企業が力を入れるべきサステナビリティ報告書とは?事例を含めて紹介! | MONEYIZM
 

企業が力を入れるべきサステナビリティ報告書とは?事例を含めて紹介!

企業にとって、利益など内部の状況を把握することは重要ですが、同様に投資家や金融機関など、外部の目も注意する必要があります。
 

そこで、外部に向けて様々な報告書を作成しますが、近年、重要視されているのがサステナビリティ報告書です。
 

ここでは、サステナビリティ報告書とは何か、事例を含めて紹介します。

サステナビリティ報告書とはどんなもの

企業は外部に向けて様々な報告書を作成します。そのひとつが、サステナビリティ報告書です。近年、サステナビリティ報告書を作成する企業が増えてきました。
 

ここでは、サステナビリティ報告書の概要や、サステナビリティ報告書が作られるようになった背景について見ていきましょう。

サステナビリティ報告書とは

サステナビリティ(Sustainability)とは、日本語に訳すと「持続可能な」という意味です。サステナビリティ報告書とは、持続可能な社会を実現するために、企業がどのような取り組みを行っているのかを外部に開示するための報告書です。
 

持続可能な社会を実現するための取り組みは、企業ごとで異なりますが、一般的には「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の3つからなる、いわゆる「ESG」についての活動についての報告や、気象関連財務情報開示タスクフォース (TCFD) の提言に基づいた開示などを行います。サステナビリティ報告書は、報告や開示が義務付けられているわけではありませんが、多くの企業で作成されています。
 

サステナビリティ報告書と似ているものに、CSR報告書や統合報告書があります。CSR報告書もサステナビリティ報告書と同様に、会社が果たしている社会的な責任やその取り組みについて記載されているものです。一般的に、サステナビリティ報告書は社会目線、CSR報告書は企業目線で作成されていることが多いですが、企業によっては同一視していることもあります。
 

統合報告書は、ESGなどへの取り組みだけでなく財務情報も統合して記載された報告書です。中長期的な目線で、投資家に対して作成されることが多いです。

サステナビリティ報告書が作られるようになった背景

サステナビリティ報告書が作られるようになった理由は、社会の環境問題への意識が強くなってきたためです。
 

1980年代~1990年代にかけて、企業活動における環境への問題が大きくなってきました。社会の目が、企業の環境への取り組みを注視することが多くなってきたため、1990年代には環境報告書が普及します。環境報告書は、社会的な取り組みをまとめたCSR報告書に発展していきます。
 

その後、カーボンニュートラルやESG投資の広がりなどにより、企業にESGへの取り組みや社会的な責任がさらに求められることになり、サステナビリティ報告書を作成する企業が多くなりました。

サステナビリティ報告書のメリットと作成方法

サステナビリティ報告書を作成する企業が増えているのは、そこにメリットがあるためです。
 

ここでは、サステナビリティ報告書のメリットと作成方法を見ていきましょう。

サステナビリティ報告書のメリット

サステナビリティ報告書には様々なメリットがありますが、代表的なものに「信頼の獲得」と「資金調達(ESG投資)の拡大」があります。

・信頼の獲得

サステナビリティ報告書を作成・開示することで、消費者や投資家などから信頼を得ることができます。
 

多くの消費者や投資家は、企業が環境問題などについてどのような取り組みを行っているのか注視しています。商品を購入する、あるいは投資をするなら、環境に配慮している企業のものにしようという意識が一般的になってきました。サステナビリティ報告書を作成することで、収益や事業の拡大にもつながります。

・資金調達(ESG投資)の拡大

ESG投資とは、ESGの取り組みを行っている企業を投資対象とする投資のことです。もちろん、通常の投資と同様にリターンも追求します。
 

世界的にESG投資は一般的なものとなっており、サステナビリティ報告書を作成・開示することで、国内外の投資家から資金調達することが可能となります。

サステナビリティ報告書の作成方法

サステナビリティ報告書には様々なメリットがあります。では、どのように作成すれば良いのでしょうか。サステナビリティ報告書の一般的な作成方法は、以下のとおりです。

・ガイドラインを参考にする

サステナビリティ報告書では、様々なガイドラインを基に自社の活動を当てはめて作成することが多いです。サステナビリティ報告書で用いられているガイドラインとして、GRIスタンダーやISO26000・14001、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言などがあります。

・他社のサステナビリティ報告書を参考にする

サステナビリティ報告書の形式などがわからない場合は、他社のサステナビリティ報告書を参考にします。多くの企業が、自社のホームページでサステナビリティ報告書を公開しています。

・ホームページに掲載する

サステナビリティ報告書を作成したらホームページで公開し、外部に対してアピールをします。

サステナビリティ報告書の事例紹介

サステナビリティ報告書を作成するためには、他社のサステナビリティ報告書を参考にすることをおすすめします。

ここからは、サステナビリティ報告書の事例についてご紹介します。
 

●日清食品グループ
日清食品グループでは「3分では語りきれない、食と未来のサステナビリティ」と銘打ち、サステナビリティ報告書を開示しています。サステナビリティ報告書には、次の取り組みなどが記載されています。
 

  • 栄養バランスの良い食生活を続けていくための取り組み
  • 「資源有効活用へのチャレンジ」と「気候変動問題へのチャレンジ」

 

日清食品グループ「サステナビリティ報告書 2021」
https://www.nissin.com/jp/sustainability/report/pdf/sustainability_report2021.pdf
 

●ニコングループ
ニコングループでは、サステナビリティ報告書で「持続可能な社会への貢献と自社の持続的成長」を行い、2030年のありたい姿である「人と機械が共創する社会の中心企業」になるための取り組みを行っていることを報告しています。具体的には、次の事項などが記載されています。
 

  • コア技術による社会価値創造
  • 信頼に応える品質の維持・向上
  • 脱炭素化の推進
  • 資源循環の推進
  • 汚染防止と生態系への配慮
  • レジリエントなサプライチェーンの構築
  • 人権の尊重

など
 

ニコングループ「サステナビリティ報告書2023」
https://www.jp.nikon.com/company/sustainability/report/2023/sr2023_all.pdf
 

●富士フイルムグループ
富士フイルムグループは、自社で策定した「Sustainable Value Plan2030(SVP2030)」に則り、持続可能な社会を目指す活動をしています。「Sustainable Value Plan2030(SVP2030)」は、2030年のあるべき姿を示したもので、環境、社会の側面で、重要性の高いものに対する中長期的な計画です。
 

サステナビリティ報告書では、「ガバナンス」「環境的側面」「社会的側面」での、それぞれの取り組みや、「サステナビリティ会計」「第三者保証報告書」が記載されています。
 

富士フイルムグループ「サステナビリティレポート2023」
https://www.fujifilm.com/files-holdings/ja/sustainability/report/2023/sustainabilityreport2023_two-page.pdf

まとめ

環境問題に大きな注目が集まっている現在において、大企業ではほとんどの企業でサステナビリティ報告書を作成して、開示しています。また、中小企業でも、サステナビリティ報告書を重視している企業が多くなってきています。
 

サステナビリティ報告書の作成には時間や労力がかかりますが、得られるメリットも大きいです。サステナビリティ報告書の導入を考えているなら、まずは他社がどのようなサステナビリティ報告書を作成しているのかを確認し、導入するかどうか検討しましょう。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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