「車を売るならビッグモーター」のCMで知られる、中古車販売大手・ビッグモーターが事故車修理における保険金を不正に水増し請求していた問題で、同社に社員を出向させていた損保ジャパンが、不正の指示があったことを認識していたにもかかわらず、金融庁には「不正の指示はなかった」と虚偽報告していたことが明らかになりました。
損保ジャパンとビッグモーターの闇が明るみに
ビッグモーターの複数の関係者によると、水増し請求が表面化したのは2022年3月頃のこと。損保の業界団体にビッグモーターの従業員から「上長の指示で過剰な自動車の修理をし、その費用を保険会社に請求している」という旨の内部通報があったことが事の発端といわれています。
損保ジャパンは2011年から合計37人の出向者をビッグモーターに送っており、事故車両の修理を担う板金塗装部門にも出向させていたといいます。水増し請求の発覚を受け、損保ジャパンの出向社員らがビッグモーター内で調査を実施。しかし調査を基にビッグモーターがまとめた報告書では、告発した従業員の発言が署名つきで「工場長の指示はなかった」との記載になっていたそうです。
損保ジャパンとしてはその署名入りヒアリングシートを基にして、不正の指示は確認できなかったと結論付けたとされています。その上で、水増し請求の主な原因は修理作業者のスキル不足や事務連携上のミスであるとして、中止していた入庫誘導(ビッグモーターに事故車を紹介すること)を再開をすることを決め、その旨を2022年7月に金融庁へ任意提出していたそうです。
不正の情報を受けて、ビッグモーターと取引のあった損保ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社は2022年6月に事故車両をビッグモーターの修理工場へ紹介することを停止したが、損保ジャパンだけは同年7月、金融庁への報告と前後して再開させていました。
ビッグモーターは保険代理店として自賠責保険を取り扱い、事故車両の紹介数に応じて自賠責の契約数を損害保険会社各社へ割り振っていました。損保ジャパンが紹介を単独で再開した結果、他社が獲得できたはずの契約が損保ジャパンに流れたとみられています。
いずれにしても、ビッグモーターと損保ジャパンは組織的ともいえる不正の事実を認識しながら、その事実を隠したことの責任は免れようがないとみられています。
それほどまでにビッグモーターと損保ジャパンの2社を動かしたのは、2019年4月に導入した板金部門の「完全査定レス」の仕組みがあったからとされています。この仕組みは、損保ジャパンの損害査定人による修理見積りの査定を省略し、ほぼノーチェックで保険金が支払われるようで、ビッグモーターにとっても、損保ジャパンにとっても増収につながるものでまさに相互利益の関係だったようです。
連日新たな疑惑が噴出する中、今後の動向に注目が集まるニュースです。