これから予防接種を会社として実施する際に、予防接種は経費になるのかどうか担当者としては気になるはずです。結論から言えば、予防接種は経費にすることが可能です。ただし条件があります。
この記事では予防接種が経費にできる基準と手続きの方法、さらには経費にする際の注意点について解説します。
そもそも経費とは
経費とは事業で収益を上げるために使用した費用のことをいいます。経費は、企業の収益を最大化するために必要な支出です。たとえば商品を製造するために原材料を購入する費用や、広告宣伝費などがあります。これらの費用は、企業の活動や業績向上に直結しています。それ以外にも、業務上必要となる出張費や飲食代も経費です。
また経費は税務上でも重要な要素です。企業は経費を適切に計上することで、所得税や法人税の節税効果を得られます。ただし経費計上にはルールや制約があり、不正な経費計上は法的な問題を引き起こす可能性があります。
経費を効果的に管理することは、企業の健全な経営に不可欠です。経費の見直しや削減策を検討することで、コスト削減や収益向上につなげられます。しかし経費削減には注意が必要で、必要な業務や品質に影響を与えることなく行わなければなりません。
今回は予防接種が事業にとって必要なものかどうかが焦点となるわけです。
予防接種の経費処理の要件とは?
ではどのような場合に予防接種は経費として処理できるのでしょうか。ここでは3つのポイントについて解説します。
業務上で必要であること
業務上で必要な予防接種は経費の対象となります。たとえば事業展開をする国に入国するために必要な予防接種は経費処理が可能です。他にも病院に出入りする営業担当者が、会社の指示で全員インフルエンザの予防接種を受けた場合は経費にできます。
会社員を対象とすること
従業員全員が受けられることが経費として計上できる条件のひとつです。特定の従業員のみを対象とした場合は、経費として処理ができません。たとえば役員のみインフルエンザの予防接種を受けるといった場合は経費にならないわけです。
また社員が平等に予防接種を受けられると言っても、業務として海外赴任した人と海外旅行で海外に行った人とでは違いがあります。前者は予防接種を経費として処理できますが、後者は経費にできません。
またあくまでも業務で必要とするものなので、個人的に予防接種を受けたものは経費の対象から外れます。たとえば営業担当者がインフルエンザの予防接種を個人的に受けて、会社に経費申請しても認められません。
また全社員対象であっても、体調不良で接種できない社員がいる場合もあります。その場合でも全社員を対象にして接種する機会を与えているわけですから、経費にする要件を満たしています。
高額でないこと
予防接種は保険がきかないので全額自己負担です。そのため高額になることはないため、経費として認められるのが一般的です。ただし通常の予防接種よりも補助費用を高くしてしまうと、所得税に算入される可能性があるので注意しましょう。
予防接種を経費として処理する方法の手続き
予防接種を経費にする場合、以下のような手続きが必要です。
予防接種の費用を経費として処理する勘定科目は
予防接種は福利厚生費に計上します。福利厚生費は従業員に対する給与以外のサービスの対価を処理する際に使うものです。企業が従業員に対して提供する福利厚生のための費用です。従業員の生活や労働環境の向上、仕事とプライベートの調和を図るために、企業がさまざまな福利厚生制度を提供しています。
福利厚生費は、企業が従業員の働きやすさや生活の質を向上させるために必要な費用です。従業員が安心して働ける環境を整えることは、企業にとっても大切な投資です。福利厚生費を充実させることで、従業員のモチベーションや生産性の向上が期待できます。
また福利厚生費は企業の社会的責任とも言えます。従業員が健康で安定した生活を送れれば、企業の信頼性や社会的評価も高まるでしょう。福利厚生費の充実は、企業の持続的な成長や発展にもつながる重要な要素になります。
経費としての精算方法は
会社で管理して会社が支払うのか、従業員が個別に立て替えて経費精算を行うのかは会社によって判断する必要があります。
会社の規模が大きければ医者を会社に呼んで集団予防接種をすることも可能です。会社だけでなく、従業員にとっても負担の少ない方法が望まれます。
予防接種の費用を経費として処理する際の注意点
予防接種の費用を経費として処理する際には、どのような点に注意すべきでしょうか。ここでは2つのポイントを紹介します。
希望する従業員全員に補助をする
前述したように、従業員全員に予防接種を行わずに予防接種の費用を補助すると給与となってしまいます。給与とした場合は、所得税などの税金もかかってしまいます。
なお、予防接種の費用は全額を補助する必要はありません。一部のみ補助する場合でも経費として処理できます。ただし全額補助ではないと接種率があがらないという面があるので、従業員全員に予防接種を行ってほしい場合は、全額補助にした方が良いでしょう。
派遣社員は派遣先の経費で処理する
派遣社員の予防接種は派遣先の経費で処理する必要があります。出向社員も出向先の経費で処理しなければなりません。ただし特別な取り決めがある場合は別となります。派遣社員の取扱いについては、派遣元と協議しておきましょう。
予防接種にも消費税はかかる
予防接種には消費税がかかりますか?という疑問があります。実際のところ、予防接種には消費税がかかります。
医療機関や診療所で行われる予防接種には消費税がかかります。医療サービスが提供されるため、医療に関連するサービスには消費税が課せられるからです。
しかし消費税がかからないケースもたしかにあります。そもそも接種費用が全額公費となっており無料で接種できるワクチンには、消費税はかかりません。当然ですが無料のものには消費税がかからない仕組みだからです。
法人は予防接種の補助を積極的に行うべきか
ワクチンや予防接種は、疾病の予防や拡散を防ぐために非常に重要な役割を果たしています。法人が従業員や関係者の健康を守るために、ワクチンや予防接種の補助を積極的に行うべきかについて考えてみましょう。
まずワクチンや予防接種の補助を行うことによって、従業員や関係者の健康状態を向上させられます。疾病の予防は、個人の健康だけでなく、企業や組織の生産性や業績にも直結します。従業員や関係者が病気にかかるリスクが低下すれば、仕事に集中できるだけでなく、休暇や病気休業の減少にもつながるでしょう。
またワクチンや予防接種の補助は、企業のイメージや信頼性を高める効果もあります。従業員や関係者は、自分たちの健康を大切にしてくれる企業に所属していると感じることで、働く意欲やモチベーションが向上するでしょう。また外部の人々からも、社会的責任を果たしている企業として好意的に評価されることがあります。
さらにワクチンや予防接種の補助は、感染症の拡大を防ぐためにも重要です。従業員や関係者が予防接種を受けることで、感染症のリスクを低下させられます。これにより、職場や社会全体での感染リスクを抑えられ、大規模な感染拡大を防げます。
以上の理由から、法人はワクチンや予防接種の補助を積極的に行うことが望ましいと言えるでしょう。従業員や関係者の健康維持や企業のイメージ向上、感染症の予防など、多くのメリットがあります。企業は、社会的責任を果たす一環として、ワクチンや予防接種の補助を検討するべきです。
まとめ
ここまで予防接種が経費にできる基準と処理方法、さらには処理する際の注意点について解説してきました。予防接種は基準を満たせば経費として処理できます。経費にできる基準をもとに、経費になる予防接種について従業員にも伝えるようにしていきましょう。