社会問題として度々話題となる「20●●年問題」をご存じでしょうか。
例えば、働き方改革に伴う「物流の2024年問題」などが現在、話題になっています。本記事では、そんな「20●●問題」のなかでも「2025年問題」について、概要や対策を説明していきます。
2025年問題とは?2040年問題との違いも
まずは、2025年問題がどのようなものか説明します。
2025年、国民の5人に1人が75歳以上の社会に突入
2025年に、日本の第1次ベビーブームに生まれた世代、いわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になります。
団塊の世代の人数はおよそ800万人で、現在の日本の人口構成比の中で最大のボリュームゾーンとなっています。
そのボリュームゾーンの人口が75歳になることにより、2025年には、国民の5人に1人が75歳以上となる社会が予想されています。
そして、そのことによって、もたらされる労働力不足、医療人材不足、社会保障費の増大などの社会的な問題のことが2025年問題と呼ばれています。
2040年問題もある!違いは?
目前に2025年問題という課題がありますが、これはあくまで、高齢者人口増加の過渡期と言われています。
後期高齢者人口の増加は2025年以降も進み、2040年、団塊ジュニア世代が高齢者になるタイミングでそのピークを迎えると予測されています。
2025年問題の影響は?そもそも何が困るの?
では、そもそも団塊の世代が後期高齢者になる2025年が到来すると、何が困るのでしょうか。主に以下の3点が問題点として論じられています。
- 人材不足が深刻になる
- 社会保障費の負担が増える
- 医療・介護体制の維持が難しくなる
それぞれ、内容を見ていきましょう。
人材不足が深刻になる
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になることで、多くの人が労働市場から引退することが考えられます。現時点でも企業の人材不足は課題とされていますが、2025年はさらに深刻化することが予想されます。
労働人口の減少によって、あらゆる分野で人材不足が生じるでしょう。とりわけ中小企業では、人材の採用競争が厳しくなることが予想されます。
労働人口の減少に伴い、後継者不足という課題も今以上に深刻化することが予想されます。結果として、廃業を余儀なくされる中小企業が増え、日本の経済規模の縮小に繋がる恐れがあります。
社会保障費の負担が増える
日本の仕組みとして、年金や医療保険、介護保険、生活保護といった社会保障制度があります。社会保障費とは、社会保障制度の維持のために国が支出する費用のことです。
後期高齢者が増えると、医療費や介護費、年金支出が増加しますす。一方、社会保障制度を支える現役世代の数は減少しています。
増加する社会保障費を減少する世代が支えなければならない構造になり、一人ひとりの社会保障費の負担が増えることは2025年問題の大きな課題です。
医療・介護人材の不足
後期高齢者の増加に伴い、医療や介護にかかる費用の増加を説明しましたが、当然、その分野で働く人材も今よりも必要になっていきます。
厚生労働省が年度ごとに介護職員の必要数を推計していますが、2025年にはおよそ243万人が必要とされています。
この医療・介護人材の確保も2025年問題の課題の1つです。さらに2024年4月からは医師の時間外労働時間の上限が規制されます。
「医療の2024年問題」として、耳にしたことがある人もいるかもしれませんが、医療分野の人材確保は大きな社会問題となっています。
2025年問題に対する国の対策
ここまで、2025年問題の概要や影響を見てきました。深刻さがわかっていただけたのではないでしょうか。
もちろん、国も2025年問題を大きな課題として認識し、対策を講じています。具体的には以下の取り組みをしています。
- 社会保障費負担の見直し
- 介護人材の確保
- 企業へのDXの推進
社会保障費負担の改善
現役世代の社会保障費の負担が増える課題に対して、国は「医療費公費負担の見直し」と「地域包括ケアシステムの構築」の2点から対策を打っています。
医療費公費負担の見直し
2022年10月以降、一定以上の所得がある後期高齢者の医療費自己負担が1割から2割になりました。
薬価の改定や同じ病気で複数の医療機関を転々とするはしご診療を抑制する施策も、社会保障費負担を抑えるための取り組みの1つです。
さまざまな対策を通して、各世代間の負担が均一になることを目指しています。
地域包括ケアシステムの構築
社会保障費の負担を軽減するために、国は「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築に取り組んでいます。
要介護状態でも住み慣れた地域で暮らせるよう、医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築を目指しているのです。
地域完結型による効率化で、社会保障費を小さくするのが狙いです。
介護人材の確保
2025年問題に向け、介護人材を確保するための取り組みもあります。
例えば介護分野において入門研修を推進し、未経験からの就業を促しています。
また介護人材の定着率を上げるために、介護施設に「選択的週休3日制度」や「季節限定勤務制度」の導入も進めています。
業界のイメージアップ戦略なども含めて、国は積極的に介護人材の確保に取り組んでいます。
2025年問題に向けて企業に求められること
2025年問題に対して、企業はどんな対策が取れるでしょうか。例えば、以下の対策があげられます。
- 労働環境の整備
- 事業承継の検討
- DXを進める
具体的に見ていきましょう。
労働環境の整備
人材不足に対応するために、労働環境の整備を行いましょう。
例えば時短勤務や在宅ワークを可能にすれば、長時間の勤務が難しい子育て世代も働きやすくなります。
多様な就労形態を可能にして、シニア世代が働きやすい環境にするのも良いでしょう。
事業承継の検討
早めに事業承継を検討することも重要です。以前は親族承継や従業員承継が一般的でしたが、今はM&Aを活用した第三者への承継も増えています。
M&Aを活用した事業承継とは、会社や事業を売却することで経営者を外部から迎える方法です。「後継者がいないから廃業」ではなく、企業が持続していくための選択肢を探っていきましょう。
現在、中小企業庁では事業承継に関するさまざまな支援を行っています。後継者がいない経営者の方は、制度を利用しながら、早めに情報収集をしていくことが大切になります。
DXを進める
DXを進めていくのも、できる対策の1つです。デジタル技術を使って業務の効率化・高度化ができれば、人材不足の対応にもなります。
例えば経費精算、契約書管理、顧客管理などをデジタルで効率的に行うといった取り組みがあげられるでしょう。
国も企業のDX推進を推し進めており、「デジタルガバナンス・コード2.0」を発表し、DXを促進するために経営者に求められる対応を提示しています。
さらに中小企業向けにデジタルカバナンス・コードの手引きをまとめ、DXに取り組む企業の事例紹介もしています。
また、経済産業省は「DXレポート」のなかで「2025年の崖」という言葉を使い、企業がDX化に対応できないことによって、2025年以降、大きな経済的損失を受けることに警鐘を鳴らしています。
「2025年問題」と似た言葉の「2025年の崖」ですが、前者は説明した通り、高齢化による社会問題全般を指すのに対し、後者は企業の非DX化による経済損失を表す用語として使われています。
DX推進に関して国も含めて、様々な情報が発信されているので、うまく情報収集することが大事であることはもちろんですが、専門知識が必要な分野でもあるため、必要に応じて外部の専門家とも連携しながら進めていくのが良いでしょう。
まとめ
日本を支えてきた団塊の世代全員が後期高齢者になる2025年は、さまざまな影響が予想されます。
国も企業も、そして私たち一人ひとりにも、対策が求められます。この記事を参考にできる取り組みを探し、ぜひスタートさせてください。