固定資産税はいつから発生する?固定資産税の仕組みについて解説 | MONEYIZM
 

固定資産税はいつから発生する?固定資産税の仕組みについて解説

土地や家屋などの資産を所有していると、市区町村から毎年固定資産税の納入通知書が届きます。固定資産税はその名の通り、所有する固定資産に対して課税されるものです。今回は、固定資産税の課税対象となる資産は何か?税金はいつから発生するのか?といった固定資産税に関する基礎知識について解説します。

固定資産税の課税方式について解説

固定資産税はどのような税金か?

固定資産税は固定資産に対して課税される税金です。固定資産税の解説をする前にまずは「固定資産とは何か?」から説明しましょう。固定資産とは一般的に、販売を目的とせず企業や個人が長期間にわたって所有する取得価額が10万円以上の資産のことを指します。例えば企業が取得した自社ビルや駐車場用の土地などは販売を目的としていませんので形のある(有形)固定資産になります。個人の方が自宅を取得した場合も、長期間にわたって居住することを目的としていますので同じく有形の固定資産です。また、パソコンにインストールして使用するソフトウェアや企業が商標を登録した際に発生する商標権など形はありませんが(無形)販売を目的とせずに所有する資産で取得価額が10万円以上であれば無形の固定資産に該当します。これらを簡単に表にしてみましょう。
 

固定資産
有形固定資産 無形固定資産
不動産
(土地及びその定着物)
動 産
(不動産以外の全て)
土地

家屋(建物)

舗装(構築物)

など

パソコン(備品)

家電製品(備品)

航空機・船舶

大型特殊車両

など

大型特殊車両を除く
その他の自動車

(車両)

ソフトウェア

商標権

特許権

など

固定資産税の対象 固定資産税の対象外

 

固定資産税の対象となるのはこのうち「不動産」と「動産の一部」となります。車両は自動車税や軽自動車税の課税対象であり、二重課税を避けるため固定資産税は原則として対象外ですが、大型特殊車両については固定資産税の対象とされています。
 

固定資産税は対象資産が所在する市区町村が所有者に対して課税することになります。土地や家屋、その他の資産について市区町村が「固定資産課税台帳」を作成し、その評価額に基づいて税額を計算する「賦課課税方式」が採用されています。

税金はいつから発生するのか?

次に固定資産税はいつ、どの時点で課税されるのかについて解説します。固定資産税は「1月1日現在でその資産を所有している方」に対して課税されます。つまり1月1日に取得した場合を除き、課税されるのは取得した年分ではなく、資産を取得した日を基準とした翌年に課税されることになります。なお、課税の基準日となる1月1日のことを「賦課期日」と呼びます。取得日に応じた固定資産の課税年分をケース別に見てみましょう。
 

「ケース1」令和×1年11月20日に取得
→令和×2年1月1日まで当該資産を所有していた場合、令和×2年に固定資産税が課税される
 

「ケース2」令和×1年1月2日に取得
→令和×2年1月1日まで当該資産を所有していた場合、令和×2年に固定資産税が課税される
 

「ケース3」令和×1年1月1日に取得
→その後の所有状況にかかわらず令和×1年に固定資産税が課税される
 

「ケース4」令和×1年8月31日に取得し、令和×1年12月1日に当該資産を売却
→翌年の1月1日現在で当該資産を所有していないため固定資産税は課税されない

固定資産税を抑える方法はないのか?

固定資産税の軽減措置とは?

固定資産税の税額は、原則として賦課期日現在において固定資産課税台帳に記載されている対象資産の評価額(=課税標準額)に一定の税率を乗じることで求められます。固定資産税の税率は標準税率1.4%です。また、都市計画法により定められた都市計画区域のうち、市街化区域に所在する土地及び家屋については固定資産税とは別に都市計画税が課税されます。都市計画税の税率は制限税率0.3%が上限となっています。
 

固定資産税額 = 課税標準額 × 税率

 

税率については市区町村ごとで定められた税率が適用されますが、評価額を、取得した資産の内容に応じて減額し課税標準額としたり、固定資産税額を直接軽減するといった「軽減措置」があります。
 

税目 固定資産税 都市計画税
税率 標準税率1.4% 制限税率0.3%
(上限)
土地 小規模住宅用地
(住宅用地で1戸あたり200㎡が上限)
評価額×1/6 評価額×1/3
一般住宅用地
(小規模住宅用地以外の土地)
評価額×1/3 評価額×2/3
家屋
(令和6年
3月31日
までに新築したもの)
戸建て住宅 税額が3年間1/2
(1戸あたり120㎡が
上限)
マンション等
(3階建て以上の
耐火・準耐火建造物)
税額が5年間1/2
(1戸あたり120㎡が
上限)
省エネリフォーム工事 税額が1年間1/3
(1戸あたり120㎡が
上限)
税額が1年間1/3
(1戸あたり120㎡が
上限

 

これらの軽減措置を受けられるのは次の要件に該当する場合です。
 

「住宅用地の軽減措置」
住宅を建てる土地を取得した場合に、当該土地の一部について評価額が減額される特例
 

「新築住宅に対する軽減措置」
一定要件を満たす住宅を新築した場合に、税額の一部が減額される特例
 

「省エネリフォーム等の軽減措置」
省エネルギー改修工事を行った場合に、税額の一部が減額される特例
 

なお、軽減措置の適用を受けるためには、それぞれの軽減措置を受ける旨の申告書及び添付資料を提出しなければなりませんので注意が必要です。

課税標準の内容確認は忘れずに

上記の軽減措置を受ける他にも不要な固定資産税の負担を防ぐ方法として、市区町村から郵送される固定資産税の課税明細書に目を通すことも大切です。市区町村が作成する固定資産課税台帳は、職員が作成するものですからどうしてもヒューマンエラーが起こり得ます。例えば「同一市区町村内に住む同姓同名の方の固定資産税が課税されていた」「木造や鉄骨造の違いのように建物の構造が誤って評価額が高くなる方で登録されていた」といった感じです。自己が所有する資産以外のものが混じっていないか、登録されている内容に間違いはないかを必ずチェックしましょう。
 

その他にも、不動産に該当しないように建物の建て方を工夫する方法もあります。固定資産税における建物とは「四方を屋根と壁に囲まれたもの」を指しますが、車庫を建てる場合、ガレージにするかカーポートにするかで大きく変わってきます。ガレージは四方を囲まれていますので建物に該当しますが、カーポートは後ろや側面が吹き抜けになっていますので建物には該当しません。

マンションと一戸建てではどちらが高い?

マンションを所有している場合の税額計算

マンションを所有している場合の固定資産税の計算方法をみてみましょう。マンションも一戸建て同様に土地と建物のそれぞれに固定資産税が課税されます。特徴としては、マンションの場合、土地についてはマンションの敷地全体の面積を戸数で割った面積分のみ課税されるという点です。また建物は、自己の専有面積のみに課税されます。
 

以前はタワーマンションについて、上層階の分譲価格と固定資産税評価額の乖離を利用した「タワーマンション節税」が盛んに行われ税務上問題となっていました。しかし2017年の税制改正で、2017年1月2日以降に新築された高さ60m以上、概ね20階以上のタワーマンションについては上層階になるほど固定資産税が高くなるよう法改正が行われました。

新築と中古では税額が違ってくる

同じマンションでも新築と中古では固定資産税の税額に差が出るケースがあります。前段でも触れましたが、マンション等に対する固定資産税の軽減措置が受けられるのは「令和6年3月31日までに新築したもの」となっています。新築したものについては5年間の税額軽減をフルで受けることができます。しかし中古マンションの場合、建築後の経過期間分だけ軽減措置を受けられる期間が終わってしまっています。軽減措置をフルで受けられない分、中古マンションのほうが固定資産税の負担が大きくなるわけです。税額が突然上がって驚かないよう、中古マンションを購入する際はあらかじめ建築年を確認するようにしましょう。

まとめ

土地や家屋のように取得価額が大きいものは、仮に税率が低かったとしても納税額は大きくなりがちです。不要な税負担をなくすためにも、課税明細に目を通す、建て方を工夫するなど、ちょっとした注意を心がけたいものです。

奥谷佳子
Webライター/ライター フリーランスとして様々な記事を執筆する傍ら、経理代行業なども行う。 自身のリアルな経験を活かし、税務ライターとして活動の場を広げ、実務で役立つ生きた税法の解説に努めている。 取材を通じて経営者や個人事業主と関わることも多く、経理や税務ほか、SNSを使った情報発信の悩みにも応えている。
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