政府が推進するマイナンバーカードがようやく社会全体に普及しつつあります。それに伴い、マイナンバーカードを使って健康保険証や運転免許証を一体化させる試みが進められています。今回はマイナンバーカードと健康保険証を一体化させた「マイナ保険証」にスポットをあて、そのメリットについて解説していきます。
マイナンバーカードを使った新しいサービス
マイナンバーカードの交付状況
マイナンバーカードの申請状況については、申請数が約9,700万人、申請割合は77.3%(令和5年7月2日時点)となっています。国民の4人のうち3人がマイナンバーカードの交付申請を行っていることがわかります。2022年末までに全国民が所有することを目標としていましたが、当初は普及率が思うように上がりませんでした。しかし、マイナポイントの付与キャンペーンなどもあり、ここにきてようやく目標達成の目途が立ったようです。2024年の秋には現在の健康保険証を全廃し、マイナンバーカードと健康保険証を一体化させようとの動きもあります。
政府は全ての行政手続きをインターネットを使った電子手続きにする、いわゆる「サイバー政府構想」を以前より推進していました。実際、税務申告や社会保険の申請、法務局の登記申請など数多くの行政手続きが電子化され、提出窓口に行ったり書面による郵送手続きをする必要がなくなりつつあります。マイナンバーカードに健康保険証や運転免許証を紐づけすることで複数のカードを発行する必要がなくなります。また、情報を1カ所に集約することが可能となりますので、政府が目指すペーパーレス化、電子化が更に推し進められることになると予想されます。
私たちの生活でマイナンバーカードが必須になる日もそう遠くはないという印象です。
マイナンバーカードが「健康保険証」になる
前段でも触れましたが、現在の健康保険証を全廃しマイナンバーカードと一体化させようという動きがあり、2024年秋を目途に完全一体化を目指すというのが政府の基本方針のようです。マイナンバーカードのなかに健康保険証としての機能を持たせた、いわゆる「マイナ保険証」は現在でも一部利用されています。「オンライン資格確認」ができる端末を医療機関の窓口に設置し、利用者がマイナンバーカードを読み込ませることで健康保険証の確認を行うという仕組みです。窓口で受付の順番を待つ時間が短縮され、過去のカルテや医療費の明細なども見ることができるといった様々なメリットがあります。また、確定申告で受ける医療費控除についても、マイナ保険証にすることでマイナポータルから医療費の情報が取り出せます。毎年、医療費が高額になり確定申告をしている方にとっては、面倒だった医療費の集計が簡単になりますのでメリットは大きいでしょう。
最終目標としては、全国民が所持するマイナンバーカードに、健康保険証を一体化させ現在の健康保険証を廃止するというイメージです。
「マイナ保険証」にすることのメリットとは?
「高額医療制度」における高額療養費の請求手続き
マイナ保険証にすることのメリットのなかでも、特に注目したいのが「高額医療制度」の手続きが簡単になるという点です。今までは自己の申請により行っていた医療費の払い戻し手続きが不要になるのでメリットは大きいでしょう。マイナ保険証のメリットを解説する前に、まずは高額医療制度の概要について解説します。
「高額医療制度」とは、一定額を超えた高額な医療費を国が負担してくれる制度です。出産や手術などは医療費の負担額が高額になりがちであり、家計の負担も重くなります。そこで、家計負担を軽減するため1カ月にかかった医療費のうち一定額を超えた部分については国の負担となり、自分で申請手続きをすることによって医療費が払い戻しされるという制度です。
申請するタイミングについては次の2つの方法があります。
1.高額医療費を支払った後に払い戻し申請をする方法
高額医療費の支払をした後、一定額を超えた部分について払い戻しの申請を行う方法です。高額医療費を一旦全額支払わなければならないというデメリットがあります。
2.高額医療費を支払う前にあらかじめ「限度額適用認定書」の申請をする方法
医療費が高額になることがあらかじめ分かっている場合、事前に「限度額適用認定書」の交付を受けていれば、一定額までの支払をするだけで済みます。
いずれのケースも原則としてご自身で書類を記入して申請しなければなりません。高額医療費の申請手続きは医療機関が行ってくれると思っている方もいるかもしれません。医療機関では高額医療費の申請に必要な書類は出してくれますが、申請自体はしてくれませんので注意してください。
「マイナ保険証」で高額療養費の請求が簡単に
しかし、マイナ保険証にすることでこの高額医療費の申請手続きが自動になります。具体的には、マイナ保険証のなかで高額医療費の限度額が自動で計算され、集計された1カ月分の医療費との比較で限度額を超えた部分については自動的に高額医療費の払い戻しがされるという仕組みです。従来の書面ベースでの申請をする必要がなくなり、申請忘れや高額医療費の一時的な負担もなくなります。ただし、手続きを省略できるのはオンライン資格確認が導入されている医療機関で受診した場合のみです。オンライン資格確認に未対応の医療機関を受診した場合には、従来通り書面ベースでの申請となりますので注意してください。
「マイナ保険証」の作成方法について解説
マイナポータルからの申し込み方法
では「マイナ保険証」の作成方法について解説します。マイナ保険証の申請方法としては、マイナンバーカードの総合サイトである「マイナポータル」から申請する方法があります。
マイナポータルからの申請をするにあたって、事前に準備するものとしては以下のものがあります。
- マイナンバーカードと四桁の暗証番号
- マイナンバーカードを読み取るための端末
- マイナポータルアプリのインストール
(スマートフォンやICカードリーダーなど)
手順としては、マイナポータルアプリから利用申込を選択し、利用規約に同意した後マイナンバーカードを読み込ませ、暗証番号を入力するだけで申請は完了します。時間にして約1~2分といったところです。以前はパソコンにICカードリーダーを接続してマイナンバーカードを読み込ませるケースがありました。しかし、現在ではNFC機能を搭載したスマートフォンやタブレットなど、身近な端末でもマイナンバーカードを読み込めるものが増えてきました。現在ではICカードリーダーの購入などの費用をかけずに、誰でも簡単に申請手続きをすることができます。
セブン銀行のATMからも申し込みが可能
スマートフォンやパソコン等の端末がない方には、コンビニでの申込手続きをおすすめします。セブン銀行のATMにマイナンバーカードを挿入し「健康保険証利用申込」を選択した後、マイナンバーカードの暗証番号を入力するだけで申請手続きが完了します。
まとめ
マイナンバーカードに様々な機能を持たせることで、複数のカードを持つ必要がなくなり手続きも簡素化されることは歓迎すべきことです。将来的にはマイナンバーカードの所持が必須になるのはほぼ間違いありません。申請がまだお済みでない方は早めの申請をおすすめします。