福利厚生は、社員やその家族の健康管理や生活の質の向上につながる取り組みのひとつです。福利厚生が充実していれば社員やその家族の満足度が向上し、離職防止にもつながります。また福利厚生は就職先を選ぶ際に、重要な判断基準のひとつです。そのため優秀な人材を集めるためにも、福利厚生制度の充実が必要です。
そこでこの記事では福利厚生の導入効果と種類、さらには福利厚生の課題について解説します。
福利厚生とは
福利厚生とは企業が従業員のために行う施策であり、給与や賞与以外の健康や生活の質の向上に関する取り組みのことをいいます。対象は従業員の家族も含んでいるため、福利厚生が充実している会社は、従業員の家族からの評価も高くなり、従業員満足度向上にもつながります。
また就職先や転職先を選ぶ際にも、福利厚生は重要な判断基準のひとつとなっており、優秀な人材を得るために、福利厚生を充実させている企業が増えているのが現状です。
福利厚生の導入効果とは
福利厚生には以下のような5つの導入効果があります。
良い人材が集まる
福利厚生は就職を決める際の重要な要素のひとつです。たとえば「マイナビ 2023年卒 大学生 活動実態調査 (3月1日)」によれば、就職先として企業を選ぶポイントとして、「福利厚生が充実している」は3番目に多くなっています。
出典:「マイナビ 2023年卒 大学生 活動実態調査 (3月1日)」❘株式会社マイナビ
つまり就職先を選ぶポイントとして福利厚生は重要な判断基準のひとつとなっており、他社にない福利厚生制度を設ければ、良い人材の集まる可能性が高いと言えます。優秀な人材を集めるためにも、福利厚生の充実が企業の課題のひとつとなっているわけです。
従業員の満足度があがる
良い福利厚生制度がある会社は従業員満足度が向上します。従業員満足度があがれば、生産性の向上および業績アップにつながります。また福利厚生に対する満足度が高い社員は、転職する可能性が低いです。
たとえば労働政策研究・研修機構が2020年7月に発表した「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」によれば、福利厚生制度への満足度が高いほど、現在の会社に勤め続けたいという割合が高くなっています。
出典:「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」❘ 独立行政法人 労働政策研究・研修機構
一方社会の福利厚生に「不満足」の従業員は、「どちらかと言えば勤め続けたくない」「勤め続けたくない」の割合が約42%と高いです。このように福利厚生の充実には人材流出を防ぐ役割もあります。
従業員の健康維持に役立つ
仕事後や休日が充実するような福利厚生を提供することで、従業員の精神面も含めた健康維持につながります。従業員が健康であれば生産性も向上し、また体やメンタルの不調による退職を防げるでしょう。
近年、従業員の健康を経営的な視点で捉えて行う「健康経営」を実施する企業が増えています。従業員の健康が生産性や企業イメージの向上に役立つという考えが一般化しつつあるわけです。
企業の評価が高まる
福利厚生を重視しているということは、従業員を大切にしている会社だと考えられ、企業の評価が高まります。また福利厚生が充実している会社は安定している会社だと、就職を希望する人たちに見られています。
たとえば「マイナビ 2023年卒大学生就職意識調査」によれば、「企業が安定性を感じるポイント」として「福利厚生が充実している」がトップです。福利厚生制度を整えることで、企業としての評価が高まることを示している調査結果だと言えます。
出典:「マイナビ 2023年卒大学生就職意識調査」❘ 株式会社マイナビ
節税効果がある
「福利厚生費」として計上できれば、経費にできます。経費にすることで法人税が安くなります。もちろんすべての福利厚生が「福利厚生費」になるわけではありません。「福利厚生費」は①すべての従業員が対象、②常識の範囲内での支出、③社内規定への記載などが必要になってきます。
福利厚生の種類
福利厚生としては大きく分けて「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」のふたつに分かれます。
法定福利厚生
法定福利厚生とは、法律によって定められている福利厚生のことを言います。具体的には以下のものが法定福利厚生にあたります。
- 健康保険料の企業負担
- 介護保険料の企業負担
- 厚生年金保険料の企業負担
- 雇用保険料の企業負担
- 労災保険料
- 子ども・子育て拠出金
これらのものは法律として決まっているもので、企業として負担すべきものです。そのため企業によって差はありません。
法定外福利厚生
法定外福利厚生は企業の裁量で決められる福利厚生で、企業によって大きく差があります。一般的に「福利厚生」と言われる場合、法定外福利厚生を指します。主に以下のものが法定外福利厚生です。
- 住宅手当
- 交通費
- 退職金
- 法定外の健康診断
他にも昼食の補助費がついたり、財産の形成や資格取得に対する支援を行ったりしている企業もあります。またレクリエーション、スポーツ施設の利用に関する補助がある企業もあり、企業によってさまざまです。誕生日にお祝い金を出したり、海外旅行に補助費を出したりする福利厚生を取り入れている企業もあります。
福利厚生を導入する際の課題
福利厚生の重要性とその種類について解説してきましたが、福利厚生を導入する際には課題もあります。これらの課題をクリアしなければ、福利厚生を導入することは難しいと言えます。
企業の負担が増える
福利厚生を行うことで節税効果があることはすでに述べました。しかし節税効果よりも負担の方が大きいのが実情です。そのため福利厚生を導入する企業は、費用と効果のバランスを考えなければなりません。
福利厚生は一旦導入すると、企業負担が大きいという理由で辞めることは難しいです。なぜなら今まであった福利厚生が無くなると、従業員満足度が下がってしまうからです。そのため福利厚生の導入には慎重にならざるを得ないという現状があります。
管理の手間がかかる
福利厚生は、導入して終わりではありません。福利厚生の制度を充実させると、管理コストがかかるのが一般的です。中小企業など、福利厚生のためだけに社員を雇う余裕のない会社もあります。こうした管理コストを抑える方法としては、福利厚生のアウトソーシングが考えられます。
福利厚生のアウトソーシングは管理コストを減らせるだけでなく、すぐに導入できるというのもメリットです。また自社では導入できない福利厚生制度を提供できるため、従業員満足度の向上にもつながるでしょう。
従業員すべての要望には応えられない
従業員の人数が増えてくると、福利厚生で導入してほしいという要望も多様化します。またライフステージによって、従業員の要望が変ってくるでしょう。そのためすべての従業員の要望を満たせないという課題が出てきます。
こうした課題を解決する手段として、「カフェテリアプラン」があります。「カフェテリアプラン」とは従業員が自分で必要な福利厚生を選ぶ制度のことです。会社は従業員にポイントを配布し、そのポイントを使って従業員は福利厚生を利用します。
「カフェテリアプラン」は、従業員が自分にとって必要な福利厚生を受けられるというメリットがあります。一方、単年度でポイントを使い切らなければいけない企業が多いことや、カフェテリアプランの利用内容に応じて課税・非課税を判断しなければならないというデメリットも。
カフェテリアプランを導入する場合、こうしたメリットとデメリットを踏まえつつ、自社に合ったカフェテリアプランを検討していかなければなりません。
まとめ
ここまで企業が福利厚生を導入する効果と課題について解説してきました。福利厚生を導入することで、優秀な人材の獲得や従業員満足度の向上につながり、結果として業績アップにもなります。福利厚生の導入に関する課題をふまえつつ、自社に合った福利厚生制度を検討してみましょう。
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