日経平均株価が1990年のバブル全盛期に記録して以来、30年ぶりに3万円を超えたというニュースが流れ驚いた方もいるのではないでしょうか。平成バブルの復活といわれる「令和バブル」ですが、あまり好景気を実感できないという声もあります。今回は「平成バブル」が起こった原因と今後の推移について解説していきます。
「令和バブル」と呼ばれる株価上昇はなぜ起こったのか?
平成バブルを超える株価の上昇
日銀が継続する「超低金利政策」いわゆるマイナス金利の影響もあり、日経平均株価が順調に上昇を続け、2023年にはついにバブル全盛期以来の3万円超えまで到達しました。株価が低迷していた2011年当時の最安値8,455.35円から比べると実に約4倍も株価が上昇したことになります。
2011年当時の日本経済といえば、歴史的な円高により1ドル=75円水準まで為替が推移していた時期です。また、世界でもギリシャの経済危機を発端におこった欧州債務危機や、アメリカ国債の格付けが引き下げられるなど、経済面で大きな動きがあった年でもあります。
その後、安倍政権が打ち出した「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「民間投資の喚起」という経済対策3本柱、いわゆるアベノミクスにより株価は上昇を始めます。株価は上昇を続け2017年には2万円台、2023年には3万円台を回復するまでに至ったのです。
「令和バブル」の背景にあるもの
このように株価の上昇は2012年から始まったアベノミクスが発端です。2020年から始まったコロナショックにより世界的な経済危機が起こって金融市場が停滞し、日本の実質GDP(経済成長率)の伸び率もマイナス4.6%に落ち込むなど経済が停滞した時期もありました。
しかし、2023年日銀総裁に就任した植田総裁の「金融緩和政策の継続」決定により、株価上昇は再び加速します。アメリカFRB金利の引き上げや、ロシアのウクライナ侵攻といった国際的な要因も重なり、魅力が薄れた海外の市場から引き揚げられた投資資産が、低金利で資金調達がしやすい日本市場に流れ込み、その資金を元手として国内の株式や不動産が買われたことが原因の1つです。
2023年の下半期になって株価上昇は小康状態に入り、反転を始めてはいますが、以前として3万円台を維持しています。
「令和バブル」と「平成バブル」はどこが違うのか?
「平成バブル」が起こった原因とは?
「令和バブル」は「平成バブル」と違ってあまり好景気の実感がわかないという声を耳にすることがあります。では「令和バブル」と「平成バブル」の違いは何でしょうか。両者を比較しながら解説しましょう。まず、平成におこったバブルについて簡単に解説しましょう。
平成バブルは「不動産バブル」とも呼ばれ、株価や不動産価額が実際の価値以上に高騰したことで起こった実態のない好景気です。1985年のプラザ合意後にとられた金融緩和政策によって市場に流入した大量の資金は株式や不動産(土地)の購入に充てられます。「土地転がし」という言葉が聞かれるほど不動産売買が繰り返し行われ、不動産価額は上昇します。
価値の上がった不動産を担保に金融機関が追加融資を行い、その資金をまた株式や不動産の取得に投入する、といったサイクルで「平成バブル」は進行します。「平成バブル」の特徴は、好景気の波が首都圏にとどまらず全国的に広まったという点です。国内全体が好景気ムードに包まれ多くの人がその恩恵を受けることができたのが令和バブルとの違いでしょう。
「令和バブル」は「一極集中型バブル」
「令和バブル」もやはり、市場にあふれた投資資金が株式や不動産投資に流れたという点では平成バブルと類似する点があります。しかし、今回のバブルの特徴として挙げられるのが流入した投資資金の多くが海外からのものであるということでしょう。
発端は新型コロナウイルス感染症の蔓延です。コロナにより大きなダメージを受けた各国は、経済を立て直すため大量の貨幣を市場に流通させ市場の活性化を図ろうとします。しかし、先にも述べたFRB金利の引き上げやウクライナ侵攻等による市場不安から、行き場を失った投資資金が日本の市場に流れてきたことで起こったのが「令和バブル」の大きな原因です。
しかし、令和バブルの特徴として挙げられるのが、その恩恵を受けられるのが投資を行っている一部の投資家、株式が買われている一部の企業といった「一極集中型」であるという点です。株式でいえば生成AIのようなハイテク株を中心とした上場株式、不動産でいえば首都圏を中心としたマンションへの投資といった感じです。
国内全体が好景気の恩恵を受けられた平成バブルと違い、令和バブルで恩恵を受けられるのは一部であることから、あまりバブルを感じないという声が聞かれる理由なのかもしれません。
「令和バブル」は今後どこに進むのか
バブルを後押しする政府の「超低金利政策」
黒田総裁の後任として、2023年日銀の総裁に就任した植田総裁が最初に打ち出したのが「現在の超低金利政策を継続すること」でした。コロナウイルスにより後退した日本経済を回復させるためにはダメージを受けた企業を立て直すことが先決であり、株価上昇を促す目的で超低金利政策を継続することにしたのです。
単純な市場原理ですが、借入金利が低ければ銀行から融資を受けやすくなりますので、市場に資金が流れやすくなります。市場に流れた資金で株式が買われれば株価が上昇し企業の立て直しを図ることも可能になり、実際に好業績を残す企業が増加しました。
業績が好調な企業が増えたことで植田総裁の目論見通り、その後株価は安定して上昇を続け平成バブル以来の3万円超えを果たすことになったのです。
インフレ抑制を目指すアメリカのFRB金利の引き上げやウクライナ侵攻など、外的要因が重なったこともありますが、気が付けば「令和バブル」と呼ばれるほど株価を高い水準で安定させることに成功しています。
政策転換によっては「令和バブル」崩壊も
日経平均株価が現在のような高水準を維持できている背景には、企業の業績が好調であることを海外の投資家が高く評価していることが挙げられます。しかし、これは将来の業績を見越して投資しているにすぎません。
現在、為替市場では歴史的な円安が進行中であり資源輸入国である日本にとって大きなダメージとなっています。原油を始めとした資源調達価格の上昇は製品単価に跳ね返り、最終的には消費者である私たちの生活に直接影響を与えるものです。実際、2023年に入ってから数多くの商品やサービス、電気料金といった公共料金までも値上げが続き家計を圧迫しているのが現状です。
円安を引き起こしている要因の1つが、超低金利政策により株式が買われ円が売られた結果、市場に流通する貨幣量が過剰になっていることが挙げられます。流通量が多ければ多いほど貨幣価値は下がりますので、円安に推移することになります。
もし仮に円安を抑制するため、日銀が金融引き締めに政策転換したとなれば現在の株高にブレーキがかかる可能性があります。バブルの名が示すとおり、実態のない株価上昇であるが故に崩壊してしまうと「平成バブル」のように一気に株価が崩壊してしまうリスクがあるのです。
まとめ
「令和バブル」は株式等の投資をしている方にとっては安定して恩恵を受けられるバブルであると言われています。日本やアメリカの金融政策の動向に注目しながら、資産運用の選択肢として株式等の運用をしてみるのも1つの選択ではないでしょうか。