海外FXにも税金はかかる!なぜ高いの?計算方法や確定申告の注意点とは | MONEYIZM
 

海外FXにも税金はかかる!なぜ高いの?計算方法や確定申告の注意点とは

海外のFX業者で取引をした場合でも、所得(≒利益)が一定額を超えると確定申告により国内で所得税などを納めなくてはいけません。国内で金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)または登録金融機関として認可を受けてない海外FX業者との取引による所得は「総合課税」で申告します。給与所得など他の所得と合計した金額を累進課税で計算するため、納税額が国内FXより高くなる事例が多いのです。今回は、海外FXと税金、国内FXとの課税方式の違い、確定申告が必要な人や注意点を解説していきます。

海外FXでも日本で税金はかかる!

海外FXで業者と取引をした場合でも、決済(利益確定)をすると日本で税金を納める必要があります。

海外FXは決済(利益確定)時に税金が課される

海外の口座でFX取引をしても、利益確定(決済)で取引が終了すると国内の課税対象です。
 

所得税法では、納税義務者となる個人を「居住者」「非居住者」に分類し、課税する所得の範囲を規定しています。
国内に住所がある、または現在まで引き続き1年以上居所がある個人は「居住者」です。
居住者または国内に恒久的施設を有する非居住者が、FX取引を含む一定の先物取引の差金等決済をした場合には、国内で所得が生じたとみなされます。
なお含み益があっても決済をしていない場合は、所得とはみなされません。
 

国内の金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)または登録金融機関でFX取引をして所得が生じた場合は「申告分離課税(税率20%・復興特別所得税を除く)」ですが、海外FX業者など上記以外の業者とのFX取引による所得は「総合課税」です。
総合課税は他の所得と合計し、所得が多くなるに従って段階的に高くなる「超過累進税率」で税率は以下のとおりです。

出典:国税庁「所得税の税率」

 

課税方式の違いに加え損失を翌年以降に繰り越せないことから、多くの場合海外FX口座の所得による税金は国内の金融商品取引業者とのFX取引で得た所得より高くなる傾向があります。
 

ただし、海外FX業者でも日本法人があり金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)または登録金融機関に該当する場合は、申告分離課税方式として他の所得と分けて申告が可能です。
 

認可されている証券会社・FX業者の例
申告分離課税方式で申告できる
認可されていない海外FX業者の例
総合課税で申告
サクソバンク証券株式会社
SBI FXトレード株式会社
GMOクリック証券株式会社
トレイダーズ証券株式会社
株式会社DMM.com証券など
XMTRADING
FXGTなど

 

給与所得者の場合、FX取引により年間20万円以上の所得が生じると確定申告をしなくてはいけません。

海外FXと国内FXの課税方式の違い

国内FXと海外FXの課税方式や所得の計算方法の違いを見ていきましょう。
 

海外FX 国内FX
該当する所得 雑所得 雑所得
課税方式 総合課税
国内の金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)または登録金融機関で取引をしていない
申告分離課税
国内の金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)または登録金融機関で取引をした
所得の計算方法 給与所得・事業所得など各種の所得金額を合計して所得税額を計算する 給与所得・事業所得など各種の所得金額を合計して所得税額を計算する
損益通算 他の「雑所得」との損益通算はできる
その他の所得(給与所得・事業所得等)と損益通算はできない
国内FXと海外FXの損益通算 できない
損失の繰り越し控除 できない 損失が生じた際には、一定の要件を満たした場合翌年以後3年間にわたり繰り越し「先物取引に係る雑所得等の金額」を上限として一定の方法により、差し引くことができる

 

損失の繰り越し控除は、国内で認可を受けたFX業者等との取引にあたる「先物取引に係る雑所得等の金額」の場合は適用されますが、日本で認可を受けていない海外FX業者には適用されません。
 

なお、ビットコインなど暗号資産の取引による利益も雑所得です。
同じ年度内で他の雑所得と損益通算は可能ですが、雑所得以外の所得との損益通算や繰り越し控除はできません。

海外FXで確定申告が必要となる人とは

確定申告は1月1日から12月31日までに生じた所得を、原則翌年の2月16日~3月15日に計算し確定させる手続きです。
 

給与所得者や扶養に入っている専業主婦(夫)・学生は、基本的に確定申告が不要です。しかしFX取引などにより、一定の所得を得ると確定申告をしなければいけません。

給与所得者で20万円超の利益が出た

給与所得者がFXにより20万円超の利益を出した場合、確定申告が必要です。

総収入額―必要経費=雑所得の金額

 

国内FXの場合は、確定申告書に「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付し、税務署に持参・郵送もしくは電子申告(e-Tax)を行います。
 

海外FXは給与所得などの金額を一定の方法により合計した総所得金額から、所得控除の合計額を控除し、残りの金額に税率を乗じて税額を算出します。

専業主婦(夫)で48万円超の利益が出た

専業主婦(夫)やアルバイトをしていない学生は、FX取引により所得税の基礎控除額・48万円を超える所得がある場合に確定申告をしなくてはいけません。
 

なおアルバイトなどをしている勤労学生は、合計所得金額が75万円以下の場合「勤労学生控除」として自身の所得から27万円が控除可能です。
 

しかしFXを含む「勤労に基づく所得以外」で所得が10万円を超えると勤労学生控除の対象外となりますので注意しましょう。
専業主婦(夫)や学生は、所得が一定額を超えると社会保険の扶養から外れてしまう点にも注意が必要です。
社会保険で扶養されている方は、一時的な増収であれば連続2年までは扶養内となります。

住民税の申告はどうなる?

住民税と所得税は税金の種類が異なりますので、所得税の確定申告が不要でも住民税申告をしなければいけないケースがあります。
 

所得税の確定申告をした方は、住民税の申告は不要です。
住民税申告をしないと、国民健康保険に加入している方は保険料が正しく算定されない、所得証明書や課税(非課税)証明書が発行できないなどのデメリットがあります。
 

そのため、可能な限り申告をすることが望ましいでしょう。
ただし、所得が43万円(住民税の基礎控除額)以下、かつ1月1日時点で住民登録地が同一の親族の扶養に入っている場合は住民税申告をする必要はありません。

海外FXの税金はなぜ高い?税金を計算する方法と確定申告の注意点

海外FXによる所得は総合課税である

海外FXによる所得は総合課税で、給与所得など一定の所得と通算して計算します。
例えばFXによる所得が100万円の場合、国内FXは分離して計算するため他の所得に関係なく税額は20万円(復興特別所得税を除く)です。※今回は経費については考慮せずに計算しています。
一方、給与所得が800万円・所得控除の合計が240万円の方が海外FXで100万円の所得を得た場合は納める所得税が892,500円、住民税はおよそ665,000円で税金は合計1,557,500円です。
 

海外FXによる所得がない場合の税額は所得税692,500円、住民税はおよそ565,000円で合計1,257,500円ですので、納める税金は30万円アップします。
 

一方、給与所得が300万円・所得控除の合計が120万円の方が海外FXで100万円の所得を得た場合は納める税金は192,500円上がります。分離課税方式(国内FXの取引)では20万円です。
所得が高くない人は、総合課税方式でも税金額に大きな差は生まれないでしょう。むしろ総合課税で申告すると納税額が低くなる場合もあります。

給与所得など他の所得と損益通算はできない

国内・海外問わずFXで損失が生じても、雑所得以外の所得とは損益通算ができません。
例えば不動産所得は損失があると他の所得と損益通算ができ、所得税額が減る可能性がありますがFXによる所得は損失があっても差し引くことが不可能です。

国内FXと海外FXの損益通算も不可能

国内FXと海外FXは課税方式が異なるため、損益通算は不可能です。

純損失の繰り越し控除ができない

海外FXは国内FXと異なり、損失を翌年以降に繰り越すことができません。
 

他の所得額によって海外FXによる所得の納税額は異なりますが、海外FXは上記のような理由で税金が高くなる傾向があります。

海外FXの税金をおさえる方法とは

海外FXの税金の負担をおさえるためには、どのような方法があるのでしょうか?

FXをするためにかかった費用を経費として計上する

雑所得の計算式は「総収入―経費」ですので、経費を計上すると所得を減らすことができます。
 

海外FXについて勉強するための書籍代、セミナーの受講料は経費です。
 

取引に使うPC・スマートフォンの代金やインターネットのプロバイダ料は全体に占める「FX取引に利用した割合」を按分して経費として計上できます。

「抜け道」は無い

海外FXによる所得は、一定額を超えると確定申告をする必要があります。
「抜け道」はありません。確定申告をしないと無申告加算税を科され、本来の納税額より多くの税金を支払わなくてはいけない可能性があります。

まとめ

海外FXにより一定の所得を得ると、総合課税で確定申告をしなくてはいけません。
所得が高い人は税金の負担がより重くなってしまいますので、経費とみなされるものは計上するなどの対策を行いましょう。

田中あさみ
大学在学中に2級FP技能士を取得、会社員を経て金融ライターとして独立。金融・投資・税金・各種制度・法律・不動産など難しいことを分かりやすく解説いたします。米国株・ETFなどを中心に資産運用中。CFP(R)の相続・事業承継に科目合格、現在も資格取得に向けて勉強中。