芸能ニュースには、“離婚ネタ”が尽きません。とはいえ、日本の年間の離婚件数は、約21万件。およそ2分半に1件のペースで離婚届が提出されている計算になるのです。そこには、けして「他人事」とは言えない現実がありました。ところで、いざ離婚となれば、財産分与をはじめとして、いろいろな形でお金が動くことになります。その際、税金はかかってくるのでしょうか? わかりやすくまとめました。
「分けるお金」には、基本的に税金はかからない
「離婚したいと思ったら、その後の生活のことも考えて、しっかり財産を分けてもらいましょう」。雑誌やネットで、よくそんな記事を目にします。もらう(渡す)財産そのものが大事であることは言うまでもありませんが、それによって税金が発生することもあるのを、ご存知でしょうか? そのことを忘れていて、「しまった!」ということにならないよう、注意が必要です。
まず、「もらった財産」から考えてみましょう。通常、年間110万円を超える財産をもらったら、贈与税がかかります。言うまでもなく、夫婦間の贈与であっても、同じこと。では、離婚の際に分けて、受け取った財産にも贈与税がかかるのでしょうか? 答えは、「通常はかかりません」です。
離婚による財産分与は、相手に対する贈与ではなく、「夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたものと考えられる」(国税庁ホームページ)からです。普通に財産を分ける場合には、税金を気にかける必要はありません。
ただし、次のような場合には、贈与税の対象になりますから、気を付けなくてはなりません。
- ①分与された財産の額が、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮しても、なお多すぎる場合→その多すぎる部分に贈与税がかかることになります。
あくまでも原則論ですが、仮に夫婦の共有財産(※1)が3000万円の場合、「1/2の原則」(※2)に従って、離婚した妻に1500万円渡すのなら、贈与税は問題にならないでしょう。しかし、特に「考慮すべき事情」もなく2000万円を渡したら、「原則」を超える500万円に贈与税が課税される可能性があるわけです。
- ②離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合→離婚によってもらった財産すべてに贈与税がかかります。「偽装離婚」による「脱税」が認められないのは、説明するまでもありません。
夫婦が婚姻中に共同で築いた財産のこと。
不動産でもらうときには、税金に注意
財産を、現金ではなく「不動産」の形でもらうこともあるでしょう。その場合に、もらう側に関係しそうな税金には、「登録免許税」、「不動産取得税」、「固定資産税」があります。
離婚の財産分与に伴う不動産の名義変更には、「固定資産評価額×2%」の登録免許税がかかります。仮に評価額2000万円の不動産をもらうなら、40万円のキャッシュが必要。どちらが工面するのかは、話し合いで明確にしておくべきでしょう。「もったいないから」と名義変更せずにおくと、トラブルの原因になるかもしれません。
不動産を持てば、当然、所有者が固定資産税を負担しなくてはなりません。支払うのは、1月1日時点の所有者になりますが、「離婚した年」の税金をどうするのか(どちらかが全額払うのか、分割するのか)も、しっかり決めておく必要があります。
一方、不動産の所有権を得たときに課税される不動産取得税については、財産分与として、合理的な金額の範囲内で受け取るのなら、かかることはありません。現金を分けるのと同じく、「共有財産の精算」と考えられるからです。
いま説明してきたのは、「もらう側の税金」ですが、不動産については、「渡す側」にも税金の発生する可能性がありますから、やはり要注意です。一般に、不動産を売却したりして利益があった場合、それは「譲渡所得」として確定申告、納税する必要があります。離婚による財産分与も、その例外ではないのです。
ただし、譲渡所得は不動産の「売却額」ではなく、ごく簡単に言えば「売った値段-買った値段」のこと。それが「赤字」であれば、税金は発生しません。
「養育費」、「慰謝料」は?
離婚の際、子どもがいたら「養育費」が、どちらか一方の落ち度が原因になった場合には、相手に「慰謝料」が支払われることもあります。著名人の離婚でも、世間の関心が集まるところですが、これらに税金は課せられるのでしょうか? これも答えは、「通常はかからない」ということになります。
慰謝料は、例えば「夫の不倫で精神的苦痛を受けた妻」に対して支払われる損害賠償金ですから、普通は非課税です。ただし、金額が一般的な基準に照らしてあまりにも高額だと考えられる場合には、その基準を超えた部分について贈与税が課税される可能性はあります。
養育費は、子どもの生活費、教育費などとして扶養義務に基づいて支払われるものですから、同様に原則として非課税です。ただ、これについても、必要額を「毎月いくら」という形で渡すのではなく、一括で支払いを行うと、「その時点で必要な金額の限度」を超えたものとみなされ、贈与税の対象とされることがあります。
ここは‟痛し痒し“で、よく問題になる「途中で養育費が支払われなくなる」リスクを考えれば、将来の分も含めて一度にもらえるのならば、そのほうが安心です。この点については、必ずしも「一括払い=贈与税が発生」というわけではありません。当事者同士がよく話し合うとともに、迷ったら、税に詳しいプロのアドバイスを受けてみてはいかがでしょう。
まとめ
離婚に関連するマネーにも、税金のかかることがあります。勘違いをしていると、想定外の出費を迫られる危険性も。とはいえ、さまざまな感情も交錯するなかで、やるべきことが山積しているのが、「離婚の現場」でしょう。必要に応じて、専門家のサポートを受けるのも、1つの方法です。