2023年6月19日に、金融庁は大手損保会社である「東京海上日動火災保険」「損害保険ジャパン」「あいおいニッセイ同和損害保険」「三井住友海上火災保険」に対してカルテルの疑いがあるとして報告徴求命令を出していました。そして8月7日、公正取引委員会が、この大手損保会社4社に対して任意調査に着手したことを明らかにしました。
大手損保会社4社の「カルテル疑惑」
複数の業種に広がっている可能性も
2023年8月7日、公正取引委員会は大手損保会社4社にカルテル疑惑があるとし、独占禁止法違反容疑で調査を開始しました。今後は、該当の大手損保会社に対して事情聴取や資料の提出を求めていく方針です。
関係者によると、今回調査が実施された背景として、私鉄大手である「東急グループ」向けの火災保険と、仙台空港が運営している「仙台国際空港」向けの保険契約に対して、事前に保険料の不当な価格調整を実施していた疑いが持たれていると、明らかにされています。
具体的には、複数の損保会社が共同で実施する「共同保険」を利用し、4社が口裏を合わせて保険料を高く設定する「カルテル」の可能性があると疑われています。
共同保険とは、複数の損保会社が1つの保険契約を共同で引き受けるもので、保険契約者は損保会社が倒産した場合などのリスクに備えて利用する保険のことです。
また、今回の大手損保会社4社のカルテル疑惑は、「東急グループ」「仙台国際空港」以外にも、「京成電鉄」「千葉都市モノレール」など複数の業種でカルテル疑惑が広がっている可能性も考えられています。
今回の大手損保会社4社にカルテル疑惑がかけられていることに対し、損保保険に詳しい福岡大学の植村信保教授は「自然災害の多発などによって、保険の支払いが増え、保険会社の収支が厳しさを増している。一方で、マーケットの集約化が進み、一部の保険会社しか、企業向けの取り引きを引き受けられない状況も背景の1つにあるのではないか」と述べています。
カルテルによる各社の独占禁止法違反が認められれば課徴金納付命令の対象となるため、8月8日に開かれた会見で鈴木金融担当大臣は、「網羅的かつ深度のある調査を実施することが必要であると判断した。今後、報告内容を精査したうえで、問題が認められた場合には、法令に基づき厳正に対処してまいりたい」と大手損保4社への厳正な対処を強く示しました。
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