日本銀行(日銀)は、10月30日から31日にかけて金融政策決定会合を開き、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール:以降、YCC)の運用を見直し、事実上の上限としていた1%を目途として一定程度超えることを許容する方針を決定しました。
植田総裁、投機的な金利上昇への対応策を示唆!マイナス金利政策も継続か
2016年9月に日銀が導入したYCCとは、短期金利をマイナス1%に誘導する一方で、長期国債を買い入れ利回り(金利)0%に誘導する政策です。詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
前述の話に戻すと、日銀のYCC修正は、3カ月前の7月の会合での“柔軟化”に続くものであり、市場の長期金利の上昇が想定以上だったことが影響していると見られています。この決定により、長期金利の事実上の上限である1.0%を超えることが認められることになります。
また、同日公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、2023年度と2024年度の消費者物価指数(コアCPI)の前年比上昇率の見通しをそれぞれ2.8%に上方修正しました。2025年度も1.7%と小幅に引き上げとなる見込みです。賃上げの持続性にも触れ、2025年度にかけて賃金と物価の好循環の実現を示唆する表現も盛り込むとしています。
そして15時半より行われた記者会見で植田和男日銀総裁は、YCCの運用をさらに柔軟化すると述べ、不確実性の高い状況では柔軟性を高めておくことが適当であると説明しました。長期金利を1%以下に強く抑え込むことによる副作用の懸念を示し、今後は金利の水準や変化のスピードに応じて機動的に対応していくとしています。
また、経済の実力と関係のない投機的な金利上昇には機動的なオペで対応するとしつつ、何が投機的な動きかを判断することの難しさも認めました。このタイミングで動いたことについては、金利上昇圧力が高まる前に、市場に先んじて動く意図があったと明かしています。
物価目標実現を判断するうえで「来期の春季労使交渉が物価目標の実現において重要なポイント」であるとし、賃金上昇がサービス価格を引き上げる循環を確認していく姿勢を強調しました。
為替相場については、政府と緊密に連携しつつ注視していき、為替の動きが物価見通しを大きく変える場合には政策変更に結びつく可能性があるとしています。