今や「小学生がなりたい職業」の上位に顔を出すYouTuber(ユーチューバー)。誰でも情報発信可能で、ウケたら稼げるとあって、「副業で始めてみようか」と考える人も少なくないようです。ところで、「稼ぎ」には税金がかかるはず。世のYouTuberたちは、ちゃんと確定申告をしているのでしょうか? もしかして、税務署にバレずに儲けられるオイシイ仕事? 今回は、「YouTuberと税金」について解説します。
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【知らないと危ない】YouTuberの確定申告!いくら稼ぐと税金がかかる?
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実は把握されやすいYouTuberの収入
10年前には「無名」だったYouTuberという職業が、あっという間に社会に公認され、子どもたちの憧れの存在となりました。日本でも、中には年に億円単位を稼ぎ出す人気者も現れましたが、1つ気になるのは、税金のこと。「今までなかった職業」だけに、「何が経費として認められるのか」ということも含めて、税額の計算がややこしそう。それ以前に、税務署がYouTuberの実態を把握できず、結果的に所得を申告しなくても、バレないのでは? そんな印象を持たれるかもしれません。
そもそも、彼らはどうやって利益を上げているのでしょうか? 大多数が依拠するのは、広告収入です。YouTubeで動画を見ていると、途中で広告が入ることがあります。あそこに表示されるのは、YouTubeを運営するGoogleにお金を支払って、宣伝を依頼した企業の広告です。Googleは、広告付きの動画を配信したYouTuberに対して広告費を分配しますが、その動画の再生回数が多い(視聴した見た人間が多い)ほど、分配率が高まる仕組みになっているのです。
このほか、企業から依頼を受けて動画制作を行う「企業案件」と呼ばれるものや、グッズ販売といった収入源もあるのですが、これらはかなりの人気YouTuberにならないと、期待できません。
さて、そこでさきほどの「申告しなくても、税務署にバレないのでは?」という「疑問」です。今説明したように、広告で稼ぐYouTuberたちは、基本的にGoogleから報酬を受け取っています。それらはすべて「電子送金」されますから、銀行口座やオンライン上にお金の流れがバッチリ残ることになります。
一方、誰がどんな動画を配信し、その再生回数がどのくらいなのかというのも、ネットを監視してさえいれば、一目瞭然。再生回数が多い=儲かっているはず。なのに税金の申告がなかったりするのがわかれば、税務署の権限で預金口座などが調べられることになるでしょう。つまり、個々のYouTuberの「懐具合」は、他の仕事をしている個人事業主以上に、税務署に筒抜けになっている、と言っても過言ではないのです。
付け加えれば、インターネット取引の業態や件数の増加に対応するため、国税当局は専門のチームを整備して、24時間体制で監視を始めています。もしYouTubeで収入を得ようとするなら、「自分は見つからない」と高をくくるのは、やめたほうがいいでしょう。
副業でも20万円を超えたら確定申告が必要
ともあれ、バレるバレない以前の問題として、YouTuberも他の職業同様、基本的に所得があれば、確定申告しなくてはなりません。出費が売上を上回って「赤字」になった場合などには、その必要はありません(税金の支払いは不要です)。
YouTuberを専業にしている場合は、「事業所得」として確定申告を行います。ただし、全員が一律に所得から差し引くことのできる基礎控除の48万円(生命保険料など他の控除があれば、それらも合計した額)よりも所得が低ければ、申告は不要です。
他方、サラリーマンの方が副業として行った場合には、年間の所得(あとで説明するように、売上ではありません)が20万円を超えた場合に、「雑所得」として確定申告が必要になります。
確定申告が必要なのにもかかわらずそれを怠ったり、実際の所得よりも低い納税額で申告したりして、「無申告」や「過少申告」を税務署に指摘されると、「払うべきだった税を取られる」だけでは済まなくなります。それとは別に、各種の「加算税」や「延滞税」というペナルティを課せられ、結局大きな出費になってしまう公算大と考えてください。
映像制作に関係すれば、すべて経費で落とせる?
ところで、所得税は、その名の通り「所得」に税率を掛けて計算します。簡単に言うと、売上から経費などを差し引いたのが所得。できるだけ経費を認めてもらえば、そのぶん所得は圧縮され、支払う税金も少なくなります。では、動画撮影のためにさまざまなものを使ったり、各地に出かけたりするYouTuberの経費は、どこまで認められるのでしょうか?
これについても、基本的な考え方は、他の個人事業主の場合と、なんら変わりません。経費、正確には「必要経費」は、「その事業の収入を得るために使った費用」のことを言います。そう聞くと、けっこう幅広く、経費にできそうなものが思い浮かぶのではないでしょうか。例えば……
- 動画の撮影機材の購入費、リース代
- 編集用のパソコンや編集ソフトの購入費
- 通信費
- 撮影スペースの家賃、光熱費
- 撮影用の衣装の購入費
- 撮影場所への交通費、宿泊代
YouTubeで稼ぐことを目的にこれらを出費したのであれば、経費にできるでしょう。しかし、単に「仕事に使った」というだけでは、認められないケースが多いことにも、注意が必要です。例えば、「撮影のためにスーツを新調したけれど、その後は普段使いしている」という場合は、必要経費にはなりません。撮影場所への交通費も、「動画撮影のためには、そこに行かなければならなかった」といった必然性が希薄だと、経費計上は難しいと考えてください。
また、自宅の一室を撮影スペースにしている場合に、家賃や光熱費を全額経費で落とすことはできません。逆に言えば、「仕事に必要なぶん」(スペースや時間などで割合を算出)については、必要経費に計上することができるのです。
繰り返しになりますが、経費にできるのは、「収入を得るために使った費用」です。所得税法にその項目が具体的に記載されているわけではありませんから、合理的な根拠を基に、客観的にそれを説明できるかどうかが、判断基準ということになります。特に、所得が大きい人は、万が一税務調査(※)に入られてもその説明ができるよう、常日頃から準備しておくべきでしょう。
国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。
まとめ
YouTuberの稼ぎは、税務署に筒抜けと考えてください。確定申告を忘れずに。経費は、事業上の必要性を客観的に説明できるかどうかが分かれ道。やり方によって、納税額や、税務調査の結果に大きな差が出る可能性があります。一定の所得がある場合には、この分野に詳しい税理士のアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。