税金の使われる先はさまざまです。その中には子どもたちが通っている学校も含まれます。ではいったいどれくらいの税金が子どもたちのために使われているのでしょうか。またもし税金が無かった場合、学校運営はどうなってしまうのでしょうか。
この記事では子どもたちが通っている学校に税金はいくら使われているのか、またもし税金が無くなってしまった場合、どのようなことが起こるのかについて解説します。
税金は子どもが通う学校にも使われている!
税金はさまざまなところに使われていますが、当然、子どもが通う学校にも使われています。ではどれくらいの税金が学校に使われているのでしょうか。ここではその用途も含めて解説します。
どれくらいの税金が使われているか
どれくらいの税金が使われているかは、自治体によって異なります。たとえば東京都の場合、小学校6年間で約600万円、中学校3年間で約380万円、高校3年間で約320万円になります。
では国家レベルではどれぐらいの予算が割かれているのでしょうか。国の文教及び科学振興費は令和5年の当初予算で総額5兆4,158億円です。そのうち小中学校の運営のために使われている「義務教育費国庫負担金」は、1兆5,216億円で28.1%を占めます。
このように学校には税金が投入されており、税金が無ければ学校運営は成り立たないとも言えます。
学校でどのように税金は使われているか
では学校ではどのように税金が使われているのでしょうか。義務教育の学校では、税金はさまざまな目的に使われています。
まず学校の建設や改修のためです。新しい学校を建てたり、既存の学校を改善するためには、多額の費用がかかります。税金が使われることで、児童・生徒たちが安全で快適な学習環境で勉強できるようになるわけです。
また税金は教育環境の整備にも使われます。学校には教室や図書室、体育館などの施設が必要です。これらの施設は、子どもたちが多様な学びを経験し、健全な成長をするために欠かせません。税金が使われることで、これらの施設が整備され、充実した学校生活が送れるようになります。
さらに税金は教育の質を向上させるために使われます。教育には教材や教具が必須ですが、これらは費用が必要です。税金が使われることで、児童・生徒たちが最新の教材や教具を使って効果的な学習ができるようになります。
税金はまた、教職員の給与や福利厚生にも使われます。教師や職員は、子どもたちの教育を担当する重要な存在です。彼らが適切な報酬を受け取り、働きやすい環境で働けることは、教育の質を向上させるために欠かせません。
つまり税金は、義務教育の学校において、児童・生徒たちの学習環境や教育の質を向上させるために使われているわけです。
学校以外で教育に関係する機関で税金が使われているのは?
教育に関係する機関は学校以外にもあります。たとえば図書館や美術館、博物館などです。また大学も教育機関です。こちらも税金が使われています。ここではそれぞれ解説します。
図書館や公立の美術館、博物館
図書館や公立の美術館、博物館でも税金が使われています。これら施設の資金はその設備を運営している市町村長が負担しています。ただし「指定管理者制度」ができたことで、民間の団体が代わりに運営することが増えてきました。
指定管理者制度は、公共施設や公園などの運営を外部の民間団体に委託する制度です。これは、行政の効率化や施設の適切な運営を目的としています。
指定管理者制度の導入により、行政が直接運営する必要のある施設の管理業務を、運営能力のある民間団体に委託することが可能になりました。民間団体は、適切な経営手法や専門知識を持っている場合が多く、より効率的かつ効果的な運営が期待できます。
指定管理者制度は、施設の運営に関する専門的な知識や経験を持つ民間団体に適用されます。たとえばスポーツ施設の運営を専門とする企業やNPO法人が指定管理者として選ばれるわけです。指定管理者は、施設の維持管理やイベントの企画・運営などを担当し、行政の監督の下で運営を行います。
指定管理者制度の利点は、行政の負担軽減や民間の専門知識の活用が可能となることです。また民間団体による経営手法やアイデアの導入により、施設の質の向上やサービスの充実が期待できます。
大学などを含む研究機関
先ほどの文教及び科学振興費をみてみましょう。大学や研究所などでの基礎研究のために1兆3,942億円(25.7%)、奨学金などの育英事業費には1,204億円(2.2%)が使われています。
ただし大学などの研究予算は少なくなっており、基礎研究が進んでいないと言われています。研究を続けたい研究者は自分で予算を取りにいく必要が出てきているため、研究だけに集中するのはなかなか難しい状況です。
日本の教育費の推移と国際比較
日本の教育費は令和5年の当初予算で総額5兆4,158億円でした。この予算はどのように推移しているのでしょうか。また他の国と比べて多いのでしょうか。ここでは日本の教育費の推移と国際比較について解説します。
国と地方の文教費の推移
国と地方の文教費の推移は以下のようになっています。国の文教予算は減少しており、地方の負担が増えているのが現状です。教育に予算を掛けなければ、人材育成がうまくいかず、国力が下がる原因となるはずですが、そうした危機感が政府にはないように思われます。
もちろん子どもの数が減っており、学校も閉鎖されるなどしているため、予算そのものがかからなくなっている可能性もあります。しかしこのまま下がり続けると、学校教育のレベルの低下を招き、裕福な家庭は私立に進学するようになるはずです。
その結果、格差がますます広がってしまうという事態も考えられます。そうならないためにも教育予算は増やしていく必要があるはずです。
教育費の国際比較
教育費の公費とその他の私費負担割合をみると、日本の場合、家計負担の割合がかなり多いことがわかります。とくに就学前教育と高等教育で差が顕著にみられるわけです。こうした現状を踏まえれば、今後、大学無償化の話が進んでいく可能性があります。
もちろん現在でも、金銭的理由で大学に進学できない子どもたちに対する無償化の支援はあります。しかし世帯収入と資産の要件があるため、すべての子どもたちが利用できるわけではありません。
ただしこれを全世帯に拡大するかどうかは議論が別れています。誰でも大学に進学できることがいいのかどうかという議論がされているわけです。
もし税金がなくなったら学校はどうなる?
これまで述べてきたように、学校には多くの税金が使われています。では税金が使われなくなったら、どのような問題が起こるのでしょうか。ここではもし税金がなくなったら、学校でどのような問題が起こるかについて解説します。
先生の数が少なくなる
学校のために使われる税金が少なくなったり、使われなくなったりした場合、先生の給料が払えなくなる可能性があります。先生の給料が払えなければ、先生の数を少なくしなければなりません。
先生のなり手が少ない現在、さらに先生が少なくなり、教育を受けられない子どもたちが出てくる可能性があるでしょう。
学校の数が少なくなり学費が上がる
前述したように学校の運営には税金が使われています。そのため学校のために使われる税金が少なくなったり、なくなったりすれば、学校の運営ができません。
その結果、学校の数を減らすことになり、近くの学校では学べないという子どもが出てくる可能性が高いでしょう。また学費も上がる可能性があります。
まとめ
ここまで子どもが通っている学校にどれくらいの税金が使われているかについて、解説してきました。日本で使われている教育予算は高等教育と幼児教育で低いと言えます。そのため各家庭で教育費を準備しなけれなりません。
その負担が大きいため、少子化にもつながっていると言えます。少子化の改善のためにも教育予算の拡充は必須だと言えるでしょう。