厚生労働省の社会保障審議会・年金部会は、2023年9月21日より「年収の壁」問題の中長期的な解決策に向けて、本格的な議論を始めることにしています。
この問題は、「年収の壁」により労働時間を制限せざるを得ない人が多く、人手不足の大きな要因となっていると指摘されています。
年収の壁とは?社会保険料の支払い義務が発生するボーダーライン
年収の壁とは、一定の年収を超えた際に社会保険料の支払いが必要となったり、配偶者などの扶養から外れたりすることで社会保険料の支払い義務が発生する年収のボーダーラインのことです。そのため、年収の壁を超えると、手取りの実質的な減少につながります。
2023年時点での社会保険における年収の壁は、以下のとおりです。
- 106万円の壁
- 130万円の壁
106万円の壁は社会保険料が発生するボーダーライン、130万円の壁は家族の扶養に入れるかのボーダーラインとなります。
106万円の壁は、2022年10月以降に社会保険の適用範囲が拡大されたことで、パートやアルバイトなどの短時間労働者でも、106万円を超えた場合に社会保険が適用されることが義務づけられました。
適用範囲が拡大された106万円の壁の適用条件は、以下のとおりです。
- 被保険者数が101人以上の企業
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 2カ月を超える雇用が見込まれる
- 学生ではない
また、2024年10月以降は、対象企業の被保険者数が51人以上となり、社会保険が適用される雇用者はさらに増える見込みです。
そんな中、9月21日に開かれる議論では、通常では労使折半で負担する保険料について、「本人の負担割合を軽減」「事業主の負担分だけ求める」など、労働者に対する社会保険料の軽減について検討されます。さらに、軽減対策を実施した際に、将来受け取れる年金支給水準の金額についても議論を進めていくとのことです。
「労使折半」とは、被保険者である労働者と所属会社が保険料を半分ずつ支払う制度のことです。公務員や会社員といった社会保険の加入者は、基本的に労使折半で毎月の保険料を納めています。
なお、年収の壁の短期的な対策として、2023年10月から106万円を超えた人の手取りが減らないように取り組んだ企業への助成制度など、期間を区切って順次対策を実施する方針です。
ただし、議論にあたって「扶養外で働く人との公平性」や「企業への負担増加」などの問題もあるため、これらを考慮した上で、慎重に議論を進めていく必要があると考えられています。
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- 「年収の壁」は人手不足の原因?解消に向けて厚生労働省が本格的な議論へ