岸田文雄首相が9月21日、ニューヨークで投資家向けの講演を行いました。
日本の資産運用業界の強化を図るため、新たな取り組みとして「資産運用特区」の創設を表明しました。この特区の設置により、外国からの投資家を呼び込むために、英語での行政対応が可能になるなど、今後、国際的な投資環境の整備に力を入れる考えを示しました。
投資環境改善で海外投資家への魅力を高める
岸田首相が講演した「ニューヨーク経済クラブ」は1907年に創設された会員制組織で、アメリカの経済界のリーダーたちが集まる場所です。
岸田首相は、新たな展望を描きながら、日本の個人金融資産が2,000兆円を超えることを背景に、資産運用業界のさらなる成長に向けた日本政府の資産運用戦略を強調しました。
政府は、家計の金融資産の半分以上にあたる1,100兆円の現金と預金を、投資に活用し、個人資産からも収益を生み出すことを目指しています。この取り組みの主な目的は、企業の発展を通じて、賃金や配当といった収益を家計にもたらすことです。
なお日本の首相がこの場で講演を行うのは、初めてのことです。
特に注目すべきは、海外から優秀なファンドマネジャーを引き寄せるための「資産運用特区」の設立です。これにより、英語を使用した行政手続きが可能になります。また、資産運用会社が本業に専念できるように、バックオフィス業務のアウトソーシングをサポートする規制緩和も行われる予定です。
海外からの新規参入が続くことで、日本国内の運用会社との競争が生まれることが期待されます。実際、国内の投資信託会社はほとんど変化していない閉鎖的な市場が続いており、新規参入によって、結果的に顧客の選択肢が増えることに繋がることが予想されます。
また岸田首相は、日本企業のコーポレートガバナンスの改革にも言及し、PBR(株価純資産倍率)の向上を促す計画を強調しました。 株価純資産倍率とは、企業の資産内容や財務状態をもとに株価水準を測る指標のことをいいます。
講演のなかで、特に「構造的な賃上げ」と「持続可能性の向上のための官民投資」の2つの要点に焦点が当てられました。
これにより、日本の企業の競争力が向上し、投資家にとっても魅力的な環境が整うでしょう。
今後、米国やフランスの成功例を参考に、「運用資金獲得支援プログラム(EMP)」の整備が計画され、新規参入の運用会社を支援する方針も明らかにされました。
また、投資家の声を政策に反映させるため、「資産運用フォーラム」の設立も検討されています。
この講演には、ノーベル経済学賞受賞者であるジョセフ・スティグリッツ氏を含む、約200名の金融界のリーダーや経営者が参加しており、講演終了後、出席者からの質問に岸田首相が答えました。
岸田首相は22日の帰国後、週明けに経済対策の柱立てを閣僚に指示するようです。
政府は年末までに一連の規制緩和策を詳細に検討し、2024年の通常国会に必要な法案を提出する予定です。
日本への積極的な呼びかけが、日本経済の持続的な成長につなげられるのか、今後の展望が注目されます。
▼参照サイト
岸田首相「資産運用特区を創設」 海外勢の参入促す【日本経済新聞社】
「投資される国」へ環境整備 首相、資産運用特区を表明【日本経済新聞社】
資産運用特区を創設へ 岸田首相、家計の資産増狙い「日本に投資を」【朝日新聞デジタル】
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