公的年金でも、地域によって受給額に差があることをご存じでしょうか?
厚生労働省「2021年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、47都道府県で最も受給額が高いのは国民年金が富山県、厚生年金は神奈川県です。一方で2021年に受給額が最も低い都道府県は、国民年金は沖縄県で厚生年金が青森県です。なぜ地域差が生じるのでしょうか?今回は、全国の平均年金月額と都道府県別の年金受給額ランキング、差額と地域差が生じる理由、もらえる年金を増やす方法をお伝えしていきます。
※記事の内容は記載当時の情報であり、現在の内容と異なる場合があります。
全国の年金の受給額の平均とは
全国の平均年金受給額はいくら?
公的年金には国民年金と厚生年金があり、国民年金は日本に住んでいる20歳以上60歳未満の方が加入します。厚生年金は、会社員・公務員などの給与所得者で、週の所定労働時間が20時間以上など一定の要件を満たすと加入の義務があります。
2021年度における国民年金受給者の平均年金月額は、以下のとおりです。
(単位:円)
老齢基礎年金・受給資格期間 25年以上 |
老齢基礎年金・受給資格期間 25年未満 |
---|---|
56,368 | 19,397 |
出典:厚生労働省年金局「2021年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
厚生年金保険の被保険者には第1号〜第4号被保険者がいますが、会社員が該当する第1号の平均年金月額を見ていきましょう。
(単位:円)
老齢基礎年金・受給資格期間 25年以上 |
老齢基礎年金・受給資格期間 25年未満 |
---|---|
143,965 | 62,676 |
出典:厚生労働省年金局「2021年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
受給権者数を含めた平均年金月額は以下のとおりです。
出典:厚生労働省年金局「2021年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
年金額は、国民年金・厚生年金ともに毎年改定されます。
年金額の改定は、名目手取り賃金変動率と物価変動率の関係に加え2004年の年金制度改正で導入された「マクロ経済スライド」により調整が行われます。
1. 名目手取り賃金変動率>物価変動率の場合には、新規裁定者(67 歳以下の方)の年金額は名目手取り賃金変動率を、既裁定者(68 歳以上の方)の年金額は物価変動率を用いて改定する
2. 賃金・物価による改定率がプラスの場合、現役の被保険者の減少と平均余命の伸びに応じて算出した「スライド調整率」を差し引き年金の給付水準を調整する(マクロ経済スライド)
厚生労働省年金局「2021年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」には、都道府県別の年金受給額のデータもあります。詳しく見ていきましょう。
都道府県別の年金受給額ランキング
年金受給額が高い都道府県と低い都道府県のトップ5をそれぞれ見ていきましょう。
年金受給額が多い都道府県とは
都道府県別の老齢年金・平均年金月額は以下のとおりです。
厚生年金保険(第1号) | 国民年金 | |||
---|---|---|---|---|
1 | 神奈川県 | 165,321 | 富山県 | 60,034 |
2 | 千葉県 | 160,017 | 福井県 | 59,339 |
3 | 東京都 | 158,661 | 島根県 | 59,276 |
4 | 奈良県 | 157,601 | 長野県 | 59,050 |
5 | 埼玉県 | 156,319 | 石川県 | 58,997 |
出典:厚生労働省年金局「2021年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
厚生年金の平均年金月額が高い都道府県は、神奈川県・千葉県・東京都と首都圏が多くを占めています。
首都圏に加え奈良県も受給額が多いことが分かります。国民年金は福井県・富山県・石川県といった北陸地方が上位に入っています。
年金受給額が低い都道府県
年金受給額が低い都道府県も見ていきましょう。
厚生年金保険(第1号) | 国民年金 | |||
---|---|---|---|---|
1 | 青森県 | 122,111 | 沖縄県 | 52,112 |
2 | 秋田県 | 122,914 | 青森県 | 53,933 |
3 | 宮崎県 | 123,220 | 大阪府 | 54,335 |
4 | 沖縄県 | 123,755 | 和歌山県 | 54,794 |
5 | 山形県 | 124,517 | 高知県 | 55,129 |
出典:厚生労働省年金局「2021年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
青森県・沖縄県は国民年金・厚生年金ともに受給額が低い傾向にあります。
厚生年金保険(第1号) | 国民年金 | |||
---|---|---|---|---|
最も多い | 神奈川県 | 165,321 | 富山県 | 60,034 |
最も少ない | 青森県 | 122,111 | 沖縄県 | 52,112 |
差額 | 43,210 | 7,922 |
厚生年金の場合、最も多い都道府県と少ない都道府県では月の差額が43,210円もあります。
20年受給すると、約1,037万円の差が生じます。
国民年金は月7,922円です。
年金受給額に地域で差があるのは、なぜでしょうか?
年金の受給額に地域差があるのはなぜ?
国民年金は加入期間と納付月数、厚生年金は収入や加入期間などによって個人で受給額に差が生まれます。
公的年金の納付月数・収入に差があるため年金受給額にも差が生じる
年金の受給額は、地域で差が生じるというより「個人差」といえるでしょう。
国民年金は20歳から60歳までの40年間、納付月数や厚生年金の加入期間などに応じて年金額が計算されます。
40年間の保険料を全額納めると、満額の老齢基礎年金が受給可能です。
国民年金の受給額が多い富山県や福井県では国民年金の保険料を納めた期間が長い人が多いことから、受給額も多くなります。
一方、厚生年金は加入していた時期の報酬額や加入期間などによって年金額が決まります。
「報酬比例部分」は、給与や賞与の支給額を基に算定する平均標準報酬月額もしくは平均標準報酬額に一定の倍率と加入期間の月数をかけて計算します。
よって、収入が多く加入期間が長い人ほど厚生年金の受給額が多いといえるでしょう。
都道府県別の賃金の差はどのくらい?
厚生年金の受給額は収入によっても差が生じますが、地域によってどのくらい賃金に差があるのでしょうか?
厚生労働省の2021年賃金構造基本統計調査の結果によると、全国の月額賃金は平均30.7万円です。全国平均よりも賃金が高かったのは6都府県(東京都・神奈川県・愛知県・京都府・大阪府・兵庫県)で、最も高い都道府県は東京都の36.4万円です。
一方で宮崎県・青森県・岩手県・秋田県は25万円以下、沖縄県が約25万円で、年金受給額が低い地域は賃金も低い傾向にあります。
もらえる年金を増やすためには
将来もらえる年金を増やすためには、iDeCo(個人型確定拠出年金)への加入を検討してみてはいかがでしょうか。
iDeCoは任意で加入できる私的年金で、月額5,000円から加入できます。
国民年金の被保険者で65歳未満の方は、原則誰でも加入できますが毎月の掛け金の上限額は人によって異なります。
掛け金は自分で運用し、全額所得から控除可能です。通常金融商品の運用益には税金がかかりますが、iDeCoは非課税で再投資されます。
もらえる年金額を増やせると同時に、節税対策としても有効です。
受け取る際には年金・一時金と方法を選択でき、金融機関によっては年金と一時金を組み合わせて受給できます。
個人事業主・自営業者の方は、国民年金の付加年金への加入や国民年金基金への加入もあわせて検討しましょう。
まとめ
年金受給額は、国民年金は納付した月数、厚生年金は加入期間や収入などによって差があります。「将来が心配」「もらえる年金を増やしたい」という方はiDeCoなど私的年金での備えを検討しましょう。