10月9日に日銀の植田和男総裁が就任から半年を迎えました。この間、米欧の金融引き締めが進む中、日本銀行は異例の金融緩和策を継続しています。物価上昇の背景には原油価格の高騰や円安の進行が影響しており、家計や企業には負担となる状況が続いています。日銀が金融緩和を続けることが、円安や物価高の要因になっているとの指摘もあります。
金融緩和は消費者物価指数の上昇など日本市場に影響を及ぼしている
金融緩和とは、日銀が市場に出回るお金を増やすことで日本経済を活性化させ、景気回復を目指す政策のことです。
例えば、日銀が金利を下げることで、民間金融機関が日銀から多額の資金を調達でき、企業や個人は民間金融機関からの融資を受けやすくなります。
金融緩和が続くと、日米の金利差が広がり、消費者物価指数が上昇するきっかけにもなります。
日銀の公表データによれば、消費者物価指数の上昇率は17カ月連続で2%を上回っています。しかし、実質賃金は相変わらず17カ月連続でマイナスとなっており、賃金上昇が物価上昇に追いついていない状況が続いています。植田総裁はこの点について、「賃金の上昇が物価の上昇に追いついていない」との立場を明確にしており、この問題を解消するための政策継続を強調しています。
日銀は、今年7月の金融政策決定会合で、長期金利の変動許容幅の上限を事実上1%まで引き上げました。これは、アメリカの長期金利の上昇や円安進行を受けた措置とみられています。しかしこの措置の後、円相場は一時1ドル=150円台まで下落しました。長期金利も10年ぶりの0.805%まで上昇するなど、市場の動きは活発となっています。
植田総裁は、物価の基調に関して「やや過小評価していた」との見解を示し、物価上昇の背景には原材料価格の高騰などの供給要因が影響しているとの認識を示しています。一方で、日銀の一部政策委員は「来年1~3月には2%の物価上昇の実現が見極められる」との意見も示しており、金融政策の方向性についてさまざまな意見が交錯しています。
日銀としては、来年の春闘での賃上げ動向や、物価と賃金の関係によって、金融緩和策の方向性を見直す可能性もあるとしています。
植田総裁は、今後も金融政策の正常化に向けての取り組みを続ける考えを示しており、その判断基準として物価と賃金の動きを重視する姿勢を崩さないとみられています。
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- 日銀、就任から半年の植田総裁|大規模な金融緩和は止まらず