2023年8月29日、東京にある貴金属販売大手の田中貴金属工業で、円建てによる金現物における小売価格が初めて1万円台(1グラム当たり)に到達したことがわかりました。金現物は前日から28円上昇し、1万1円になったとのことです。これにより、国内の小売価格の指標としては、2日連続で過去最高額を更新したことになります。
金価格の上昇には米国の金融引き締めによる円安が関係している
2023年7月までの円建てにおける金価格(税込み)の推移は、以下のとおりです。
2023年 | 最高額 | 最低額 | 平均額 |
---|---|---|---|
1月 | 8,977円 | 8,699円 | 8,826円 |
2月 | 8,924円 | 8,725円 | 8,789円 |
3月 | 9,385円 | 8,846円 | 9,073円 |
4月 | 9,609円 | 9,281円 | 9,482円 |
5月 | 9,794円 | 9,642円 | 9,704円 |
6月 | 9,876円 | 9,683円 | 9,758円 |
7月 | 9,886円 | 9,614円 | 9,766円 |
2023年7月までの金価格の推移を確認すると、毎月の平均金価格は上昇傾向であることがわかります。そして2023年8月29日に、1グラムあたりの金価格が初めて1万円を突破しました。
また、金価格の指標はロンドンの金市場で決められており、現地時間で毎営業日の午前10時半と午前3時の2回に5大貴金属商が価格を決めます。そして、この指標となる価格を基に各地の市場で金価格が決められていくのです。
今回、金価格が1万円に到達した背景には、ドル円相場が146円台まで値上がりした「ドル高円安」の進行が関係しています。一般的に金は米ドルで取引されるため、ドル高円安になるほど円建てでの金価格は上昇するのです。円建てとは、輸入など、輸出者が外国から商品を送る際に価格表示を円で表示する契約を結び、実際の支払いも円でなされる事です。
また、ドル円相場が146円付近で推移している理由として、米国の中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを実施していることが挙げられます。
米国が金利を引き上げることで、人々は日本円よりも金利の高い米ドルで預金や資産運用をするため、米ドルを買って円を売る動きが優勢となっているのです。
また、金価格が上昇する際は、以下の要因も挙げられます。
金価格が上昇する要因 | |
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要因 | 上昇する理由 |
①金の需要が高まる | 金現物に投資する人が増えるから |
②世界経済の先行きが不安視される | 紛争やテロ、パンデミックが発生すると、安定した資産を確保したいと考えるから |
③インフレが懸念される | モノの価値が上がり、自己資産を確保したいと考えるから |
④各国の中央銀行が金を購入する | 各国の中央銀行がリスクヘッジとして金を購入するから |
⑤世界的に低金利になる | 金への投資価値が高まり、購入する人が増えるから |
なお、2020〜2023年の間では、ウクライナ情勢や米銀行の相次ぐ破綻、新型コロナの影響で世界経済の先行きが不安視され、金価格が上昇しています。
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