グローバルサウスとは、主に発展途上国や経済新興国の意味で用いられることが多いです。明確な定義はありませんが「開発途上国」「第三世界」と似たニュアンス、もしくは同じ意味で使われることもあります。日本政府は2023年10月にグローバルサウス諸国との連携強化推進会議を開催し、協力の強化やODA(政府開発援助)の活用などが言及されました。
近年、グローバルサウスに含まれるインドの投資信託も人気があります。
今回はグローバルサウスに該当する国や地域と抱える問題、投資対象としてのメリット・デメリット、日本との関係について解説していきます。
グローバルサウスとは
グローバルサウスはどこ?該当する国や地域
「グローバルサウス(Global South)」に明確な定義はありませんが主に発展途上国や経済新興国を意味し、地域はアジア・中東・アフリカ・ラテンアメリカなどです。
北半球の先進国と対比して「グルーバルサウス」という名称が使われており、新興国で形成する国連の枠組み「G77」を表すこともあります。
出典:世界を見る眼(グローバルサウスと世界)第1回 グローバルサウスの経済的影響力 世界経済の『第三の極』をどうとらえるか|独立行政法人日本貿易振興機構 アジア経済研究所
「開発途上国」「第三世界」という言葉もありますが、どのような違いがあるのでしょうか?
第三世界・・・日本やアメリカなど資本主義の第一世界、旧ソ連など社会主義・共産主義陣営の第二世界のどちらにも属さない非同盟諸国
開発途上国と第三世界は、どちらもグローバルサウスと同じ意味合いもしくは似たニュアンスで使われることが多いです。
グローバルサウスに明確な定義がないため、中国が含まれていることもあれば含まれていないこともあります。
なお2023年1月の参院本会議で、岸田文雄首相は「グローバルサウス」について「中国は含めて(いるとは)考えていない」と述べています。
日本は2023年10月にグローバルサウス諸国との連携強化推進会議を開催
内閣府は2023年10月17日に外務省及び経済産業省の協力を得て、グローバルサウス諸国との連携強化推進会議を開催しました。
会議ではグローバルサウスが自然災害や紛争、難民問題などの問題を抱えるとともに高い経済成長が期待されることから、ODA(政府開発援助)の効果的・戦略的活用といった具体的な協力の強化を図るという資料が配付されました。
岸田内閣総理大臣は「グローバルサウスと呼ばれる新興国、途上国との連携を強化し、それらの国々をパートナーとしていくことが、我が国の経済安全保障面を含めた国益にかなうとともに、国際社会における分断と対立の動きを協調へと導くものと考えている」と述べました。
以下のようにODAの活用にも触れています。
●グローバルサウス諸国との間で自由で開かれたインド太平洋のための新たなプランの具体化に向け、グローバルサウス諸国との産業協力策の強化、効果的・戦略的なODA活用などによる脆弱な国々への支援と協力のための枠組みづくりを推進し、グローバルサウス諸国とともに繁栄を目指していく
●こうした考え方の下、関係省庁が連携して対応することとし、早急に取り組むべき施策を経済対策に盛り込むとともに、今後、本会議を通じて議論を深化させ、来春をめどにグローバルサウス諸国との連携に向けた方針を取りまとめていただきたい
出典:グローバルサウス諸国との連携強化推進会議(第1回) 議事要旨|内閣官房
2023年4月16~18日に長野県で開催されたG7長野県軽井沢外相会合では、日本の林外務大臣を含むG7各国の外相及び欧州対外活動庁(EEAS)事務次長(EU上級代表の代理)が出席しました。
会合では、グローバルサウスへの関与強化の重要性を再確認しG7の連携を強化すること、中東・中央アジア・アフリカ・中南米といった国々との協力を強化していくことで意見が一致しています。
グローバルサウスの抱える問題と日本の関係
2023年10月の連携強化推進会議連携会議では、グローバルサウスの抱える問題点が指摘されました。
グローバルサウスは、自然災害や気候変動対策などの環境問題、紛争やテロなど政情不安の問題、人権・貧困・衛生問題やインフラの未整備など多くの課題を抱えています。
一方で、重要鉱物のサプライチェーンの多くはグローバルサウスに存在しているという実情があります。
出典:「グローバルサウス諸国との連携強化推進会議(第1回)グローバルサウス」との連携強化について(外務省・経済産業省提出資料)|内閣官房
グローバルサウスと日本の連携を強化することで、リチウムやレアアースなど重要鉱物の供給確保が期待できます。
インド株の投資信託が人気!グローバルサウスに投資するメリット・デメリット
グローバルサウスに投資するメリット・デメリットとは?
近年インド株が好調で、インドを代表するSENSEX指数は上昇傾向にあります。
出典:TradingView
2023年9月におけるネット証券の投信積立契約件数ランキングでは、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」が1位、2位は「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」ですが4位は「iFreeNEXT インド株インデックス」がランクインです。
インド株式が伸びている背景には、まず新興国の中でもファンダメンタルズ(※)が良好な点が挙げられます。加えて2023年4月には、人口が中国を抜き世界1位のおよそ14億2860万人と推定されています。
※ファンダメンタルズ:国や企業などの経済状況を示す基礎的な要件。国や地域でいうと、経済成長率、物価上昇率、失業率などが該当する。
株価が不安定な中国からインドへ分散して投資する人もいることから、需要が株価を押し上げていると考えられます。
インドに限らずグローバルサウスは経済新興国ですので、株式・投資信託などは高リスク・高リターンの商品が多いです。
経済の発展・成長により高いリターンが期待できるというメリットがありますが、リターンの振れ幅や不確実性(リスク)も高く、先進国と比べて安定性は劣る傾向がある点がデメリットです。
ハイリスク・ハイリターンの投資となりますので、自身で情報を収集しながら検討しましょう。
2050年には世界の人口の3分の2がグローバルサウスになる?
株式会社三菱総合研究所の「ウクライナ危機で存在感増す『グローバルサウス』」では、「2050年にはグローバルサウスで全世界の3分の2を占める予測」と記載されています。
中国を含めたG77としてグローバルサウスを見た場合、名目GDPは2000年から2020年に世界の経済規模は2.5倍に拡大しました。一方でG7(先進7カ国)のシェアは低下しています。
出典:世界を見る眼(グローバルサウスと世界)第1回 グローバルサウスの経済的影響力 世界経済の『第三の極』をどうとらえるか|独立行政法人日本貿易振興機構 アジア経済研究所
IDE-GSMチームによる2050年の推計では、G7のシェアは31.7%に減少する見込みです。一方で、G77のシェアは22.2%に増加すると予測されています。
グローバルサウスと日本
岸田首相はODA(政府開発援助)の活用、経済ビジネス活動を進めることを示唆
岸田首相は2023年10月の第1回グローバルサウス諸国との連携強化推進会議で、政府開発援助を活用すること、日本企業の現地展開を加速するといった経済ビジネス活動の深化を進めていくことを述べました。
加えて「来春をめどにグローバルサウス諸国との連携に向けた方針を取りまとめていただきたい」と言及していたことから、2024年の春に動きがあるかもしれません。
まとめ
グローバルサウスの人口は今後伸びていくことが予測され、経済面でも期待が高まっています。今回の連携強化推進会議の内容や投資対象としてのメリット・デメリットを知り、今後の動向に注目していきましょう。