4人に1人が寄付した経験があると言われているふるさと納税。2022年のふるさと納税による寄付額は過去最高となる9,654億円を記録しましたが、2023年10月からルールが変更されました。利用者にとっては改悪とも捉えられる今回のルール変更ですが、なぜこのタイミングで変更となったのかご存じでしょうか?
今回は10月からのふるさと納税のルール変更の内容と、変更に至った経緯について詳しく解説いたします。また、利用者にどのような影響があるのかについても具体的に紹介していきます。
ふるさと納税とは?
ふるさと納税とは応援したい自治体に寄付をし、お礼として地域の名産品などの返礼品を受けとれる制度です。さらに確定申告などでふるさと納税で納税した金額を申請することで、寄付した金額の一部が所得税と住民税から控除されます。
「地域の特産品が手に入る」「被災地の復興に協力できる」「故郷の応援がしたい」などの理由からふるさと納税の利用者は年々増加しており、2022年は過去最高の納税額を記録しました。
利用者は増加傾向にある一方で、過度に返礼品が高額になっていく「返礼品争い」も度々問題になっています。
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ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税は、本来は住んでいる自治体に納めるはずの税金を、応援したい任意の自治体に納めることで、住民税や所得税から控除を受けるという仕組みです。
控除される金額は寄付金から2,000円を引いた金額です。
例えば30,000円のふるさと納税を寄付した場合、2,000円を引いた28,000円が控除されます。
ただし28,000円分の税金がそのまま控除されるわけではありません。1年間の所得から28,000円を引いた額に税率がかけらるため、結果として税金の負担額が軽減されるということを抑えておきましょう。
また、ふるさと納税は年収により控除の上限額が設定されています。
詳しくは、総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」をご覧ください。
例えば、年収500万円の独身の人の場合、61,000円が上限額です。ふるさと納税は寄付した金額の30%の返礼品がもらえるため、18,900円(61,000円 × 30%)分の返礼品がもらえます。自己負担の2,000円のみで、18,900円分の返礼品がもらえるということになります。
ふるさと納税の流れ
ふるさと納税は下記の流れで行われます。
②ふるさと納税をする
③ワンストップ特例制度の申請か確定申告を行う
④所得税からの控除
⑤翌年の住民税からの控除
ふるさと納税をした場合は、ワンストップ特例制度の申請か確定申告を行う必要があります。会社員の場合は本来、確定申告ではなく年末調整で所得税の申請をしますが、ふるさと納税は年末調整で申請できないため、ワンストップ特例制度の申請か確定申告を選ぶ必要があります。ワンストップ特例制度の申請は確定申告と比べて簡易的に手続きできるためおすすめの方法です。
ふるさと納税の10月からの変更点は2つ
総務省は10月1日よりふるさと納税のルールを変更しました。詳しく解説していきます。
「経費まで含めて5割ルール」の厳格化
ふるさと納税はこれまでも下記のルールが設けられていました。
・発送などの経費まで含めて寄付額の5割以下
今回はこの中の、「発送などの経費まで含めて寄付額の5割以下」というルールが厳格化されました。
これまであったルールで既に決められていた内容ですが、ふるさと納税の募集経費に含まれていない費用が、自治体の負担で増えてしまっていることが明らかになったため、厳格化されることとなりました。
具体的には、ふるさと納税を宣伝するポータルサイトに支払う手数料、寄付金に関する受領証の発行費用、ワンストップ申請に関する申請書の受付事務費用などがこれまで募集費用に含まれていませんでした。10月からはこれらの費用を含めて5割以下に調整することが義務付けられました。
出典:[10月施行]ふるさと納税 制度改正実施 | 自由民主党
地場産品基準の厳格化
これまでも返礼品は地元産品のみというルールを定めてきましたが、10月からはさらに厳格化されています。これまでのルールだと、お肉を輸入し熟成させたり、お米を県外から仕入れ精米して返礼品としている自治体がありました。
10月からは、お肉やお米などを返礼品とする場合、産地・加工を同一都道府県にするというルールに変更されています。
ふるさと納税のルールが変更された理由
「発送などの経費まで含めて寄付額の5割以下」というルールが厳格化されたのは、ふるさと納税の募集経費に含まれていない経費が自治体で膨らんでしまっていることが理由です。
元々ふるさと納税は地方創生に貢献することが目的なので、地方の負担を減らすため、当然の厳格化とも考えられます。
「地場産品基準」ルールが厳格化された理由は、上記の理由と同じように、「返礼品の競争化により本来のふるさと納税の目的が達成できない状態」を修正するためだと考えられます。地方経済の活性化を狙い、返礼品は地場産品に限定されていましたが、輸入したお肉を熟成させたり、県外・海外から取り入れたお米を精米して返礼品としている自治体が増えてきていました。
総務省は「地場産品基準」の基本的な考え方として次のように発表しています。
「返礼品等そのものが地域における雇用の創出や新たな地域資源の発掘等、当該地域経済の活性化に寄与するものであることが必要である」
今回のルール厳格化は、「返礼品における基本的な考え方の基準」に修正しなおす目的があると思われます。
ふるさと納税のルール変更が利用者にもたらす影響
ルールの変更により、いくつかの可能性が考えられます。
寄付金額の引き上げ
5割ルールの厳格化により、寄付金額が引き上げられる可能性があります。これまで経費に含まれていなかったポータルサイトの手数料や寄付金受領証の発行にかかる費用などが経費に加えられることによって、返礼品に使える金額が少なくなってしまいます。
その少なくなってしまった分を補うために、寄付金額の引き上げがされる可能性があります。
返礼品の量が減る
5割ルールの厳格化により返礼品の量が減る可能性があります。寄付金額を引き上げない場合は、経費の割合が増えた分返礼品に使える金額が少なくなってしまうので、返礼品の内容量が減る可能性があります。
返礼品の種類が減る
地場産品ルールの厳格化により、熟成肉やお米の返礼品が減っています。これまで地元でお肉やお米が取れない地域でも、熟成や精米を行えば返礼品として贈ることができました。しかし地場産品ルールが厳格化されたことで、お肉やお米の産地でない地域は返礼品として出すことができなくなります。
まとめ
自治体からは今回のルール変更で、「特産品の多い豊かな自治体とそうでない自治体の地域格差が広がる」という懸念の声もあります。
利用者に与える影響は「寄付金額の引き上げ・返礼品の量が減る・返礼品の種類が減る」などが考えられますが、ふるさと納税は本来「ふるさとや地域応援のため」という目的があります。返礼品目的でなく、本来の地域応援という目的のためのルール変更ということを理解することが重要です。
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