健康診断は福利厚生になるのかどうか気になる担当者がいるはずです。健康診断といっても検査項目は複数あるわけですから、項目によって福利厚生費に入るものとそうでないものがあるはずです。
では福利厚生費に入る項目と入らないオプション項目は何でしょうか。この記事では会社として注意すべき点も踏まえて解説します。
福利厚生としての健康診断の重要性
健康診断の実施は、企業には実施義務があり、従業員のための福利厚生という視点からも大変重要です。また健康診断を福利厚生費とすることで、企業側にもメリットがあります。
健康診断は福利厚生としてどのような役割を果たすのか?
健康診断は、私たちの健康状態を評価し、病気や疾患の早期発見に役立つ重要な役割を果たしています。福利厚生としての健康診断は、企業や組織が従業員の健康管理を支援するために提供するものです。
まず健康診断によって従業員の健康状態の評価が可能です。身体の各部位や臓器の機能、血液検査などを通じて、病気や疾患の早期兆候を見つけられます。これにより、早期に治療を開始でき、病気の進行を防げます。
また健康診断は予防医学の一環としても重要です。生活習慣の見直しや健康増進のためのアドバイスが提供可能です。たとえば食事や運動の改善、ストレス管理などのアドバイスを受けることで、病気の予防や健康な生活を送るための指針を得られるでしょう。
さらに従業員の健康管理が行き届いていると、仕事のパフォーマンスや生産性の向上につながることがあります。また従業員の健康状態を把握することで、予防的な健康支援策を立てられます。
健康診断を福利厚生費にするメリットとは?
前述したように健康診断は事業者に義務付けられています。そのため健康診断は会社負担が原則です。企業としては、その費用を福利厚生費にすることで、経費として扱えるため、メリットがあると言えます。
ただし福利厚生費にできるのは、労働安全衛生法で事業者に義務づけられている健康診断のみになります。そのため健康診断の項目によっては、自己負担になるものもあるわけです。ではどこまでが福利厚生費として認められるのでしょうか。
福利厚生費に入る必須の健康診断項目
福利厚生費には労働安全衛生法で事業者に義務づけられている健康診断が含まれると述べました。ではどの項目が必須の項目なのでしょうか。ここでは福利厚生費に入る必須の健康診断の項目について解説します。
福利厚生費に入る必須の健康診断項目とは?
健康診断の項目として定められているのは以下の11項目です。
2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
4. 胸部エックス線検査及び喀痰検査
5. 血圧の測定
6. 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
7. 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
8. 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9. 血糖検査
10. 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11. 心電図検査
このように健康診断ではまず、身長・体重・血圧・視力・聴力などの基本的な健康情報を測定します。これにより、従業員の身体的な健康状態が把握可能です。
また血液中の糖分、コレステロール、脂質などの値を測定します。これにより、従業員の生活習慣病のリスクを評価可能です。
会社が従業員に提供すべき重要な健康診断の項目とは?
福利厚生費に入る健康診断の項目はすでに述べました。他にも「特殊健康診断」「じん肺健康診断」「歯科医師による健康診断」も含まれます。特殊健康診断は労働安全衛生法上、有害であると定められている業務に従事する従業員に対して義務付けられていますものです。
「じん肺健康診断」は粉じん作業に従事している従業員、または以前従事していた従業員、「歯科医師による健康診断」は労働安全衛生法によって、歯等に有害な業務に従事する従業員が対象です。
他にも健康診断にはオプション項目もあります。これらのオプション項目は、従業員の希望や健康状態に応じて選択できるようにしましょう。こちらは自己負担が原則ですが、産業医が就業判定を行う際に必要だと判断した場合は、会社負担にした方が良いとされています。
福利厚生費に入らないオプションの健康診断項目
前述したように、オプション項目は原則自己負担です。ではどのようなオプション項目があるのでしょうか。
福利厚生費に入らないオプションの健康診断項目とは?
福利厚生費に入るのは健康診断の項目として定められている11項目と「特殊健康診断」「じん肺健康診断」「歯科医師による健康診断」でした。
それ以外の項目で特定の病気や症状に対する検査、たとえばがん検診や骨密度測定、脳ドックなどはオプション項目になります。
従業員が自己負担として選択できる健康診断の項目とは?
従業員が自己負担することを前提に特定の疾患や病気に関連する検査や、がん検診、胃カメラ検査などを提供することも可能です。従業員自身が自分の健康に関心を持ち、より詳細な検査を希望する場合に選択するでしょう。
ただし前述したように胃カメラなど産業医が必要だと判断した場合には、企業が自己負担した方がよいとされています。
会社が注意すべき健康診断の選択と提供方法
企業として健康診断のどの項目を提供するかは重要になります。またどのような形で健康診断を提供するかも重要です。
会社が注意すべき健康診断の選択基準とは?
ここまで述べてきたように、必須の健康診断に関しては、法律上事業者であれば提供することが義務付けられています。それ以外にもオプションで健康診断の項目を含めることは可能です。
その際に会社が選ぶべきは、従業員の健康状態を総合的に把握できる内容の健康診断です。健康診断の費用も重要なポイントになります。自己負担になるにしても、安く提供できるようにしましょう。
また経費として扱えなくても、一部や全額を会社負担にしているケースもあります。さらに健康診断のオプション項目にも注意が必要です。自己負担であっても選択したい項目は提供できるようにすべきです。
従業員に適切な健康診断を提供するためのポイントとは?
健康診断の頻度と内容を適切に決定することが重要です。従業員の業務内容や労働条件に応じて、適切な頻度で健康診断を実施しなければなりません。これらは法律で決まっていることなので、確認をしておきましょう。
また従業員にとって負担の少ない健康診断の方法を選ぶことが大事です。規模が大きい会社であれば、会社内で健康診断を実施することも可能です。そうすることで従業員の負担は少なくなるでしょう。
また健康診断の結果は保管義務があるため、適正に保管する必要があります。検査結果の保管は5年間です。検査結果の保管に関しては従業員本人からの承諾を得なければなりません。それらのルールについては、就業規則に記載するようにしましょう。
まとめ
ここまで健康診断が福利厚生に入るかどうかについて解説してきました。健康診断は事業者に義務付けられているものです。適正に実施して、福利厚生費として処理するようにしましょう。
またオプション項目も検討し、従業員の健康管理に役立つような健康診断を実施していきましょう。