コミックマーケット(以下、コミケ)に出店して、収入を得ている人も多いかと思います。では、コミケの出店で収入を得たら確定申告は必要なのでしょうか。実は、コミケの出店で確定申告が必要な人と不要な人がいます。
ただし、どちらであっても、収入金額や経費の金額を把握しておく必要があります。ここでは、コミケと確定申告の関係について解説します。
コミケに出店したら確定申告は必要?
はじめに、コミケに出店したら確定申告が必要かどうかを見ていきましょう。
そもそも確定申告とは
税金には、国や自治体が納付額を決めて、納税者に通知する「賦課課税制度」と納税者が自分で税額を計算して納める「申告納税制度」の2つがあります。固定資産税などの税金は、賦課課税制度を採用しています。
一方、所得税は、納税者が自分で所得金額や納税金額を計算し、納税を行う申告納税制度を採用しています。「確定申告」とは、納税者が自分で所得金額や納税金額を計算し、申告することです。
所得税では、税の平等性などを担保する必要があることから、収入の種類や性格により、収入を10の所得区分に分けて、所得金額や税額を計算します。個人事業主の「事業所得」や会社員の「給与所得」などが、所得区分の代表的なものです。
1年間に収入があった個人は原則、確定申告をする必要があります。ただし、給与所得の会社員は、勤務先で年末調整を受けることにより税金の精算を行うため、確定申告は不要です。
このように、所得区分の違いなどにより、税金の計算方法や確定申告の有無なども異なるため、注意が必要です。
コミケの出店で確定申告が不要な場合
1年間に収入があった個人は原則、確定申告をする必要があります。しかし、一定の基準を満たす場合には、確定申告が不要となることがあります。
コミケの出店で確定申告が不要な代表的なケースとして「赤字の場合」と「納める税金がない場合」の2つがあります。それぞれについて、見ていきましょう。
・赤字の場合
赤字とは、所得(利益)がマイナスの状態のことです。コミケの出店で赤字になる場合とは、コミケの売上よりも印刷代などの経費が大きくなることを指します。コミケの出店に関して、1年間の収支が赤字の場合は、そもそも税金を納める必要がないため、確定申告は不要です。
・納める税金がない場合
納める税金がない場合も、確定申告は不要です。上述した赤字の場合も、もちろん納める税金はありません。しかし、黒字であっても納める税金がない場合があります。それは、コミケの出店の1年間の黒字よりも、各種控除金額が大きい場合です。
所得税では、個人の状況に応じて、基礎控除や扶養控除、生命保険料控除など、さまざまな控除が用意されています。控除の金額がコミケの利益よりも大きくなれば、納める税金はありません。
例えば、コミケの収入100万円、経費80万円、所得控除40万円だった場合、コミケの所得金額は収入100万円-経費80万円=20万円となります。所得控除が40万円あるため、税金の対象となる所得金額は、所得金額20万円-所得控除40万円=0円となり、税金はかかりません。
・会社員(勤務先1つ)で副業のコミケ収入がある場合
会社員が副業でコミケ出店をしていることも多いです。この場合、コミケ出店の副業の所得金額が20万円以下の場合は、黒字であっても確定申告は不要です。会社員は、年末調整をするため原則、確定申告は不要です。
確定申告が不要なのに、会社員が副業のため、確定申告をする必要が増えれば、税務署側にも大きな負担がかかります。そこで、所得金額20万円と基準を設け、それを超えなければ確定申告不要としています。
ここで注意したいのが、20万円基準は、収入金額ではなく、「所得金額」ということです。コミケ出店で、売上-経費で計算した所得金額が20万円以下の場合は、確定申告不要です。
コミケ出店の確定申告で経費になるものとは
コミケ出店の確定申告で重要となるのが、経費の金額です。経費の金額により、納める税金の金額はもちろんのこと、確定申告が必要かどうかにも影響を与えます。
ここでは、コミケ出店の確定申告において、どのようなものが経費になるか見ていきましょう。
コミケ出店の所得は事業所得か雑所得
所得税では収入の種類や性格により、収入を10の所得区分に分けて、所得金額や税額を計算します。では、コミケ出店の所得は、何所得になるのでしょうか。コミケ出店の所得は「事業所得」または「雑所得」になります。
事業所得とは、コミケ出店を事業としている場合に該当する所得区分です。事業とは、独立して、また継続・反復して行っている営業行為のことです。雑所得とは、そのほかの所得区分に該当しない所得区分のことです。
簡単にいうと、コミケの出店を本業としている場合は「事業所得」に該当します。一方、1回だけのように、継続・反復せずに副業としてコミケの出店を行っている場合は「雑所得」に該当します。事業所得も雑所得も、所得金額の計算式は次のようになります。
事業所得の場合は、青色申告の場合、青色申告特別控除が使える、赤字を翌年以降3年間繰り越すことができるなどの特典があります。
事業所得も雑所得も、経費の金額が大きくなればなるほど、所得金額は小さくなり、納める税額が少なくなります。そのため、経費にできるものを、忘れずに経費にすることが重要です。
コミケ出店の確定申告で経費になるもの
コミケ出店の確定申告で経費になるものは、コミケの収入を得るために必要な支出です。
その支出が、経費になるかどうか不明な場合は、コミケの収入を得るために必要かどうかで判断します。コミケ出店の確定申告で経費になるものには、次のものがあります。
文房具、画材代
同人誌の印刷代
同人誌を作成するための資料や書籍の購入費用 など
・コミケ出店のための費用
コミケ出店費(会場費)
コミケ会場への交通費やホテル代
コミケ会場などへの搬入搬出代
コミケ会場で使うポスター
配布品の商品代 など
・作業場の費用
作業場の家賃
作業場の電気代やガス代、水道代
インターネット代 など
・その他
同業者との飲食代
差し入れなど
コミケの出店で確定申告をしないとどうなる?
原則、コミケの出店で所得があれば、確定申告が必要です。では、コミケの出店で確定申告が必要な場合に、確定申告をしなければどうなるのでしょうか。確定申告が必要な場合で、確定申告をしなかったことがわかれば、延滞税や無申告加算税などのペナルティがあります。
延滞税とは、納期限より後に税金を納めることへのペナルティです、延滞税の金額は、延滞税特例基準割合や納税までの期間などを基に計算されますが、理論上、最大で年14.6%になることがあります。
無申告加算税とは、無申告の場合に、通常の税金に加算されるペナルティのことです。
原則として、50万円までの部分は15%、50万円を超える部分は20%のペナルティとなります。
このほか、悪質の場合は、脱税とみなされ刑事罰に発展する可能性もあります。確定申告が必要な場合は、忘れずに確定申告しましょう。
まとめ
1年間に収入があった個人は原則、確定申告をする必要があります。しかし、一定の基準を満たす場合には、確定申告が不要となることがあります。
コミケに出店しても赤字の場合、あるいは納める税金がない場合は確定申告をする必要はありません。また、会社員の人で副業としてコミケに出店している場合、副業の所得金額が20万円以下なら、黒字でも確定申告は不要です。
コミケ出店にかかわる確定申告では、経費の金額に注意が必要です。経費の金額は、確定申告の必要・不要や納税額に影響を与えるからです。
その支出が経費になるかどうか不明な場合は、コミケの収入を得るために必要かどうかで判断します。経費になるものを忘れずに計上し、正しく、確定申告をしましょう。