総務省は12月18日に定形郵便物などの料金を84円から110円へ値上げする方向で調整を進めていることを明らかにしました。
定形郵便物の値上げは、2024年の秋ごろからの実施が予定されています。消費税増税を除いた郵便料金の値上げは1994年以来となり、実現すればおよそ30年ぶりとなります。
値上げの背景には「デジタル化」による郵便事業の赤字が要因
今回、値上げが検討されている郵便物は、以下のとおりです。
∟84円から110円に値上げ
●定形郵便物(50g以内)
∟94円から110円に値上げ
●はがき
∟63円から85円に値上げ
定形郵便物(25g以内)の値上げ率は31%と、これまで実施された値上げの中で2番目に高く、今回の値上げは、大幅な料金改定だと言えます。
また、A4サイズで重さ4㎏までの郵送に対応している「レターパック」や、通常よりも早く届けてくれる「速達」について、料金の値上げは検討されているものの、値上げ率は抑える方針であるとのことです。他にも、「現金書留」の料金は、2023年10月に435円から480円に値上げされており、今回の値上げからは除外され、現状維持となります。
そして、総務省が郵便物の値上げをした理由には、日本郵便の郵便事業に大幅な赤字が見込まれていることにあります。
日本郵便は、現行料金のまま経営を維持すると、4年後には赤字額がおよそ3,000億円まで膨らむことが想定されています。郵便物の利用は、2001年度をピークに毎年3%ほど減少しており、ピーク時には263億通あった郵便物も2022年度には144億通と、およそ半減しています。
郵便物の利用が減少している背景は、以下のとおりです。
- 企業のペーパーレス化
- 企業・個人の各種手続きのデジタル化
- インターネットやSNSなどオンライン上でのやり取りの普及
日本郵便は、企業に対して年賀状の利用を推奨したり、若者向けにグッズを販売したりなど、郵便事業の回復に取り組んでいますが、デジタル化によるペーパーレスの動きは強く、2028年度にはさらに2割減少とした115億通になる可能性もあるとされています。
2024年秋ごろに想定通りの値上げが実現したとしても、2026年度には再び赤字になると見込まれています。
郵便サービスを巡っては2021年10月に土曜日の普通郵便などの配達を廃止したことで配達日数が延びるなど、サービス低下も指摘されていました。一企業として郵便局員の負担軽減や経営の効率化を図りながら、郵便事業を維持するという難しい課題にどう対処するのかが注目されます。