円安の進行と新型コロナウイルス感染症の終息に伴い、訪日外国人客(インバウンド)の需要が回復しつつある現在、日本各地で高額な商品やサービスを提供する施設が増加しています。円安を背景に、日本への訪問が経済的にも魅力的になった外国人観光客をターゲットにしたビジネスモデルが注目を集めており、日本の観光産業に新たな波をもたらしつつあります。
海鮮丼から高級ホテルまで高価格帯サービスが続々
「なにわの台所」として知られる大阪の黒門市場では生ガキ5個4,000円、2024年2月に東京の豊洲市場に隣接する形で誕生した「豊洲千客万来」では海鮮丼が約7,000円、さらには18,000円のうに丼など、訪日外国人客を対象とした高額商品が目立っています。これらの価格設定は、一部で「ボッタクリ」との声も上がっていますが、訪日客にとっては自国と比較しても魅力的な価格であることが多いようです。特に、円安の影響で外貨に対する日本円の価値が下がっている現状では、これまで以上に「高額」であっても、訪日客にとっては手が届きやすい価格帯となっています。
このような高額サービスの提供は、日本国内の観光地や飲食店だけに留まらず、宿泊施設にも及んでいます。北海道西部のニセコ町では、1泊10万円超の高価格ホテルが新設される動きがあり、富裕層向けのサービス拡充が広がっています。これらの施設は、特に欧米や中国系の富裕層客を惹きつけることを目的としており、地域経済への貢献も期待されています。
政府は2023年3月に閣議決定した観光立国推進基本計画で「観光」を成長戦略の柱の一つと位置づけ、インバウンド旅行消費額の拡大を重視しています。2023(令和5)年のインバウンド旅行消費額は、過去最高の5兆2923億円に上り、政府が掲げる目標額の5兆円を突破しました。このような背景から、訪日外国人客向けの高額商品・サービスの提供は、今後も観光産業の重要な戦略の一つとなりそうです。
訪日外国人客向けの高額な商品・サービスの提供は、日本の観光産業における一つのトレンドであり、円安の影響を活用し、外国人観光客の消費を促進することで地域経済を支える一助となっています。しかし、国内客とのバランスを保ちつつ、持続可能な観光産業の発展を目指すことが、今後の大きな課題となるでしょう。