えて間違いありません。大会やコンテストに参加するということは、税法でいうところの「労務あるいは役務の提供」をしていることになります。労務あるいは役務の提供の対価として受け取ったものは、たとえ賞金であっても所得税法では課税対象とみなされます。たとえば、サラリーマンの給与所得を例に挙げてみましょう。サラリーマンは会社に対して「労働」を提供し、労働の対価として「給与」を受け取ります。給与には所得税が課税されていますが、賞金についても考え方は同じです。大会やコンテストの「参加」という役務提供により、賞金を得れば当然、所得税が課税されるというわけです。
なかには「非課税」となる賞金も
数ある賞金のなかでも、特別に「非課税」となる賞金の一つが「ノーベル賞の賞金」です。所得税法第9条には、社会政策上の観点から非課税とされる所得が定められています。具体的には、預貯金の利息や遺族年金、非課税通勤手当などが挙げられていますが、第13項に「賞金」や「報奨金」についての規定があります。
そのなかで「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」と具体的に明記されているのです。ノーベル賞には「物理学賞」「化学賞」「生理学賞」「文学賞」「平和賞」「経済学賞」の6つがあります。このなかで「経済学賞」だけは、所得税法上の非課税に該当しません。その理由として、経済学賞の賞金はスウェーデン国立銀行が拠出しており、ノーベル基金から交付されているものではないからです。「経済学賞」を受賞した際には確定申告が必要、ということになるのが面白いところです。
「賞金」の所得区分はどこで判定する?
賞金は「一時所得」か「雑所得」
次に「賞金」の所得区分について解説していきます。賞金が課税されるケースではその所得区分が問題となります。後述しますが、所得区分が違うと所得税が課税される金額(課税所得)の計算方法が変わってくるからです。正しい税額計算を行うためにはこの所得区分を正しく判断しなければならないのです。
「賞金」の所得区分として考えられるのは「一時所得」あるいは「雑所得」です。判断する順序としては、その賞金が「一時所得」に該当するかを判断し、該当しなければ「雑所得」になるというイメージです。
はじめに「一時所得」の定義を確認してみましょう。
国税庁のHPによると、
「一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。」
この定義を賞金に当てはめてみると
- 営利目的の継続的行為で得た賞金ではないこと
- 労務や役務、資産の譲渡の対価としての賞金ではないこと
ということになります。
これについて、マラソン大会で得た賞金に対する国税庁の見解があります。要約すると「大会で主催者から得た優勝賞金及び記録更新賞金は雑所得、主催者以外から得た報奨金については一時所得」というものです。両者の違いは、上記の定義2の部分が判断要素となっています。つまり、大会に参加することが労務又は役務の提供であり、その結果、主催者から受け取った賞金は労務又は役務の対価であるとの認識です。賞金が対価である以上、一時所得には該当せず雑所得となるという判断になります。
大会の主催者以外から受け取る賞金(報奨金)については、労務又は役務を提供した相手以外から受け取っていますので定義2に該当します。
所得区分の判定をする際には、その賞金が参加した大会やコンテストの主催者からのものかどうかを正しく認識する必要があります。
「一時所得」と「雑所得」の違いとは?
では「一時所得」と「雑所得」では、所得の計算方法にどのような違いがあるかをみていきましょう。
一時所得の計算方法は以下の通りです。
収入を得るために要した費用の他に、50万円の特別控除を差し引きできます。
さらに、所得税計算の基礎となる課税所得を求める際に、所得金額を1/2にできます。
これに対して、雑所得には「公的年金」「業務」「その他」の3種類の区分がありますが、賞金が一時所得に該当せず雑所得とされた場合には「その他の雑所得」として計算します。
一時所得のような50万円の特別控除はありませんし、課税所得を計算する際に所得を1/2とすることもできません。両者を比較してみれば分かりますが、同じ収入でも一時所得とした方が雑所得で申告するよりも税金の計算上有利となります。
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まとめ
ノーベル賞で受け取る賞金のように所得税法で非課税とされるものを除いて、一般的に賞金は「利益」としての性質を持ちます。賞金であっても、もうけであることには変わりありませんので、忘れずに確定申告をするようにしましょう。