2023年8月15日、財務省は政府が保有する日本郵政株式の一部売却を実施したと明らかにしました。今年5月、日本郵政は3,000億円を上限とする自社株取得を2023年8月15日から2024年3月31日までの期間で実施する方針を示しており、これに合わせて財務省は政府が保有する1,056億円相当の日本郵政株を売却しました。
日本郵政株式を売却した財源は「震災復興財源」として利用される
財務省のホームページによると、8月15日に実施された日本郵政の買い付け注文の概要と、政府が保有する日本郵政株の売付け注文の概要は、以下のように記載されています。
【日本郵政の買付け注文の概要】
注文株式数 | 2億9,027万5,700株 |
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注文価格 | 1,033.5円(8月14日の終値) |
【政府が保有する日本郵政株の売付け注文の概要】
注文株式数 | 1億227万3,600株 |
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注文価格 | 1,033.5円 |
総額 | 1,056億9,976万5,600円 |
参照:ともに日本郵政株式会社株式について売付けの委託を行います❘ 財務省
また、日本政府は2021年6月にも2,499億円相当の日本郵政株を売却しており、これまでの売却総額は3兆9,000億に達しています。今回の日本郵政株の売却分を合わせたおよそ4兆円は、震災復興財源として東日本大震災の復興財源に充てる見通しです。
2021年6月に実施された日本郵政の買い付け注文の概要と、政府が保有する日本政府株の売付け注文の概要は、以下のとおりです。
【日本郵政の買付け注文の概要】
注文株式数 | 2億7,609万500株 |
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注文価格 | 905.5円(2021年6月10日の終値) |
【政府が保有する日本郵政株の売付け注文の概要】
注文株式数 | 2億7,609万500株 |
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注文価格 | 905.5円 |
総額 | 2,499億9,994万7,750円 |
参照:ともに日本郵政株式会社株式について売付けの委託を行います❘ 財務省
東日本大震災の復興予算は、2011年から2020年度までの間に総額44兆7,478億円を計上し、会計上の支出額では10年間の間に38兆1,711億円が使用されています。そのため、日本郵政株の売却で確保したおよそ4兆円の震災復興財源は、過去10年間の支出額と比較すると、およそ10分の1以上を占める金額だと言えるでしょう。
また、日本郵政株の一部を売却した背景には、日本郵政が実施した自社株の買い付けにより市場に出回っている株式の一部を消滅させたことが関係しています。日本郵政は、郵政民営化法により、発行済み株式の3分の1以上を政府が保有することが法律で義務付けられています。
したがって、政府が株式を売却できる範囲は限られているのです。しかし、今回実施された日本郵政の自社株買いで政府の日本郵政株保有比率が上昇して売却できる余地が生まれたことで、震災復興財源を確保できました。今回の日本郵政株の売却で、政府の日本郵政株保有比率は33.3%となっています。
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